第160回 大学に残るということ—研究者キャリアの「見えにくい現実」—
大学で研究を続けたいと考える人にとって、「どのようにポジションを得るか」は避けて通れない問題です。
制度上は公募と審査によって公平に選ばれることになっていますが、実際の現場では、それだけでは語りきれない側面もあります。
本稿では、特定の大学や個人を批判する意図ではなく、多くの研究者が感じているであろう「研究者キャリアの現実の一端」について、整理してみたいと思います。
大学に残るということ——研究者キャリアの「見えにくい現実」
日本の大学における研究者のキャリアには、あまり表では語られない「流れ」のようなものがあります。
極端に単純化すれば、次のような傾向があります。
東大出身者は、東大でポジションを得られなければ旧帝大へ移る
旧帝大出身者は、旧帝大でポジションを得られなければ地方大学へ移る
地方大学出身者は、自大学などでポジションを得られなければ、さらに別の大学へ移る
その先でもポジションを得られなければ、大学外へ進む選択を迫られる
もちろん、これは絶対的なルールではありません。分野や時代、個人の実績によって状況は大きく変わります。
しかし、多くの研究者がどこかで似たような「キャリアの流れ」を感じているのも事実ではないでしょうか。
「実力主義」と「現実」のあいだ
大学の採用は原則として公募で行われ、研究業績や教育能力、将来性などが評価されます。
しかし、実際の選考はそれらだけで決まるものではありません。
例えば、
研究分野内での評価や知名度
これまで築いてきた共同研究ネットワーク
所属してきた研究室や大学での経験
といった人的ネットワークの要素も、少なからず影響します。
これは必ずしも不正や不公平という意味ではありません。研究は個人だけで完結するものではなく、人との信頼関係や組織との相性も重要になるためです。
学閥という現実
大学の中には、いわゆる「学閥」と呼ばれる人的なつながりが存在する場合があります。
例えば、
同じ大学や研究室の出身者同士のつながり
指導教員を中心とした研究者ネットワーク
長年の共同研究による信頼関係
などです。
こうしたつながりは、研究活動を円滑に進めるという良い側面があります。
一方で、外部から見ると閉鎖的に感じられる場合もあり、新しい人材や異なる考え方が入りにくくなる可能性もあります。
外から来た研究者が評価される場合もある
一方で、学閥とは逆の動きもあります。
大学によっては、学内出身者よりも他大学から来た研究者を積極的に評価する場合があります。
その理由としては、
組織に新しい研究の方向性を取り入れたい
内部だけで人材が循環することを避けたい
外部で評価された研究者を迎えたい
といった考えがあります。
そのため、長く同じ大学にいることが必ずしも有利とは限らず、外部経験がキャリア上の強みになることもあります。
単純な序列では説明できない
ここまで見ると、大学の研究者人事は一見すると矛盾しているようにも見えます。
学閥が影響することがある
しかし外部人材が評価されることもある
実績だけでなく、人とのつながりも関係する
つまり、研究者のキャリアは単純な「大学ランキング」だけでは説明できません。
大学の方針、分野の特徴、人事のタイミング、そして本人の努力など、多くの要素が組み合わさって決まっています。
おわりに
研究者のキャリア形成には、理想だけでは語れない現実があります。
実力が重要であることは間違いありません。しかし、それと同時に、
どの環境で研究するか
どのようなネットワークを築くか
どのタイミングで動くか
といった要素も大きな意味を持ちます。
重要なのは、このような構造を過度に悲観することでも、単純に肯定することでもありません。
現実を理解したうえで、自分自身の専門性や強みをどのように活かしていくかを考えること。
それが、変化の大きいアカデミアでキャリアを築くために必要なのではないでしょうか。
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