健やかなるを、目指して。ー理事長/もぎりというあり方ー
長野県上田市にある映画館 上田映劇。100歳を超えるこの映画館は、その歴史の中で一度定期上映を終了したものの、上田映劇の存続を願う市民有志がNPOを立ち上げ、定期上映を再開した。
これは、そんな上田映劇を運営するNPO法人上田映劇の理事長になった、もぎりのやぎちゃんのささやかな想いと、心ばかりのお願いを詰め込んだnoteです。
あらためまして、はじめまして

もぎりのやぎちゃんです。やぎかなこ といいます。上田映劇で「もぎり」をしている「やぎ」なので、「もぎりのやぎちゃん」です。生まれは三重県、育ちは茨城県。そんなわたしが長野県上田市に転がり込んだのは、2017年春のこと。
学生時代からのパートナーである長岡俊平さんが「地元に帰って、上田映劇という映画館の支配人になる」と言ったのは、2016年くらいのことだったと記憶しています。常々「老後は地元に戻ろうと思う」と言っていたので、その話を聞いた時は、「随分と早い老後が来たもんだ」と思ったものです。そんな思い出ももはや懐かしく、もうすぐ上田に来て8年が経ちます。その間に社会や環境、そしてわたし自身を取り巻く人間関係も大きく変化しました。
現在は、市内にあるIT関係の会社に勤める傍ら、「やぎとまちの記録室」という屋号で文章を書いたり、写真を撮ったりしています。週末には上田映劇の窓口でもぎりをし、SNSではもぎりのやぎちゃんとして映劇や上田にまつわるあれこれ発信してきました。
「やぎちゃんは、何をしてる人なの?」と時々聞かれますが、正直自分でも何をしてるのかよくわかっていません。でも、このほど「NPO法人上田映劇 理事長」という肩書きが増えたので、こうしてnoteを書いてみた次第です。
もぎりで、理事長で
「上田映劇の理事長になりました」と言うと、結構な確率で首を傾げられます。次いで「長岡さん(俊平くん)はどうなるの?」と聞かれます。支配人と理事長のイメージがダブってしまうのでしょう。理事長と支配人の違いを端的に言えば、支配人は現場の、理事長は現場含め全体の責任者という感じでしょうか。なんとも説明が難しいのですが、俊平さんはこれまで通りです。
また「どうして理事長になったの?」もよく聞かれます。理事長になった理由を簡潔に説明するのはとても難しいのですが、強いて言うなら「上田映劇に関わる人たちが健やかであってほしいと願ったから」です。
2017年4月に定期上映を再開した上田映劇。窓口スタッフ、ボランティアの皆さん、NPO法人の理事の方々、そしてお客様と多くの人たちに支えられてきました。
中でも俊平さん、番組編成の原さん、うえだ子どもシネマクラブを担う直井さんは、この8年間100%の、時に150%の力で走ってきました。その結果として上田映劇は、「閉館した映画館」から「上田の文化施設」となり、多くの人に「上田映劇は大切な場所」と言ってもらえるようになってきました。
一方で、時々、彼らの奮闘がわたしの目には「上田映劇という建物のために人が摩耗している」ように映ることがありました(当人たちにとっては、そうではないかもしれませんが)。人のためにあるのが建物であって、建物のために人がいるのではない。そんな怒りに似た感情が自分の中にあることに気付きました。それが自分勝手な感情でもあることも、ある種の決めつけであることも自覚しています。
「上田映劇が好きか」
そう問われたら、わたしはきっと困ったように笑うでしょう。上田映劇は素敵な建物だと思いますが、わたしの中にある想いは情熱的とは言い難いのです。でも、間違いなく言えることがあります。それは「上田映劇を好きな人たちが好き」です。「人も含めての上田映劇だよ」と言われば、そうなのですが、少なくともわたしは人と建物を分けて考える癖があるのでそう答えるでしょう。
「上田映劇に関わる人たちが健やかであってほしい」
自分の中にある怒りのような感情に気付いた後、わたしはしばしばそう考えるようになっていました。守りたいものがある。大切にしたいものがある。そのために無理をして頑張ってしまう人たちがいる。無理をせざるを得ない構造も生まれる。それではきっと続かない。上田映劇に関わる人が無理せず、健やかに、大切にしたいものを大切にできるようであってほしい。
そんなことを考えていた矢先、前理事長が退任の意向を表明。わたしは、「わたしにできることは多くはないけど、考えて、対話して、また考えて、それを繰り返しながら運営や建物の老朽化といった諸課題に対応できる健やかな体制を構築することはできるかもしれない」と思い、理事長になってみました。
理事長になってみたものの、やはり自分には情熱のようなものが欠けていると感じています。だから、ある程度、上田映劇の体制が健やかなものにできたら、再びただの「もぎりのやぎちゃん」に戻るつもりです。名刺は「理事長/もぎり」という肩書きにしています。しばらくは、理事長でもぎり、そんなあり方をしつつ、「上田映劇が好きか」という質問に二つ返事で答えられるような人に、このバトンを渡したいと思っています。
応援、あるいはその解像度

さて、このnoteを読むあなたにお願いしたいことがあります。
ここまで読んで、「やぎちゃん、応援してるよ!」という言葉が湧き上がってきたら、それはそのまま心に留めていただければ幸いです。こんなこと言っては怒られてしまうかもしれません。応援したいという気持ちを無下にするのかとも思われてしまうかもしれません。でも、決してその気持ちを蔑ろにしたいわけではないのです。
「応援する」と言われた瞬間、わたしたちは「応援する/される」の関係性になります。わたしは、上田映劇に関して「応援する/される」という関係性とは少し違ったあり方を模索したい。それがどういうものか、正直まだ言葉にはなっていません。でも、お願いしたいことは、少しまとまってきました。それは「応援する」という言葉の解像度を上げてほしい、です。
「何かやれることはある?」
「あの映画観に行くね」
「まめに映劇のサイトをチェックしてるよ」
「年に1回は遊びに行く!」
「なかなか足運べないけど、想いは寄せるぜ!」
これらの言葉はひっくるめると「応援する」になると思います。でも、わたしには、「応援してる」という言葉よりもずっとずっとあたたかで、ほっとする言葉たちです。こんなふうに解像度の高い言葉をいただけると、変に無理をしないでいられると思うのです。小心者なので「応援してるよ!」と言われると、なんだか気負ってしまいますし、頑張らなきゃと肩や身体に力が入ってしまいます。無理せず、健やかなる状態を目指しているわたしとしては本末転倒。たかが言葉、されど言葉。でも、言葉ひとつで健やかでいられる。
「応援する/される」の関係性から、もう少し解像度の高い関係性へ。そんなふうに上田映劇に心を寄せてもらえると嬉しいです。
長々、つらつらと書かせてもらった想いとお願い。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。肩書きがひとつ増えましたが、相変わらずもぎりのやぎちゃんとして窓口にいる日もありますので、ぜひ遊びにきてください。

Photo by 篠原幸宏
