【劇評】waqu:iraz [Trio]-Ueda ver-(2026.05.31 犀の角)
長野県上田市にある犀の角にて、waqu:iraz(わくいらず)の[Trio]-Ueda ver- を鑑賞。

今回上演する【Trio】は、犀の角・上田バージョンです。
[3]をテーマに、マクベスの魔女や三人姉妹、三女神など、歴史上・物語上の女性たちをモチーフにコラージュし、過去から現在を生きる「女性」「女性性」を描きます。
移動し続ける女たちの、ダンスあり、ラップあり、てんこ盛りな演劇をぜひお楽しみください!
ディバイジングという手法を用いて創作を行うwaqu:irazの作品。上演のたびに再創作を行い、作品を育んできた彼女たちの、上田・犀の角だからこその[Trio]に、明日を生きるエネルギーをもらった。
旅する3人の魔女たち
waqu:irazの[Trio]という作品は、ストレートにフェミニズムを描いた作品だ。作品紹介にもあるように「過去から現在を生きる女性・女性性」を、演劇を起点にダンスやラップ、歌を交えながら表現していた。
キャリーケースとガイドブックを片手に旅をする3人の魔女たち。過去も未来も三進法で飛び越え、行き交う。0、1、2の次は3ではなく10になるように、時に近代のアメリカ、時にアレクサンドリア、時に平安時代の日本と、そこにいる・いたであろう女性たちを、”Fair is foul, and foul is fair.(きれいは醜い、醜いはきれい)”の呪文で召喚するように、映し出す。そして彼女たちに向けられ続けた「呪詛」とも言える言葉の数々を舞台上で可視化する。
思わず感嘆の声をあげそうになった場面がある。平安時代であろうか、巻物を広げて書を書く女性が現れる。巻物に何が書いてあるかと思えば、これまでの歴史の中で女性たちに浴びせられてきた偏見の言葉たちだった。それを体に、コルセットのように巻きつける。唸ってしまった。巻物から、女性に巻きつく呪詛への変容の見事さたるや。
地層のように積み重なった女性たちへの言葉、眼差し。それは過去の話ではなく、現代にも波及する。現代を生きる3人の魔女たちの悩みは三者三様だ。3人の女性たちは、それぞれ3つのルールを提示し、彼女たちの生活のひと場面が描かれる。
3人の中でも、出版社で事務員として働き、退勤後にはトレーニングに励むという「新田」という登場人物の言葉が脳内でリフレインする。「わたしにはわたしの肉体がある」コルセットを外し、肉体に自由を。自分の身体は自由なのだと、社会に根深くある、あるいは自身の内在化したルッキズムに抗おうと思った。
魔女たちの歌とラップに涙する
後半の展開は油断すると号泣しそうなくらい刺さってしまった。古今東西の歴史に名を残した女性たち。マリア・テレジア、北条政子、宋家の三姉妹…彼女たちの生き方、あり方をラップでぶちかます。それから、3人の魔女たちは自分たちの話をしようとそれぞれの言葉を紡ぐ。わたしたちは、わたしたちである。現代を生きる魔女たちの叫びもラップでぶち上げる。
「私は魔女になる!喜んで」
繰り返されるその言葉を、噛み締めるように脳内に刻む。終演後、ノートを取り出し、忘れないようにと書き殴る。私は魔女になる、喜んで!
本作はラップ、歌にダンスと様々な表現手法が取り入れられていた。3人のその表現は、ずっと見ていたいと思うパフォーマンスだった。歌やダンスから感じる伸びやかな身体性と表現力は見ていて心地良かった。だからだろうか、素直に心に響いたのは。響きすぎて、号泣しそうになった(ので、腹に力を入れて堪え、さめざめと泣くに留めた)。
男性と観ることの居心地の悪さと共に
古今東西の女性たちに向けられてきた眼差しと呪詛にストレートパンチを打ち込んでいく本作。しかし、それを男性と共に観ることに一抹の居心地の悪さを覚えたりもした。「これを一体男性たちはどう受け止めるのか」と反応が気になってしまったのだ。この反応が気になってしまうという感覚に、自身の内在化してる言語化できない何かがあると思った。
フェミニズム的な語りの場では、しばしば、「男性も辛いよね」という男性の生きづらさ、辛さも一緒に語られることがある。男性には男性の生きづらさがあるのは承知しつつも、一方で、「一旦、女性が置かれてきた環境、向けられてきた眼差し、投げつけられてきた言葉の話を受け止めてくれる!?」と線を引きたい気持ちになる時もある。
そういう意味で、waqu:irazの[Trio]では、女性にフォーカスし続けてくれたことが嬉しかった。フォーカス、というより、見事なまでのストレートパンチ。このような作品を、地方で、しかも、自分が暮らす街で鑑賞できたということにも喜びがある。
魔女たちの次なる旅の出発を見送って
上演のたびに行われる再創作。上田という土地で鑑賞した本作は、新潟、札幌での公演を経て、またそこでの感想が織り交ぜられながらつくられたという。上田で観たわたしたちの言葉もまた魔女たちの持つガイドブックに書き込まれ、次の土地での公演の礎となっていく。そう考えると、さらに育った[Trio]という作品との再会を願わずにはいられない。そんな願いを抱きながら魔女たちの出発を見送る。
余談(本編に書ききれなかったメモ的な感想)。
リングライトを使った演出がカッコよかった。
歴史の知識がもう少しあれば、さらに楽しめた気がする。
鑑賞者の知識によって解像度が変わる作品は大好きだ。
マクベスって観たことなかったな、そういえば。
台本の販売嬉しい。過去の公演の台本も見たい。
ディバイジングのワークショップ、参加してみたかったな。
