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イラスト感想文『死刑台のエレベーター』*ファン注意:不満だらけです。

死刑台のエレベーター
1958年、フランス映画
ルイ・マル監督
音楽:マイルス・ディヴィス
主演:ジャンヌ・モロー、モーリス・ロネ、リノ・ヴァンチュラ

ジャンヌ・モローの映画はいくつか見たけれど、あの決して妥協してくれなそうな口元が苦手で、鼻声も好きになれない。

パリに住み始めたばかりの頃、ああいう顔のマダムにクソメソに意地悪されたのかもしれない。そんな気がする。

しかも、元々サスペンスは苦手で、どきどきすると前のめりになってしまい、翌日肩がこる。

じゃあなんで観たの? と聞かれると、うまく答えられないが、なかなか面白い映画だった。



特に白黒映画のファンというわけではないが、今の映画の、次々とシーンが切り替わる慌ただしさと比べると、こういうゆっくりペースな映画はいい。

サスペンス映画なのに、悪く言えば間延びしており、よく言えば雰囲気をのんびりと堪能する「すきま」がたくさんある。

そこにすっと滑り込む、マイルス・デイヴィス・カルテットの演奏が、雨のパリの夜にぴったりと寄り添っている。

マイルスの長編PVとして、十分に楽しい映画。

しかし、すきま時間があると、細かいことが気になり始める私。


土曜日の午後のパリ、大通りで堂々クライミングの件

完全犯罪を遂行するために、エレベーターではなく、外壁づたいに最上階へ向かう主人公。

大通りに面した建物のクライミングなんて、ものすごく目立ちそうだが、目撃者はいないのだろうか? 


ジャンヌ目立ち過ぎの件

ジャンヌ・モローが、あの私の苦手な怖い顔で、パリの夜のバーをさまよい歩く。

雨にも負けず、いやらしそうなおっさんの視線にも動じず……、という面の皮が厚そうな感じは、彼女にぴったりだった。
(ファンの方、すみません。)

社長夫人フローランス(ジャンヌ・モロー)と、社員のジュリアンは不倫の仲だが、社長を自殺に見せかけて暗殺する「完全犯罪シナリオ」では、二人はよく知らない間柄、ということになっている。

それなのに、シャンゼリゼ近辺のバーで、鬼のような怖い顔で「ジュリアン来なかった?」って、聞いて回っている社長夫人。

あの人、ジュリアンとよっぽど仲がいいんですね、というのがパリのナイトライフではバレバレ状態。


高速道路で、突然始まるカーレースの件

1950年代のフランスの高速道路事情。思ってたよりも危険そうだ。

絶対ありえないと思ったが……。

夫によれば、昔は、スポーツカーを運転していると、急遽レースに巻き込まれることがあったらしい。

「お手並み拝見」という具合で、スピードが出そうな車をあおる人がよくいたとのこと。


エレベーターの仕組みが謎な件

エレベーターの床が、ぱかっ、と開くタイプなのにはびっくりした。やっとのことで開けてみたが、何の役にも立たなかった。


いつ動き出すかわからない。危ないからやめましょう。

中島らも『ガダラの豚』を読んで以来、中途半端に止まったエレベーターが出てくるだけで、嫌な予感がする。

ともかく、絶対に手足を出してはいけないという教訓が、胸に強く刻まれている。
タイトルのエレベーターが出てくるシーンでは、ずっとどきどきしていたが、手足がチョッキンというようなことはなかった。

古い映画は、そういう胸くその悪いシーンが少ないところがいい。


カフェの電話をかりる際は、客のふりをするべし

フランスも昔は黒電話。じーこ、じーこってやつ、懐かしい。

カフェのカウンターで、突然電話をかけながら、客のふりをしてクロワッサンをかじり始めたので、すごくびっくりしたが、元パリジャンの夫によれば、注文してなくても、食べていいらしい。


余談 - リノ・ヴァンチュラ

刑事っぽい格好って、どこの国も共通?

「残念でしたね、奥さん……」と現れる刑事役がリノ・ヴァンチュラで、以前に観た『冒険者たち』のアラン・ドロンの親友の役だった。

リノ・ヴァンチュラは、左の胸毛の人。右はアラン・ドロン。

さらなる不満点


愛しあう主人公たちが、一緒に出て来るシーンが一度もないのが不満。

ジャンヌが、一晩中雨の中を歩き回るほど、彼が好きだったのはわかったが、彼がどの程度好きだったのか、映画からは伝わってこなかった。

それほど好きじゃなかったのかな。

それとも、完全犯罪まっ最中で、エレベーターの底かっぽり開けたりしているのに忙しくて、好きな人のこと考えている余裕がなかったのかな。

結論

マイルス・デイヴィスのサントラを出してきて聞いてみた。
やっぱり、この映画の主役はマイルスだ。


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