吟遊詩人をマスターしたのであの神殿にやってきた。
——
あの旅立ちから数カ月……
行く先々で出会った人たちと言葉を交わし、触れ合うことでわたしはレベルを上げていた。
それは日々の小さな積み重ねだった……。
そして……
わたしはついにこの地に足を踏み入れたのだ。
旅人であれば誰もが一度は訪れることになる。
あの神殿だ。
大丈夫。レベルはクリアしている。吟遊詩人のスキルもカンストした。
いざ!!ジョブチェンジ!!!
それは、更なる力を手に入れるためだ。
わたしは、おもいきって重厚な神殿の扉を開けると、一歩足を踏み入れた……
「たのもー!!!!」

神父様……
14:00にアポイントを取らせていただいていました。吟遊詩人の「葵」です。
「ほう……そなたが葵か……よくぞ参られた。
それで?転職をお望みだとか?……希望するジョブを申してみよ」
「はい!!遊び人です!!!」
「……遊び人……?
はて、聞き間違いかの?吟遊詩人から遊び人なぞ、前例がないぞ?
いいのか?本当にそれで……ステータスは今よりも下がる。レベルも1から上げ直しじゃぞ?」
「大丈夫です!吟遊詩人で最強スキルは身につけましたから。
今は歌声がわたしの武器となってくれるでしょう。もちろん鍛錬は必要になりますが……」
「ん……?
お主、他にも隠しスキルを持っておるな?
……見えるぞ。見える……これは、もしや化けるかもしれん」
……よし、葵よ。祭壇の中央に立て。そして祈るのじゃ……」

「お主に類まれない加護が宿るよう……」
神父様はブツブツと何かを詠唱すると、わたしの周りに小さな光が現れ、包み込まれていく……
そして、まばゆい光に包まれ、焼かれるような熱に吸い込まれたかと思えば……
次の瞬間……そこにはわたしの新しい姿があった……

「へ???
なんで!?
なんでメイド!?!?」
「……お主に導かれた最高の職業じゃ。
鍛錬を怠るなよ……では、行くが良い葵よ。
グルメレポートをするもよし、雑飯を作るもよし……歌うもよし。何らかの役には立つだろう」
「えっえっえっ……弱そーwww
一発で死ぬのでは??」
「ああ……そうだ。
旅立ちの記念に武器をお前のアイテムボックスに転送しておいた。困ったら取り出すが良い」
……
神父様は、次の予約があるからと、戸惑うわたしをそのままに、ぽいっと神殿から追い出した。
(……無慈悲)
でも、そんな弱音も吐いている暇はない……
深い森の中の神殿を後にすると、わたしは前方を見つめ、歩き出す。そして……
「そうだ!!」
わたしはアイテムボックスを漁ると、その先で光る見慣れないフォークを見つけた。
ぐいっと掴み、取り出してみる……

……ますます訳のわからないビジュアルになってしまった。
遊び人なんだか、バニーガールなんだか、メイドなんだか、はたまたロリ系魔法使いなんだか……。
方向性が渋滞している。
センスはもはや壊滅的である。
「……こんなことなら魔法使いって言えばよかった……」
そんな時だ……
わたしの前に、魔物があらわれた……

まずいわね……
いきなり強敵があらわれたわ。
このフォークで行ける!?
え……ムリくない!?!?
わたしはまごまごしている……
敵の攻撃……
「や……やられる!!」
その時だった……
わたしの前に、鋭い刃のような気配をまとったひとりの少女が躍り出る――
彼女は無詠唱で結界を張ると、敵をいとも簡単に一瞬で光の中へ消し去った……
「ふう〜✨危ない所だったね!大丈夫!?」
「あ……あの!!
ありがとうございます!!」
彼女はニコっと笑うと、ピースをする。
(か……かっこいい……)
「女の子ひとりで、こんな所にいると危ないよ?
近くの村まで送ろうか?」
「……うわぁぁん(泣)たすかります!」
わたしは、彼女の隣に並ぼうとすると、2匹のかわいい毛玉が前方から駆け寄ってきた
「あかねちゃん!この先の宿屋!部屋空いてるって!!」
「しかも大部屋だよ!ねえ、早く行こうよ!
……ていうか、隣の女の子は誰??」
「茶々丸、桃之介ー!おかえり!下見ありがとう!!」
あかねちゃんと呼ばれた、桃髪ボブのその女の子は2匹をぎゅっと抱きしめるとポンポンと頭を撫でる……
「あ……そういえば!まだ自己紹介してなかった!……わたしはあかね!あなたは?」
「……わたしは葵✨あかねちゃん、よろしくね✨」
To Be Continued
cast
ユル勇者あかね
茶々丸(あかねさん愛犬)
桃之介(あかねさん愛犬)
あおい
