不自由
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目自目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
目目目目目目目目目目目目目目
自分という特別な存在
周りの目ばかり気にしてちゃ
だあれもきづいてくれやしない
ただぼーっとしているだけじゃ
だあれもきづいてくれやしない
周りの目なんか気にせずに
自分を探そう見つけよう
おのずと何かが見えてくる
やりたいことは声に出そう
かならず誰かが気付いてくれる
高校3年生の夏、表彰された詩。
学校の授業の一環で詩を提出しなければならず、思春期をこじらせていた僕は、詩に対して所謂ポエマー的な人物を連想してしまいどこか恥ずかしい気持ちがあった。
「恥」は時として表現の妨げになるが、そんな周りの目が気になる自意識そのものを詩にしてしまおうと思った。
なるべく詩的な表現を避け、「こいつ詩で2枚目いったで」と思われないよう、原稿用紙1枚に収まるように努めた。
原稿用紙の右半分を139文字の「目」で埋め尽くし、1文字だけそんな周りの目のなかにいる自分を表す「自」をひっそりと右下の目立たない場所に配置した。
それだけだときっと意味が伝わらないので、答え合わせ的に原稿用紙の左半分には周りの目の中に隠れている「自」に気づいてもらえるような文章を綴った。
タイトルは「自」を意識してもらえるよう「自意識」や、「自」を探してもらえるよう「自分さがし」にしようかと思ったが、直接的すぎて恥ずかしくなったのでボツにした。
かといって明るいタイトルにする勇気もなかったので、そんな自分の状態を表す「不自由」と名付けた。
「不」と「由」に挟まれた「自」は窮屈そうで不自由に思えた。
「神のバトン賞」という最優秀賞と佳作の2つしかない賞で佳作をいただき表彰されることになり、国語の先生と共に宮古島から飛行機に乗って会場のある沖縄本島へ向かった。
審査員の方々からコメントをいただき、最後に審査員長から「この140文字の目の中に僕や私が入っていればもっと良かった」と言われた。
国語の先生が自分の「自」が入っていることを指摘すると、審査員の方々は誰ひとり気づいていなかったようで、「自」が入っていないまま新聞に掲載される所だったが、急遽刷り直しとコメントの訂正が入った。
そして、最後に表彰された詩を会場で朗読する時間が設けられていた。
最優秀に輝いた高校生や、小中学生の思いのこもった詩が朗読されていく中で、僕の番が回ってきた。
壇上に上がり辺りを見渡すと、詩の関係者や報道陣が立ち並び厳かな空気が会場中を支配していた。
「目、目、目、目、目、目、」
静まり返った会場の中で僕の「め」という音だけが響いている。
「目、目、目、目、目、目」
笑いを噛み殺すように俯いている人や、嘲笑混じりの視線を投げかけられる。
「目、目、目、目、目、目」
極力恥ずかしくならいような詩をつくったというのに、最後にこんな仕打ちを受けるとは。
「目、目、目、目、目、目」
まだあと100文字以上目あるやん。
「目目目目目目目目目目目目」
区切らずに早口で目と言う作戦に切り替える。
「目目目目目目目目目目自目」
たぶんこの辺で「自」や!
半ば強行的になんとか朗読を終え、まばらな拍手を受け降壇。
逃げるように会場を後にし、宮古島行きの飛行機に搭乗。
ここ3年分ほどの「恥」を一気に掻いたような気持ちで身悶えしていたが、同時に恥から解放されたような底知れぬ高揚感に包まれていた。
次回もし詩を書くことがあるならば、もう少し「自由」に書ける気がした。
