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静かな朝でゴルフと鹿と

朝露がまだフェアウェイに残る時間帯。
1番ホールへ向かうカートの揺れが、妙に心地よかった。

「今日はいいスコア出るといいな」
そんな独り言が、ひんやりとした空気に吸い込まれていく。

ティーイングエリアに着くと、そこには先客がいた。
ゆっくりと草を噛みしめる、一頭の鹿。
こちらに気づいているはずなのに、逃げもしない、威嚇もしない。
ただ、まるで僕らゴルファーを「静かな仲間」として受け入れているような眼差しをしていた。

ドライバーを取り出した瞬間、鹿がふと顔を上げた。
黒くて澄んだ瞳が、こちらをじっと見つめる。
その表情があまりにも穏やかで、思わず言葉がこぼれた。

「おはよう。今日もよろしくな。」

鹿は当然返事なんてしないけれど、
一拍置いて、まるで頷いたかのように首を小さく振った。

スイングの前、深呼吸したら
いつもより肩の力が抜けていた。
自然の中で、人でも道具でもなく、ただ一頭の鹿と空気を分け合った瞬間に、
余計な焦りみたいなものが、全部どこかへ消えていった気がした。

ショットを放つと、白い弾道が静かな朝に溶けていく。
心なしか、その一打はいつもより素直だった。

すると、鹿がゆったりと歩き出して、球の方向を追いかけるように移動した。
まるで「行ってこい」と送り出してくれたみたいで、
なんとも言えない温かさが胸の奥に灯る。

ゴルフは、スコアを競うだけのスポーツじゃない。
フェアウェイを吹き抜ける風の匂い。
グリーンに落ちる朝陽の角度。
そして、こんなふうに自然や生き物と出会える奇跡の時間がある。

ラウンドって、結局“うまくいく日”だけが特別じゃない。
今日のこの鹿との遭遇みたいに、
心がすっと静かになった瞬間——
そのひとつひとつが積み重なって、
僕らをまたゴルフ場へと連れてきてくれるんだと思う。

ホールを離れるとき、鹿がこちらを一度だけ振り返った。
まるで「また来いよ」って言ってるように。

その背中を見送りながら、
こんな朝があるから、ゴルフが好きなんだとしみじみ思った。

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