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新米コーチ誕生

■ うれしいこと

先日、とてもうれしいことがありました。

今から10年ほど前、中学生の時に私のところでバドミントンを練習していた子が、地域の中学校でコーチを始めたというニュースを聞いたのです。

私は35年以上バドミントンのコーチをしていますが、教え子の中から「コーチをやろう」と思ってくれる子はなかなか現れるものではありません。

そもそも子どもたちが練習するのは「自分が上手なりたいから」であり「試合に出て勝ちたいから」であって、最初からコーチを目指して練習する人なんてめったにいないわけです。

彼女も自分がプレーすることが大好きなのですが、現在の中学校ではバドミントンを教えられる顧問の先生が不足しており、部活動が成り立たない状況を知って、自らコーチを引き受けたそうです。

■ 後輩コーチの悩み

もちろん私もコーチ1年目を経験していますし、その大変さはよく分かります。

そこで「何か困っていることはない?」と聞いてみたところ、返ってきたのは、

「どこから手を付けていいか分からない」

という言葉でした。

思った通りの答えにちょっと笑ってしまいましたが、せっかく指導者の道を歩み始めてくれた後輩コーチのためなので、「何が一番困っているの?」と重ねて聞いてみました。

すると、「ロングサーブが打てない子がたくさんいて困っている」とのことでした。

「ロングサーブが打てないのはある意味当たり前のことで、最初から打てる子のほうがすごいんだよ」と私が言うと、彼女は困惑した表情でこう言いました。

「私は最初から打てたので、なんでロングサーブが打てない子がいるのか、その理由が分からないんです……」

■ 「打てなくて当たり前」な理由

そこで私は、彼女に一つ質問をしてみました。

「あなたの右腕と左腕の長さは、ほとんど同じじゃない?」

ちょっとぽかんとした顔で「そうですねぇ、ほとんど同じだと思います」と答える彼女に、私はこう続けました。

「シャトルを持つ腕もラケットを持つ腕も長さはほぼ同じなのに、ラケットを持った利き手側だけが約60cmも長くなるんだから、最初は空振りしても上手く当たらなくても何も不思議じゃないんだよ」

それを聞いた彼女は「はぁーっ!」と言って、目を大きく丸くしていました。

私も毎年、サーブが打てない子供たちを受け入れているので、教える大変さはよく分かります。

バドミントンで唯一「自分でシャトルを持ち、止まった状態で打てるショット」なので一見簡単そうに見えますが、実は「動けないからこそ難しい」という側面もあるのです。

「私も初めから打てたタイプだけど、指導者が『分からない』と言っていたら、打てない子を助けてあげられないから、打てない子の気持ちになって、何が原因で上手く打てないのかを観察してあげることが大切なんだよ」

そう伝えてから、私が普段実践している「ロングサーブの教え方」のステップをひとつひとつ伝えたら、「これをサーブが打てない子全員にやるんですか!?」と、彼女はまた目をまん丸にして驚いていました。

■ 最後に

根気強く付き合っていると、ある日突然コツを掴んで打てるようになってくるのがロングサーブです。

新米コーチの彼女には、この試行錯誤の大変さも「指導の楽しみ」として味わいながら頑張ってほしいと思っています。

ときどき「まぐれ当たり」で、ものすごく良いサーブが打てた瞬間、子供たちが見せてくれる「打てたっ」というあの表情は、一日の疲れがどこかに飛んで行ってしまうくらい嬉しい瞬間です。

今までに食べたことのないものが想像以上においしかったときに出てしまうような、最高の表情でこちらを振り返ってくれるんですよね。

あんな素敵な表情を、新米コーチの彼女にもこれからたくさん経験してほしいなと願っています。

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