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ボロのウオークマンと春の兆しと

“さすがにカセットテープの時代は知らないけれども”などと書き出したあとに“いや待てよ。確かヨーヨー・マのチェロが奏でるドラマチックなタンゴも、年末の雪空を見上げながら自転車を漕いでいた時に聞いていた奥田民生もカセットテープだったわ”と思い出し、“あぁそうか私ってば筋金入りのウォークマン信者だわ”と思い直した。

カセットテープが廃れCDが出回るようになるとそれ用のウォークマンが現れて早速お財布ひっくり返して購入したのだけれどもまぁ何というかお気に入りのCDを再生しながら何処へでも出かけられてしまうのだからありがたいっちゃありがたかったけれども、使っていたものは丸っこいような四角っぽいようなシルバーのとてもspacyな感じのものだった。
気軽というには大ぶりだし、自転車に乗っているときなんかはガタついて音が止まったり輸入盤のインディーズものだったりすると上手く機械のセンサーが作動しなくって全く聴けないなんてことも稀にあったりしたものだから、多忙な子育てが始まるとspacyなCDウォークマンはあっさりお蔵入りになってしまった。

その数年後に入院生活のお供にと新たに購入した青いそれは現行機種と同じようにBluetooth機能付きのデータ再生のもので、おまけに片手でキュッと握れるほど小さいくせしてカスタマイズしたお気に入りの音質で心地良く聴くことが出来るものだから10数年来重宝している。
因みにウィーン・フィルだろうがUK trashだろうが脳髄を鼓膜からドスドス突き上げるような分厚い重低音が望ましい。

それにしても最近イヤフォンの耳に差し込む部分、決まって右耳の柔らかいパッドが気づかないうちにどこかで取れてしまって、それに気づかないまま耳の中に差し込むものだからその度にとても痛い目に遭っている。
安く購入したものだけれどフィット感が気に入っているので手放せない。
取れてしまったパッドはバッグの底の角やらベッドの下だとかにコロンと転がっていて“あぁ良かった”と胸をなでおろすこと幾数回、外で落したのだろうからさすがに見つからないだろうと諦めていたつい先日などは、部屋のローテーブルに積み上げた本の上にポンと置かれていて、仕事から帰宅してそのコロンな姿を発見した時は胸が締め付けられそうになった。
見つけてくれた家族よありがとう。

ついでに言えばイヤフォンは絶対に有線派だ。
首に引っ掛ける気軽さが軽やかで良い。

青いウォークマンは所々色が剥げてきて白い地が見えていて、ボタンの反応も鈍くなってきたのだけれども、時代の変わり目のようなあまり好まない気配の中で桜色を纏いだした空を見上げているとまだもう少しばかり手放せなさそう。





    


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