ショートショート:「諦めずに行動すれば、必ず夢は叶う」※複数人の夢が対立・競合した場合、諦めない気持ちが強い方の夢が叶う。
こんにちは。不屈の屈葬です。
今回はよしひろさん主催の「#企画かくカク書く企画」への参加作です。
テーマの「夢」によせて、ショートショートを書きました。
我ながら、今回はいい感じに書けた気がします!
ぜひ楽しんでいってください!
(本文:1700字)
* * *
「諦めずに行動すれば、必ず夢は叶う」
誰しもがどこかで一度は聞いたことのあるセリフだろう。
有名人の格言にも、類似のものが多くある。
しかし、現実はそんなに甘くはない。
どんなに努力しても夢を叶えられない者もいれば、才覚だけで上手い感じに夢を叶えちゃう者もいる。
そんな理不尽ともいえる世界に、正義感の強い神は辟易していた。
「世界のルールをいじるか……」
世界のルールを決めているのは神々である。
正義感の強い神は「諦めずに行動すれば、必ず夢は叶う」を絶対のルールにしてしまおうというのだ。正義感の強い神はこの程度の変更なら稟議を回す必要もないと思ったが、隣の席の用心深い神から真っ当な意見が出た。
「矛盾する夢があったときはどうする?」
確かに可能性はある。
例えばAさんの夢とBさんの夢が「特定分野で世界一になる」だった場合、どちらかの夢は絶対に叶わない。
ルールに不備があってはいけない。
結局は神々会議で決めることになった。
「矛盾した場合は、諦めない気持ちが強い方の夢が叶うことにしよう」
こうして、世界のルールが書き換わった。
「諦めずに行動すれば、必ず夢は叶う」
※複数人の夢が対立・競合した場合、諦めない気持ち(行動も加味する)が強い方の夢が叶う。
※このルールで叶えられる夢は一人につき一つまで。
ツッコミの神は「これって実は現状とほぼ変わらなくない?」などと言っていたが、正義感の強い神は、努力が報われやすい世界に近づいたことに満足していた。
この世界ルールは即日施行され、いつも通り全人類に気づかれぬうちにその脳へ刷り込まれた。
◇ ◇ ◇
「今日もフラれちゃった……」
そうぼやく高志の夢は「幼馴染の希美と両想いになること」であった。
もう何度も告白しているが、全て断られている。希美に恋人や想い人がいる気配は一切ない。それでも希美が首を縦に振ることはなかった。
「おかしいよ……夢は必ず叶うんじゃないの?」
肩を落とす高志に、姉の叶恵は諭すように言った。
「諦めずに行動すれば、でしょ? まだそこまでやれてないってことだよ」
高志にとって、叶恵は良き相談相手だ。
いつだって、高志の心が折れそうなときに励ましの言葉をくれる。
「恋愛ってそんなに簡単なものじゃないよ。何度でも当たって砕けな!」
高志は姉の言葉に背中を押され、希美に想いを伝える日々に戻った。
会えた日には、必ず目を見て愛の言葉を伝えた。
会えない日には、手紙にありったけの想いを綴った。
マンネリ化しないよう、心を尽くし、毎日違う言葉を選んだ。
それでもなお、希美に想いが届くことはなかった。
苦しみ続ける高志に、叶恵はいつもとは少し違う調子で言った。
「……もしかしたら希美ちゃんの夢って、高志と両想いにならないことなのかもね。その場合……ほら、夢が対立したときには、諦めない気持ちが強い方の夢が叶っちゃうから……」
高志は首を振った。
「一生に一度の夢をそんな馬鹿なことに使うわけないよ。それに希美の夢はケーキ屋さんになることなんだ。本人が言ってるから間違いないよ」
口にした言葉が必ずしも真実とは限らない……そこに気づくタイプの姉は、正直者の弟に厳しい現実を伝えた。
「でも、世の中には歪んだ夢を抱いてそこに異常な執着を持つ人だっているから……」
「希美はそんな子じゃない!」
高志は語気を強めた。
部屋中の空気が一瞬で重くなり、沈黙が広がった。
こういうとき、先に沈黙を破るのは姉の役目だった。
「お姉ちゃんが悪かった。確かに希美ちゃんはそんな子じゃないわ。でも、いい? だとしたらあんたの諦めない気持ちや行動が足りてないってこと。これ以上傷つく覚悟はある?」
心臓にナイフを突き立てるような叶恵の問いに、高志はゆっくり、けれども力強く頷いた。弟の目が覚悟を決めた男のそれになったことを、姉は見逃さなかった。
その晩の「希美ちゃん攻略会議」は、深夜にまで及んだ。
叶恵は知恵をしぼって具体的な行動プランを提示し、高志はどんな無茶でもやり遂げる決意を固めた。
そして翌日、ついに念願の夢が叶うときが訪れた。
高志がストーカー容疑で逮捕されたのだ。
叶恵の歪んだ夢が叶った瞬間であった。
(了)
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