基礎理論を軸に「面白い」ロボットを生み出す
多様な工学分野を学ぶことができる、郡山市の日本大学工学部。機械工学科サステナブルロボットシステム 専任講師の今林亘先生は、制御工学の理論を活かしたロボット開発の研究に取り組んでいます。今林先生が制御工学・ロボット工学の道に進んだきっかけや研究内容、そして未来を担う福島の高校生へのメッセージまで、その思いを伺いました。
研究の原点となった大学時代の経験
奈良県出身の今林先生。高校時代からロボットにも強い関心を持っており、ロボット工学科に進学しました。大学では授業で数学やメカトロニクス、プログラミング、物理学や力学など基礎理論を学びながら、カリキュラム外の学生プロジェクトに参加し、初めてロボットづくりに挑戦しました。
しかし、実際のロボット作りでは「工作機械や機械加工がうまくできるか?」、「回路や配線をうまくつなげるか?」、「3DCADのソフトウェアや実践的なプログラミングができるか?」などの技術的なことが求められ、普段の授業で習ったロボットの知識や数学、力学の理論はほとんど生かされませんでした。今林先生はこの点に違和感を覚えました。

「ロボットをうまく動かすためには、基礎理論をロボット作りとつなげることが大切ではないか?」と考えた今林先生。この気づきが原点となって大学院に進み、制御工学を専攻してロボットの動きの制御について数学やロボット工学の知識を活かして理論的に考えたり、パソコン上でシミュレーションを行ったりしていました。2021年に日本大学工学部に着任してからは理論研究に加えて実際にロボットを作ることにも力を入れています。

理論を踏まえ、見る人をワクワクさせるものを作る
今林先生の研究室には、生成AIを活用したコミュニケーションロボットや、3Dプリンターで制作したキーホルダー等が並んでいます。大学見学で訪れる高校生や地域の方々にもロボットや作品を見せており、せっかくつくるなら、見てくれた人に「面白い」と思ってもらえるものを実現したいと話します。

今林先生の所属する「サステナブルロボットシステム研究室」
また、今林先生が研究しているのが「シープドッグシステム」です。これは、牧場で牧羊犬が多くの羊を移動させるように、多数のロボットを移動させながらロボット全体の効率的な動きを研究するものです。実際に研究室でロボットを動かしてみると、牧羊犬役のロボットが羊役の複数のロボットを追いかけ、最終的には羊役のロボットがフィールドの中央に集まりました。
今林先生は学生とともにモーションキャプチャーを用いてロボットの動きをコンピューターで解析し、データを取りながら「どうやったらたくさんのロボットをよりよく動かせるか」を研究しています。農業における肥料散布や草刈りなど、多数のロボットを効率的に動かす場面への応用を目指しています。

また、今林先生は学生と一緒に外部の様々なロボットコンテストにも挑戦しています。その中の1つが、「レスキューロボットコンテスト2025」。阪神・淡路大震災をきっかけに2000年にスタートした大会で、地震災害を想定し、要救助者に見立てた人形をロボットで救出する技術を競います。
今林先生自身も関西の大学に通っていたため、この大会に学生時代に出場したことがありました。今度は教員として日本大学工学部の「機械工学モノづくり工房 サステナブルロボット部会」の学生たちをサポートし、2024年にコンテストに挑戦しました。この時は惜しくも本選出場を逃したものの、2025年には初めて神戸で開催される本戦に出場しました。
東日本大震災を経験した福島にある大学だからこそ、このようなコンテストの機会を大切にし、災害や防災の場面におけるロボットの活用法を考えていきたいと話します。

日本大学工学部は「ロハス工学」という研究方針を掲げ、心身ともに心地よく、持続可能な生活を実現することを目指す研究に力を入れています。研究室名にも「サスティナブル(持続的な)」という言葉を入れている今林先生は、「100年長く使えるシステムを作るためには、全く新しいものを作るというよりも1つ軸を持って、形を継承しながらよいものを作っていくのが大切。
数学や制御工学、ロボット工学といった基礎理論は1つ軸になりますので、理論を大事にしてロボットを開発することが大切だと思います」と話します。
日本大学工学部高大連携推進室のWEBサイト(高校生の探究に役立つ「ロハス工学」の研究テーマがまとめられています)
探究する高校生へのアドバイス:楽しむことと軸を持つこと
今林先生が「面白いものを作る」ことのきっかけになったのが、高校時代に所属した「サイエンス研究部」の経験。化学に興味がありサイエンス部に所属していたのですが、高校の文化祭でミョウバンを用いた結晶づくりを展示した際、お客さんが「面白い!」と喜ぶ姿に大きなやりがいを感じたといいます。
また、この展示は近くの大学の大学祭の展示を見てアイデアを思い付いたそうで、「大学のキャンパスに行ってみることも将来のきっかけになります」と話します。
逆にやりたいことがまだ見つかっていない高校生に向けた、今林先生からのアドバイスは「他の誰かの取り組みに巻き込まれるのも大切」ということ。まずは巻き込まれることをきっかけに自分のできること、得意なことなどが見つかっていき、徐々に自分の軸が定まっていくと話します。そのために大切なのは「まずはなんでもやってみようという姿勢」と話します。
特にロボットなど「ものづくり」に興味を持つ高校生に向けては「自分が楽しんで取り組めるかが非常に重要」と話しました。楽しまなければ何をやってもうまくいかない。だからこそ、「楽しい」「面白い」という感情を大切にものづくりを追究すれば、技術も自然に身についていきますよと、力強いエールを送ってくださいました。

