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建築を学ぶ学生が生み出す 地域と若者との「縁」

福島県郡山市を拠点に活動している学生団体「Chi縁」。郡山市の大学で建築を学ぶ学生たちが自分たちが学んでいる建築の知識を活かし、地域に様々なつながりを生み出しています。日本大学工学部在学中に団体を立ち上げた永見政悟さん(慶應義塾大学大学院修士2年)と2024年度の副代表、塚本幸太郎さん、工藤四季さん(いずれも日本大学工学部4年)にお話を伺いました。


消防団の経験から「Chi縁」設立へ

Chi縁を立ち上げた永見さんは仙台市出身で、新型コロナウイルスが流行しはじめた2020年に、日本大学工学部建築学科に入学しました。コロナ禍で自宅にいることを余儀なくされ、「何か挑戦したい」と感じていたところ、当時住んでいた場所の近くに消防団の事務所があることを知りました。

永見さんは人々の暮らしや地域のコミュニティにも関心があったことから消防団に入り、消防団での活動を通じて、学校では出会えない方々と出会いました。多くの人とつながる中で、永見さんは1つのことに気づきました。

「自分が学んでいる建築もまた、人々をつなげる1つのきっかけになるのではないか」

例えば空き家のリノベーションや家具作りを通じて、学生と地域がつながり、学生にとっても地域で建築に関わる機会を作れるのではないか、と考えた永見さんは、大学2年生の5月頃に学生団体「Chi縁」を設立しました。

学生団体「Chi縁」ホームページ

学生がつくる「縁」

Chi 縁の主なメンバーは日本大学工学部と郡山女子大学で建築を学ぶ学生たちです。Chi縁が行っている主な活動は 「空き家リノベーション」 と「ストリートファニチャー」、そこで生まれる端材や未使用材を利用した「プロダクトによるワークショップ」の3つです。3 つの活動はつながり合い、それぞれの活動をより豊かにします。

地域の人々との交流の中でまちの魅力や課題を発見し、カタチだけのデザインに留まらない、「モノ」「コト」の広義的なデザインを行うことを目標に活動しています。

「空き家のリノベーション」として最初に取り組んだのは郡山市の子ども食堂のリノベーションでした。空き家のオーナーが「子ども食堂を開きたい」という夢を語り、それを実現するために空き家の環境整備を行いました。

また、郡山市でキッチンカーを運営している方から依頼を受け、キッチンカーのリノベーションにも挑戦しました。汚れていたキッチンカーの床を張り替えたり、建具のデザインを考えたりして、楽しい雰囲気を作り上げました。

今後は地域の人々と協力して、建物の一角をリノベーションし、街に開放することも考えています。Chi縁のメンバーは、ただの空き家や空き地が、誰かに必要とされる場所に生まれ変わっていくことに魅力を感じています。

地域の人々との絆を深めることを大切にしており、学生がやりたいことを叶えられる体制を作り上げ、楽しく学べる団体にしていきたいと考えています。

「ストリートファニチャー」とは、様々な目的で屋外に設置されている家具のことです。Chi縁は地域の木材を使っていすやテーブルなどを製作し、屋外イベントなどで設置しています。大学の文化祭では、設置場所の環境に合わせた家具を展示し、組み立て式や参加型のデザインを取り入れるなど、個性豊かな作品を生み出しました。

また、「D-stool」という活動で、作ったいすやテーブルを地域のイベントなどにレンタルしています。この活動により、まちと関わるきっかけが増え、そこで新たな発見や学びを得たり、さらに新たなつながりが生まれる機会をつくっています。

「ロスのプロダクト」を活用したワークショップとは、リノベーションやストリートファニチャーで余った廃材を活用して新たな価値を生み出す活動です。この活動では、金具の廃材を組み合わせて一輪挿しを作るワークショップを開催したり、地域の建設会社と協力して余った塗料を活用したワークショップを開いたりして、資源を最大限に生かす取り組みを行っています。


Chi縁では様々な団体と一緒に地域とつながれるデザインを追求しています。例えば矢祭町の製材業者や地元の高校に通う高校生とコラボし、これまでにはないコンポストの設計を行いました。

コンポストは生ごみを堆肥化するために使われているもの。通常のコンポストは屋外に設置され、移動できないようになっているのですが、Chi縁はコンポストに車輪を取り付けて移動できるように工夫し、さらにベンチと屋根を加えることで一休みできるようにしました。こうすることで、地域の住民たちが自然の循環に触れ、身近なごみ問題を考えられるようなデザインを目指しました。


地域とつながることで広がるアイデア

Chi縁に所属している学生は、大学で建築を学んでいますが、地域で活動することで、普段大学の中だけでは味わえない体験をすることができているそうです。

例えば、大学では「空間デザイン」に関する授業の中で「人が集まる場をどうデザインするか」について学びますが、地域ではリアルなフィールドでその問いに向き合うことになります。「この場所にはどうやったら人が集まるのか」、「そのためにはどんな家具を置いたらいいのか」、「どんな仕掛けをつくるのか」を実際の現場で考えていきます。

普段研究室や実習などで地域と関わる経験のある3,4年生だけなく、大学に入学したばかりの1年生も地域での活動に参加することができます。

地域で出会った大人から新たな視点をもらうこともあります。建物の塗装を担当したときには、地元の方から「この塗料は耐久性が高い」とアドバイスをいただき、作業の効率化にもつながりました。家具の製作では「昔ながらの工具の使い方」を地元の大工さんから教わるなど、学生だけでは気づけない視点を学ぶことができたそうです。

今後はより持続的な活動にできるような仕掛けを考えています。例えば家具のレンタル。Chi縁がデザインした家具を大学生たちにレンタルすることで、学生にとっては家具を安価に得ることができ、Chi縁も活動費を得ることができます。家具を安く手に入れることができたら学生にとっても住みやすい地域となり、同時に、廃棄される家具を減らすことにもつながります。


2024年度の副代表を務めた工藤さん(左)と塚本さん(右)

学生が挑戦できる環境をつくる

Chi縁が大事にしているのは 「地域の縁」、「知人の縁」、「置くモノで縁をつくる」という 「縁」。そしてその3つの縁が重なり合ったところから生まれる、「知en(知識にする)」 という縁です。まさに、地域に出ることで、座学で学んだ知識が生きた知識となっています。

Chi縁の活動で、街の景色は少しずつ変わっていきましたが、同時に所属する学生も地域に対する見方が大きく変わったそうです。建築を通して、学生がやりたいことに挑戦することによって、地域の人々とつながり、自分の中でまた新たなやりがいが生まれる。このようなよい循環を生み出すためにChi縁が今後挑戦してみたいことは、学生が自分のやりたいことにもっと挑戦できる環境を作ることです。Chi縁はこれからも、様々な「縁」をつむいでいきます。