一番かっこいい阪神ファン
僕の知る中で一番かっこいい阪神ファン「松とら屋」こと松下雄一郎さんがお亡くなりになりました。
元デイリースポーツの記者で、長らくトラ番をつとめられていた松下雄一郎さん。
長きにわたり連載されていたコラム「松とら屋本舗」が僕は大好きで。
連載開始の時から、欠かさずずっと読んでいました。
選手の誰も知らない裏の顔をたくさん教えてくれたり、不甲斐ないプレーを見せた選手には忖度なく厳しく叱責したり。
でもその根底に深い阪神愛・選手愛が感じられて、僕はそのコラムを毎回楽しみにしていました。
松下さん、小学校の卒業文集に「大人になったら阪神の応援でメシを食う」と書いてみんなに笑われたそうです。
しかし、見事に阪神の応援でメシが食えるようになり、その笑った人たちを見返した松下さん。
ご本人は謙遜して嫌がるでしょうが、僕は「阪神ファン代表」くらいの人だと思っています。
ところが、2023年に阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を決めると「普通のファンに戻ります」と、デイリースポーツに辞表を提出。
「またスタンドから阪神を応援したい」と。
その年、阪神タイガースは38年ぶりに日本一に。
それと同時に、「松とら屋本舗」の連載も幕を閉じました。
なんてカッコいい生き様。
しびれました。
しかし、あのコラムがもう読めないなんて寂しすぎる……
失意に暮れていたのですが、なんとこの話には続きが。
僕と同じようにそれを惜しんだ有志の方が、松下さんにお願いし、「松とら屋本舗」を有料サイトとして復活させてくださいました。
僕もすぐに会員登録し、毎回楽しみに読ませてもらっていたのですが……
去年の春先。
松下さん、ステージ4の大腸癌であることが発覚し、それをコラム内で公表。
「このままだと余命半年」だと宣告されたそうです。
その病状を伝える回のコラムを読んだとき、驚きすぎて理解できませんでした。
え? 松下さんが? がん? 余命? え?
そんな僕の狼狽を蹴散らすように、松下さんは生きることをあきらめませんでした。
使用した抗がん剤が的中したそうで、病状が飛躍的に回復。
平常時よりペースはゆっくりになりましたが、コラムの更新も続けてくれて、余命宣告の半年もとっくに過ぎていました。
とはいえ、副作用で髪が抜けると聞いた松下さんは、自らスキンヘッドに。
ガンとの闘いはやはり一筋縄では行かないようで。
僕もコラムでの病状報告に一喜一憂していたものの、いつもとかわらぬ熱量の文章に「この人が死ぬわけない」と、根拠のない安心感を持っていました。
そんな最中の、去年の12月。
「松とら屋」の東京でのオフ会開催が発表されました。
「え?松下さんに会える?」
人見知りなもんで、今まで誰かのオフ会とかに参加したことはなかったのですが、即座に申し込みました。
場所は松とら屋読者にはお馴染み、「築地のサンテレビ」ことスポーツ居酒屋おかだ。
その当日。
地図アプリを頼りに、キョロキョロしながら到着すると。
さっそく入り口に松下さん!
僕を見るなり「ああ!藤井さん!」と。
実は一度だけ、コラム内で触れてもらったことがありました。
「世間は飛石連休…いや、お笑い芸人じゃありません」と。
それを読んだ僕は「うわー!俺のこと知ってくれてる!」と、嬉しくてひとりで飛び上がってしまいました。
その日の松下さんは、めちゃくちゃ体調が良さそうで顔色もよく。
みんな順番にですから、そんな長い時間ではないですが、初めての松下さんとの対面が嬉しくて、たくさん話をさせていただきました。
その時もらったサインと、撮ってもらった写真は、一生の宝物です。

僕は今年「芸人廃業」という本を出しました。
勝手ながら松下さんにプレゼントしたくて、オフ会で知り合った松下さんの長い友人のかたを介して連絡先を交換してもらい、無事に本を届けることができました。
そして5月に更新されたコラム。
病状が急激に悪化し、夏が越せないかもとのことでした。
そんなこと信じられるはずがありません。
励ましのメッセージを送ると、力強い返事も返ってきました。
しかし義理堅い松下さん。こっちがメッセージを送ると、きっとどれだけしんどくても返信をくれます。
それを考えると、なんだかなかなかメッセージを送れなくて……。
サイトのコラムも、それっきり更新が止まったままで。
ぶっちゃけコラムの更新は、生存確認でもありましたから。
毎日覗いては、コラムが更新されてないか確認するのが日課になっていました。
新しいコラムが更新されなくなって1ヶ月を過ぎたころ。6月9日の早朝。
松下さんの訃報が届きました。
その前日に亡くなったそうです。
松下さん……
せっかくお会いできたのに、あれが最初で最後になったなんて。
もっと松下さんのコラムが読みたかったです。
お会いして、コラムには書けないような裏話も聞きたかったです。
遠慮せずにメッセージを送りまくってもよかったんだろうか。
もっと早くにお会いできるチャンスもあったはずなのに。
一緒に飲みに行きたかったですよ。松下さんは下戸だそうですけど。
僕より1つ年上なだけなんです。
まだ若いじゃないですか。
早いじゃないですか。
「ほんと、死ぬことは怖くないんですよ」
とおっしゃってましたけど
阪神の連覇は誰より見たかったでしょ?
寂しいですよ、松下さん。
特にうまくまとめられんまま、松下さんへの想いを書き殴ってしまいました。
お目汚しすみません。
阪神タイガースは僕が日本一、世界一好きな球団ですが
松下さんは世界一の阪神ファンで、あなたの書くコラムは世界一阪神愛に溢れていました。
これからは天国から阪神タイガースを見守ってくださいね。
ありがとうございました。
