10DANCE ふたりの信也⑥(ロミオとジュリエット)
こんにちは。
とうとう10DANCE公開から2ヶ月半が経過しました。公開を心待ちいしているときは、とてもとても長く感じましたが、公開されてからはなんだかあっという間でしたね。町田啓太さんは4月からの新ドラマ出演が発表されました。今作は子供たちとの交流を描いた心温まるストーリーのようです。杉木先生とは違い、子供たちに「甘い」先生のようですよ。金髪ゆるふわパーマがどことなく原作の鈴木信也のようで、、、また新たな姿を見せてくれる町田さんに感謝です。竹内涼真さんも4月からはミュージカル!歌とダンスが披露されるようで、こちらも楽しみですね。
さて、あっという間だった2ヶ月半とは違い、なかなか進まないこの「ふたりの信也」シリーズ。とうとう前回は別の記事を掲載してしまいました。どうしても書きたいことがあったため、、、(詳しくはこちらの記事でどうぞ)。書きたいことが多すぎるのと、端折って後悔したくない気持ちでつい、のんびりペースになっていますが、個人的な記録なので致し方ない、と言っても忘れる前に書かないといけないですね。
今回はふたりの深夜の練習の続きのシーンからです。このシーンもね、、、大好きなんです。まず口調からして好きです。
鈴木信也が
「あんたさ・・・」
と語りかけると
杉木信也は
「ん?」
と、優しく返すのです。
この、
「ん?」がとても優しいのです。ここだけ何度も聞き返したくなるくらい優しいのです。ふたりの間の空気感がさらに親密になったことが、この「ん?」でわかりますよね。
そして、この会話の中で杉木信也と「死神」との出会いが語られます。杉木信也はその「死神」のような男に憧れてダンサーになったのではなく、その美しく恐ろしい「死神」に取って変わろうとした、と鈴木信也に説明します。畏れでいっぱいになるその前に、と。
日本語って本当に難しく、そして美しいです。ここで「恐ろしい」と「畏れ」ふたつの「おそろしい」という言葉が出てきます。音だけ聞くと全く同じですが、字幕で本編を見ると明確に使い分けがされています。
「恐ろしい」という表面的な怖さとは異なり、「畏れでいっぱいになるその前に」とは杉木信也の感情面について述べています。「畏れ」とは相手への「敬い」が含まれているのです。つまり、「相手の偉大さに立ち向かう気力を無くしてしまう前に」ということが言いたかったのだと思います。それほどこのマーサと踊る「死神」のような男は、子供時代の杉木信也に大きな影響を与えました。マーサの言う「最高の紳士」になり、この「死神」に取って代わることが自らに課せられた宿命だと、そしてこの「死神」に魅せられて取り込まれてしまったら、もう自分の足では立てないだろうという恐怖とともに、自らを奮い立たせていたのだと思いました。だから杉木信也は必死で、彼にとっては「死神」に見えるこの「最高の紳士」になろうとしたのだと思います。この話は彼のダンスに対する根幹の話であり、恐らく今まで誰にも話したことがないこの話を鈴木信也に話すまでに至った、ということからもふたりの関係性がいかに親密かが分かります。なんとなく、このころになるとふたりの信也は10DANCEのために教え合っているのか、ただ本能的にもうひとりの信也と踊りたいから踊っているのか、その境界が非常に曖昧になっているように感じます。
続いて、杉木信也は「キューバは?どんな所ですか?」と話題を鈴木信也に向け直します。この時、杉木信也はスタジオ内に設けられた中二階の、まるでバルコニーのような場所から鈴木信也に語りかけます。それに呼応するように、鈴木信也も壁際から立ち上がりちょうど杉木信也の目線の先に位置する場所まで移動します。このスムーズな立ち位置の移動も、ふたりの感情がシンクロしていることを感じさせます。ほどよい距離感で、お互いのことを語り合うふたり。もっと知りたい。もっと自分を知ってほしい。どんどんとふたりの気持ち、心が近付いていくのを感じます。
そして、鈴木信也はキューバのことを次のように説明します。
「キューバ?音楽、ダンス、ラム。あと恋と海でできてる」このセリフの後、鈴木信也は微笑み杉木信也を見上げます。これはもう恋、してますよね。完全に。そして、キューバ人はすぐに恋に落ちる、とそう言うのです。つまりは、鈴木信也自身も、ということですよね。あまり意識せずにこの言葉を発しているように見えますが、聴いている方はドキッとしますよね。杉木信也はいったいどう思ったでしょうか。さらに鈴木信也は母親の話を続けます。以前の記事にも書きましたが、原作では母親が結婚と離婚を繰り返したことで、鈴木信也にはたくさんの妹たちがいます。そのことでなかなか苦労をしたようですので、そのことを思い出したのか、鈴木信也の様子が少し気落ちしたように見えます。そのことに気がついたのか、杉木信也がすかさず話題の矛先を変えます。話題を変えたそのセリフが素敵すぎて、実は私はこのセリフが本作で一番好きかも知れません。
「空は青いですか?」
少し遠い目をした後、中二階のバルコニーから少し身を乗り出すようにして、杉木信也はそう語りかけます。杉木信也にとって鈴木信也は力強く生命力に溢れた、彼自身のありのままをダンスで表現する憧れの人です。その鈴木信也を育み慈しんだ大地、キューバへの憧憬がこのセリフを杉木信也に言わせたのでしょうか。あなたをこんなに素敵な人に育てたキューバは、きっととても素晴らしい空なんでしょうね。そんな心の声が聞こえてきそうです。
そして、このセリフに答える鈴木信也もまた最高なのです。嬉しそうに微笑んだ後「青いよ」と、本当に嬉しそうに答えるのです。一瞬でこの場がキューバの砂浜に変わったかのように感じるくらいです。
「海には誰もいないから、恋をしたら2人で海に行く」
ここで鈴木信也ははっきりと杉木信也を見上げながらこう続けます。
「誰にも邪魔されずに、ヤシの下で過ごす」
そして、杉木信也の顔を見ながら、照れくさそうに笑うのです。
ここでのふたりの会話、バルコニーから身を乗り出す杉木信也と、それを下から見上げる鈴木信也。おそらく多くの方が感じたことでしょう。まるで、ロミオとジュリエットのようだ、と。禁断の恋だからこそ燃え上がる。
ここはキューバの砂浜で、2人は誰にも邪魔されずに踊るのです。
恋をした2人はそうやってダンスによって愛を確かめ合うのです。
この後、ふたりは非常に官能的なルンバを踊ります。それはそれはもう、これまでの初々しさはどこへいったのか。このダンスを見て、ふたりが想い合っていない、と思う人はまずいないでしょう。それほど激しく求め合うふたりの心情が、ダンスにはっきりと表れていました。このシーンについてごちゃごちゃと語るのは野暮ですが、ひとつだけ。わたしがこのシーンで一番心に響いたのは、ダンスの最後に映る、強く握りあうふたりの「手」でした。
この作品では男性同士の愛を描いています。同様のテーマの作品では「同性を愛することの難しさ」や「世間からの理解」という、ふたりの愛情以外の「同性同士であること」をストーリーの大きなテーマとする場合も多いです。しかし、本作では敢えてその「同性同士で愛し合うことへの試練」のような部分をフォーカスせずに描いているように思うのです。この話題はとてもセンシティブですし、個々によって捉え方が大きく異なる部分でもあると思いますが、わたしはそう感じました。本作は、人と人が本能的に惹かれ合っていき、そしてその愛が「ダンス」によって加速していく。愛することによって曝け出される、人の美しさや愚かさ醜さといった様々な感情が表現されている、そんな作品だと思うのです。
ふたりが握り合う手を見た時に、ただただ愛しい人と離れたくない、離したくない、手に入れたい、一緒にこの瞬間を過ごしたい、という求め合うふたりの気持ちが、余計なしがらみや常識なんてものを全て取っ払って「愛」だけにフォーカスされて伝わってきて、とても、とても愛おしかったのです。これが、わたしがこの「10DANCE」が大好きな理由のひとつです。
さて、ようやく今回みんな大好き「べサメムーチョ」のシーンまで記事にすることができました。まだ作品全体の三分の一にも満たないですが、、、。いつになったら終わるやら。どうぞ気長にお付き合いいただければ幸いです。また、この記事をきっかけに「もう一度あのシーン見てみよう」と、10DANCEをもう一度見ていただくきっかけになれば、なお嬉しいです。
拙い文章ですが、ここまでお読みくださって本当にありがとうございました。またお時間ある時にでも遊びにきてください。
