「この香り、ズルしてる?」──日本酒の付け香とは何か
「付け香(つけか)って知ってる?この酒、絶対付け香だよね〜」
ある大手が出して大ヒットしたパック酒について、そんなふうに語る人に遭遇しました。ほほー、そうですか。
そもそも付け香って何なのでしょうか。実際に今でも行われているのでしょうか?気になるポイントをまとめてみました。
1. 付け香って結局何?
日本酒の華やかな香り(いわゆる吟醸香)は、本来は発酵中の酵母がつくり出すエステル類などの成分がそのまま香っています。
ところが醸造後、人工的に香りエキスを加えて“吟醸香らしさ”を補う手法がかつて存在しました。
これが付け香と呼ばれるものです。着香(ちゃっこう)とも言います。バナナやリンゴのようなフルーティーな香りを出すため、カプロン酸エチルや酢酸イソアミルといった成分を後から添加するんですね。
2. どうやって香りをつけていたの?
1960年代、国の醸造試験所が開発したのが「香気捕集液」方式。発酵中の醪(もろみ)の香りをマイナス温度のエタノールで冷却したものをキャッチし、その抽出液を清酒にちょい足しするという技術です。
通称ヤコマンとも言われます。

理屈は面白いんですが、香りが飛びやすく安定しない、味わいとのバランスを崩しやすい、などの弱点があり、「香りは派手だけど味がついてこない」という評価が付きまといました。
3. 法律的には許される?
酒税法で“清酒”と名乗れる原材料は米・米こうじ・水(または醸造アルコールなど)に限られ、香料は範囲外。さらに1972年以降、全国新酒鑑評会の出品規定にも「香気捕集液などによる付香はNG」と明文化されました。
つまり今の日本酒業界では公式にアウトというわけです。着香したお酒を「清酒」として堂々と売るのは難しい状況になっています。
4. 令和の今でもやっている蔵はある?
結論から言えば、ほぼ皆無(のはず)です。理由は先に書いた通り法規制があるからというのと、やったとしても不自然なので消費者にはすぐバレるから。
唯一可能性があるとすれば、料理酒や合成清酒のような低価格帯で「日本酒風味」を補うケース。ただしこれは“清酒”とは別カテゴリー(合成清酒・リキュール)として扱われます。
まとめ
付け香(着香)=人工的に吟醸香を後付けする行為
昭和には研究・実用例があったが、今は業界的にタブー
技術的にも香りが飛びやすく、味わいとのバランスを崩しやすい
令和の蔵元は酵母選択や低温発酵など、正攻法で香りを磨くのが当たり前
もし過剰に香りが強い日本酒に出会ったら、まずは蔵の造りや使用酵母を調べてみるのがおすすめです。仮に不自然なくらい華やかな吟醸香があったとしても、酵母や巧みな発酵コントロールの賜物かもしれません。
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酒代になりますがいいんですか?本当に?