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科学と聖書にまつわる随想(103)「熱機関」

「熱機関」

 自動車のエンジンや蒸気機関車の動力源など、いわゆる “熱機関” は、燃料を燃焼させて発生する熱でガスを膨張させ、その圧力でピストンを押したりタービンを回したりすることによって、燃料物質に蓄えられた化学エネルギーを熱エネルギーとして取り出し、それを機械的なエネルギーに変換して動力を得る装置です。自動車のエンジンの場合は、ガソリンが燃焼して生じる高温のガス自体が高圧になってピストンを押し動かします。機構の内部で燃料が燃焼するので “内燃機関” と呼ばれます。一方、蒸気機関は燃料の燃焼熱で水を沸騰させて高圧の水蒸気を作り、その圧力を動力源としています。ボイラで水を外側から加熱して沸騰させるので “外燃機関” と呼ばれます。ボイラで発生した高圧水蒸気の力を用いるという原理は、原子力発電においても、熱源となる燃料は異なるものの基本的には同じです。

 記事(11)に記しましたように、物理学では、物体に1 $${\rm N}$$(ニュートン)の大きさの力(約100gの重さに相当)を加えて距離1 $${\rm m}$$ だけ移動させた時、1 $${\rm J}$$(ジュール) の “仕事” をしたといいます。つまり、1$${\rm J}$$ = 1$${ \rm N \cdot m}$$ です。“仕事をする” ということは、相手にエネルギーを与えることを意味します。ところで、圧力は単位面積(1$${\rm m^2}$$)当たりに働く力のことで、$${\rm Pa}$$(パスカル)という単位で表します。1$${\rm m^2}$$ の面積に1$${\rm N}$$の力がかかっている時の圧力が1$${\rm Pa}$$ です(1$${\rm Pa}$$ = 1$${\rm N/m^2}$$ )。仮に、ガスが1$${\rm Pa}$$ の圧力で1$${\rm m^3}$$ の体積だけ膨張して面積が1$${\rm m^2}$$ のピストンを動かしたとすると、ちょうど1$${\rm N}$$の力でピストンを1 $${\rm m}$$ だけ移動させたことになりますので、ガスがピストンに対してした仕事は1$${\rm J}$$になります。ピストンの面積が半分になれば、ピストンに加わる力は半分になりますが、体積膨張量が同じならピストンの移動距離が2倍になりますから仕事の大きさとしては同じです。ですから結局、ガスの圧力と膨張した体積を掛けた量が、ガスがピストンに対してした仕事の大きさになります。1$${\rm Pa \times }$$1$${\rm m^3}$$ = 1$${\rm N/m^2 \times }$$1$${\rm m^3}$$ = 1$${ \rm N \cdot m}$$ =1$${\rm J}$$ です。

 気体の圧力$${P}$$と体積$${V}$$は、温度$${T}$$が一定なら反比例の関係にあります(ボイルの法則)。また、圧力$${P}$$が一定なら、体積$${V}$$は温度$${T}$$に比例します(シャルルの法則)。圧力$${P}$$と体積$${V}$$がどのような状態にあるかを、一般に、横軸が体積$${V}$$、縦軸が圧力$${P}$$のグラフで表します。今、図のように、圧力$${P}$$と体積$${V}$$が、図のA点からA→B→C→D→Aの順にグルっと一周回るように状態が変化したとします。この時、この気体は外部と熱や仕事でエネルギーのやり取りをすることになり、このような過程を “熱サイクル” といいます。

それぞれの段階でどのようなエネルギーのやり取りになるかを考えてみましょう。
(A→Bの過程)
 体積が$${V_1}$$で一定ですので、ピストンを動かしてはおらず外部に対して仕事はしていませんが、圧力が$${P_1}$$から$${P_2}$$に増加するためには温度が上昇しているはずですから、その分だけ外部から加熱されていることになります。
(B→Cの過程)
 圧力が$${P_2}$$で体積が$${V_1}$$から$${V_2}$$に膨張しています。これはピストンを押し出す動作に相当し、$${P_2 \times (V_2 - V_1)}$$ だけの仕事をしたことになります。この時、温度も上昇しているはずで(シャルルの法則)、外部から加熱されなければなりません。
(C→Dの過程)
 体積が$${V_2}$$で一定ですから仕事はしていません。圧力が$${P_2}$$から$${P_1}$$に下がるために外部に熱を放出して冷却している区間です。
(D→Aの過程)
 圧力が$${P_1}$$の状態で体積が$${V_2}$$から$${V_1}$$に収縮しています。ピストンが押し戻されている状態です。この時、気体がピストンを押す力の向きと逆向きにピストンが移動していますので、気体は外部から$${P_1 \times (V_2 - V_1)}$$ だけの仕事をされています。圧縮されているのに圧力が一定ということは温度が下がらなければならず、したがって、その分の熱を放出することになります。

 図のサイクルでは、 B→Cの過程で外部に対して$${P_2 \times (V_2 - V_1)}$$ だけの仕事をし、 D→Aの過程で逆に$${P_1 \times (V_2 - V_1)}$$ だけの仕事をされていますので、差し引き外部に対してした正味の仕事の大きさは $${(P_2 - P_1) \times (V_2 - V_1)}$$ 、つまり、図でサイクルの長方形で囲まれた面積に相当することになります。また、A→B→Cの過程では外部から加熱され、C→D→Aの過程で冷却されて熱を放出しています。エネルギーの収支を考えると、加熱によって供給されたエネルギーと冷却の際に放出されたエネルギーの差に相当する量が、この外部に対してした正味の仕事量(つまり、機械的エネルギーとしての出力)ということになります。

 加熱の際に供給されたエネルギーに対して、それが正味の仕事として有効に使われた割合を “熱効率” といいますが、温度を下げるために冷却して外部に熱を放出する過程が存在する以上、熱効率は100%には成り得ません。つまり、燃やすなどして燃料から取り出した熱エネルギーを全部仕事(機械的エネルギー)に変えることはできない、ということです。例えば、ガソリンエンジンの熱効率は、せいぜい40%程度と言われています。残りのエネルギーは捨ててしまっている(熱を周りに逃がしている)ことになります。

 日常生活においても、私たちが生活をしていると必ずゴミが出ます。例えば、スーパーで食料品を買う場合でも、全ての商品は包装紙やプラスチックの袋や容器などに入って売られていますから、実際に必要な物以外に結局は捨ててしまうものが必ず付いて来ます。私たちは食料品からエネルギーを得て生きている訳ですが、必要なエネルギーや栄養素を得るためには、それ以外のもの、つまり、結局は排泄されてしまうものも一緒に一旦摂取しなければなりません。全く無駄を生じること無しに生活することは不可能なのです。

 同様に、私たちの持っている物も、私たち自身も、全て神(創造主)から与えられた(借りている)物ですが、それを私たちの人生において、一生の間に100%使い切ることは不可能です。そして、生まれて来た時には何も持たずに生まれて来たのですから、この地上を去る時にも何も持って行くことはできません。

そして言った。「私は裸で母の胎から出て来た。また裸でかしこに帰ろう。主は与え、主は取られる。主の御名はほむべきかな。」

(ヨブ記1:21 )

したがって、一生の間に稼いだ財産も、生きている間に100%使い切ることはできず、結局、いくらかを残して行くことになります。

彼らは 自分の財産に拠り頼み 豊かな富を誇っている。
兄弟さえも 人は贖い出すことができない。 自分の身代金を神に払うことはできない。
たましいの贖いの代価は高く 永久にあきらめなくてはならない。
人は いつまでも生きられるだろうか。 墓を見ないでいられるだろうか。
彼は見る。知恵のある者たちが死に 愚かな者 浅はかな者も等しく滅び 自分の財産を他人に残すのを。
・・・・・(中略)・・・・・
人は栄華のうちにあっても 悟ることがなければ 滅び失せる獣に等しい。

(詩篇49:6 ~ 20)

 自分がこの世を去る時に残して行くものは、後の人々にとって有益なものであることを願います。ただ、その前に主イエス・キリストが再び来られ、天に携え挙げて頂くことができたら、と切に願います。


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