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雲を売る【シロクマ文芸部】

 雲を売るおばあさんに会ったことあるかい?
僕はあるよ!

 七歳の夏休みにおじいちゃんちに行ったときのことさ。
近くの神社に蝉取りに行くと、石段におばあさんが座っていて
僕に言ったんだ。
 「ぼうや、雲はいらないかい?売ってあげるよ」
 「え?雲なんて売れるの?」
 「ああ、ほら見ていてごらん」
 その日は真っ青な空に、シロクマが立ち上がったようなホクホクの雲が出ていた。おばあさんはうんしょっと立ち上がり、猫背を伸ばすとひょい、とそのはじっこを掴んで引き寄せた。すると雲がスルスルと降りてきたのだ。
 「ほら、そのリュックを開けて!」
 言われたとおりにすると雲が僕のリュックにギュッとつまった。
 「好きな形にしてほおり上げてごらん」
 僕はまず、雲のはじっこをちぎり、肉まんの形にしてほおり上げた。すると空に、蒸かしたてで湯気をあげているような肉まんの形の雲が浮かんだ。今度は出来るだけ細く伸ばしてほおり上げると、空を横切る飛行機雲になった。棒のような形にしてみたら、昨日裏庭で見つけたヘビの抜け殻そっくりの雲になった。

 夢中になっていろんな雲を作っているうちに、僕のリュックには最後のひと固まりの雲だけになった。両手に乗せてどうしようか考えていると、おばあさんが道端に咲いている赤い花を一つ採り、キュッと絞ってその汁を振りかけた。雲はみるみるピンク色に染まりフワリ空に舞い上がった。
 「ほら、ぼうや、夕焼雲だ、もう帰る時間だろ」
 僕はあわてて立ち上がり「さよなら~!」と叫びながら走り始めた。お金払うのを忘れた!と振り返ったが、もうおばあさんの姿は見えなかった。

 家に着くと家の前にお母さんの車が止まっている。横浜から迎えに来てくれたのだ!
 「ワンワン!」
 玄関に入るとまたびっくり!真っ白なホワホワの雲のような毛をした仔犬が飛び出した。
 「かあさん!犬?」
 「欲しがっていたから保護犬飼うことにしたのよ」
 ホゴケンってどんな種類か知らないけれど、もう僕は大喜び!
ほんとはね、おばあさんに内緒で犬の形をした雲をポケットにしまってたんだ。落としたのか、なくしちゃったけど。
 僕はうれしいかったよ、とっても!

            おわり


小牧さんの企画に参加させてください。
楽しいお題をありがとうございます!


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