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やさしい人


 やさしいひとはだれだって好き
 札つきだろうと殺し屋だろうと
 やさしいことを言ってくれるなら
 たとえ世界が空から落ちても
 あたしはあの人をかばう
 やさしくしてくれるなら・・・

 大好きな歌だ。中島みゆきが哀しくはかなげに歌っている。
ぞっとするほどの"人恋しさ"だ。「わたしもおんなじよ。」
と彼女の目を見てほほえんであげたくなる。
・・・そう、やさしいひとはその気になってみればけっこういる・・・

 銀行のドアをわたしが通るまでさりげなくささえてくれた初老の紳士、縞の背広に銀髪がすてきだった。気難しい顔をして、こちらを見ようともしなかったけれど・・・


 改札口の前で肘で押してしまったおばあさん、
「すみません。」というと、「いいえ、こちらこそすみません。」と答えてくれた。言葉が返ってくるなどと思わなかったのに・・・


 ダンプのお兄さん、車で横道から混雑した国道に出ようと
した時、道をゆずってくれた。高い運転席から、「お先にどうぞ。」とさしだした手の動きがやさしかった。不精ひげの顔には似合わなかったけれど・・・
 

 バスの運転手さん、道路が渋滞していてバスが進まないので、
停留所でもないところでおろしてくれた。バックミラーを見たまま、「後ろからバイクが来ているから気をつけておりて下さいね。」と言いなら・・・
 

 カラオケスナックで会ったひと、スーツを着て初めて聞く演歌を歌っていた。昔の恋人に似ていたので目が合った時も思わずほほえむと、笑いかえしてくれた。歌い終わってみつめてくれた瞳に、わたしは小さく拍手をした。胸のときめきが伝わっただろうか・・・


 デパートの店員さん、白いコートを手にとって見ていたら
「どうぞ、試着してみてください。お客様のロングスカートに
ピッタリですよ。いつもそんなスカートおはきですか。」と話しかけてきた。
「いいえ、パンツが多いですね。スカートはこれと、ロンタイと2つだけ。沢山持ってるようにみえるでしょ?」
「ええ!もちろん!」
「そんな顔してるだけよ。」
「まあ、お客さん、明るい!」
その言葉につい笑ってしまったが、おかげでつらいことがあって沈んでいた気持ちをつかの間忘れることができた。見るだけで、買う気がなくてごめんなさいね。                   
  

嘘つきだろうと落ちぶれだろうと
やさしいことをくれる人ならば                                   たとえ世界が空から落ちても                                      わたしはあのひとをかばう
やさしくしてくれるなら・・・(中島みゆき作詩)
 

                              おわり   

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