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ぽんたろうはつぶやく58

「夜中の県外ナンバー」


三日ほど前、輪島でスリランカ人二人が逮捕されたというニュースを見た。 崩れた寺社から銅板を盗んだ疑いだという。
——まだ、こんな連中いるのか。

自分も、一度だけ妙な場面に出くわしたことがある。 まだ震災から間もないころ。 住んでいる家が倒壊し、車中泊をしていた。

深夜。 気配がして目が覚めた。 外を見ると、真っ暗な道に見慣れない車が三台。 人影が動き、なにかを運んでいた。 嫌な予感しかしなかった。

あまりにも不自然なので警察に電話すると、 「ナンバー確認してください」 と言われた。
——まぢですか。こっち一人なんですけど……。

電話口で一応聞いた。 「ひとりで行って大丈夫ですかね」と。 けれど、気づくと何となく従っていた。

非常時、人は妙な行動力を発揮する。

三台とも県外ナンバーだった。
関西圏。

電話しながら近づいていくと、一台が突然、逃げるように走り去った。
——うわ、やっぱり。

残った二台のナンバーを読み上げている途中だった。 男が一人、こちらに近づいてきた。

「どこに電話しているのですか」
「自分たちは怪しいものではないです」

いやいや、めちゃくちゃ怪しい。 ていうか、自分から「怪しくない」という人を、はじめて見た。
ちなみに深夜二時である。

さらに、 「あなたの名前、教えてもらってもいいですか?」 と聞いてきた。
いや、その前にお前は誰なんだ。

そうこうしているうちに、パトカーが来てくれた。 本当にほっとした。
震災対応でめちゃくちゃ大変な時期だったはずなのに、ちゃんと来てくれた。

あの頃は、余震よりも、また誰かが入り込んでくるんじゃないかという怖さのほうが強かった。
近くには半壊した両親の住まいと、父所有のビルがあった。
街中の壊れた建物はそのまま。 朝市周辺には、まだ焦げたにおいが残っていた。
その時は、多くの人が学校や公民館などで避難所暮らしだった。

そんな状況の中でも、人の弱ったところに入り込んでくる者たちがいた。

今回のニュースを見て、あの夜を思い出した。
あの夜の男の「怪しくないです」は、いまでも人生で一番怪しいセリフだ。


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