Insight 00|もうひとつの人生を歩く ― プロローグ
映画館の灯りが、ゆっくりと点いていく。
エンドロールは終わったはずなのに、
私はまだ席を立てずにいる時がある。
本を閉じても、
しばらく表紙に手を置いたままになることもある。
物語は終わったはずなのに、
心だけが、その世界に残っている。
そんな経験はないだろうか。
そのとき私は、いつも同じことを考える。
「なぜ、この場面がこんなにも心に残ったのだろう。」
その問いは、
作品に向けられたものではない。
いつの間にか、
自分自身へ向けられた問いになっている。
1|人は、一度しか自分の人生を生きられない
人は、自分の人生を一度しか生きることはでない。
違う家庭に生まれることも、
違う時代を生きることも、
まったく別の価値観を持つ人として人生を歩むこともできない。
だからこそ私は、
映画や本には、大きな意味があると思っている。
一冊の本を開けば、
誰かの人生を歩くことができる。
一本の映画を観れば、
自分とは違う立場で世界を見ることができる。
そこには、
自分なら選ばなかった道があり、
出会わなかった人がいて、
経験しなかった喜びや苦しみがある。
物語は、
「もうひとつの人生」を体験させてくれる。
私は、そう思っている。
2|物語は、答えではなく問いをくれる
けれど、本当に大切なのは、
作品を観終えたそのあと。
「私は、なぜここで立ち止まったのだろう。」
「なぜ、この人の選択が気になったのだろう。」
「もし自分だったら、どうしただろう。」
その問いに向き合う時間は、
作品を振り返っているようでいて、
実は、自分自身を見つめ直している時間なのかもしれない。
だから私は、
映画や本を「答えを教えてくれるもの」とは思っていない。
むしろ、
自分の中に眠っていた問いを、静かに呼び起こしてくれるもの。
そんな存在だと感じている。
3|すぐに答えが出なくてもいい
作品から何を感じ取るのか。
その答えは、人それぞれ違っていい。
そして、
その気づきをすぐに人生へ生かせなくてもいい。
答えが出なくてもいい。
言葉にならなくてもいい。
私は、
考え続けることそのものに価値があると思っいる。
ある映画のワンシーンが、
数年後の出来事と重なって、
「あのとき心に残った理由は、これだったのか。」
そう思える日が来るかもしれない。
だから私は、
作品と出会う時間を、
答えを探す時間ではなく、問いを育てる時間
として大切にしたい。
4|このマガジンで届けたいこと
このマガジンでは、
映画や本の感想を書きたいわけではない。
レビューを書くことが目的でもない。
映画や本をきっかけに、
働くこと。
人との関わり。
迷いながら選ぶこと。
自分らしく生きること。
そんなテーマについて、
一緒に考えていきたいと思っている。
心理学やキャリア理論も登場する。
でも、それは作品を分析するためではない。
「あの日、自分が感じたこと」に、そっと意味を与えてくれる灯り。
そんな存在として紹介していく。
エピローグ|物語のあとに、自分の人生へ戻る
このシリーズでは、
作品を通して、もうひとつの人生を歩いていく。
けれど、
最後に戻ってくる場所は、いつも自分自身の人生。
物語の主人公のようには生きられないかもしれない。
同じ選択をすることもないだろう。
それでも、
誰かの人生を歩いた時間は、
きっと自分の人生を少しだけ豊かにしてくれると信じている。
景色が少し違って見える日が来るかもしれない。
迷っていたことに、
新しい意味が見つかる日が来るかもしれない。
だから私は、
作品を観ることを「娯楽」だけではなく、
自分自身と静かに対話する時間
として、大切にしていきたいと思っている。
最近、あなたは、どんな物語の中を歩きましたか。
その物語は、あなたに何を問いかけていたのでしょうか。
