【かぞくのじかん2×2】ヒグラシの鳴く朝
ニャー!
朝4時。
恒例の三毛姉さんのモーニングコール。
ぼーっとしながら、三毛姉さんを撫で撫で。
お外は、夜でも昼でもない蒼い時間。
カナカナカナカナ……。
ん?
……カナカナカナカナ。
おぉ。ヒグラシ。
カナカナカナカナ……。
……カナカナカナカナ。
寄せては返す波のように、遠ざかったり、近付いたりする鳴き声。
良かった。
最近の村は、宅地開発で、雑木林が減りつつあるんです。
ヒグラシの鳴く雑木林。
良かった。今年も聞けた。
ヒグラシが鳴くから、この村に住んだ、って方もいるんです。
大切にして欲しいのですが……。
リビングに下ります。
なんだ? この時間から、もわっとする。
スーパー熱帯夜の余韻でしょうか。
コロコロコロ。
網戸からコオロギの声。
8月……ですか。
虫たちの声が、季節の移ろいを教えてくれます。
教えてはくれているのですが、暑いので窓を閉めて、エアコンをピッ!
5時前なのに、この湿度と気温は、さすがにどうなんでしょう。
今朝は、『ぶっかけゴマ油そうめん』にしましょう。
キンキンに冷やしたそうめんを食べたい気分。
そうそう。
庭のホトトギスが一輪だけ咲いてるんです。
日陰とはいえ、秋の花なんですけどねぇ……。
異常な季節に、植物も戸惑ってるんでしょうかね。
実は、なんか寝苦しいな、って昨夜一度起きて、今日の夕食の一品を作ったんです。
味も染み込みさせたいですし。
眠きゃ、寝れば良いですからね。
お休みですから。
ミー……。
黒ねこ君のハイトーンボイス。
さっきまでお風呂場で長くなってたんです。
クーラーの冷風が良い感じになった頃に登場です。
黒ねこ君を撫でて、冷たいカフェオレを入れます。
ごくっ。
冷たいカフェオレが、喉を伝わるのが分かります。
まだ料理は作りたくないな……。
黒ねこ君のサイレントニャー。
こんな時は、撫で撫でタイム。
ベルベッティーな毛触り。
黒ねこ君が目を細めます。
コロコロコロ……。
コオロギの音を聞きながら、まったりと過ごす朝。
休日の朝です。
寝室が暑かったらしく、妻が早起き。
「今朝、なんだっけ?」
「『ぶっかけゴマ油そうめん』だよ」
「……」
前にも何回も作ってる――、と言いかけた瞬間、妻が、あぁー、って思い出した様子。
「炒めないそーめんチャンプルーね。アレ、美味しいよね」
妻は、その名で覚えていたよう。
ま、名前はどちらでも良いのですが。
茹でたそうめんの水気を切ったら、ゴマ油とお醤油で和えます。
器に盛って、鰹節をバサバサ。
その上に、みょうが、大葉、青ネギをたっぷり散らして出来上がり。
良く混ぜながらいただきます。
塩味が足りないかなぁ、って思ったら、お漬物を囓れば良い感じに。
あー……。
妻が息を漏らしました。
ん?
「しば漬けが沁みるぅ……」
季節をそっと器に載せる。
梅干しとしば漬けがあれば、夏を載りきれる気がした、そんな猛暑の朝です。


