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【桜城市コラボ小説】ほのぼの柿の木びより⑥〜七夕に再会の願いを掛けて


「やっぱり、なんだか緊張してきてるかもしらん…。」

大学生の雨香えるは、所属しているグリークラブのステージ発表に出演するために、桜城市の七夕祭りの会場・桜城公園へと戻って来た。衣装やメイクの準備は整えてきたものの落ち着かない。持て余した集合時間までの間を、祭りで賑わう会場をうろうろする事で埋めようとしていた。
ふと午前中に見た『占い付、ハーブティーの店』の看板が目に入った。

(そうや、ハーブティーで落ち着こう!)

そう思い立つと、えるは紫色の布で仕切られた少し薄暗いテントの中へ勢い良く入っていった。
テントの中は落ち着いた雰囲気で、いくつかの簡易的な個室に分かれていた。テントの中の女性が笑顔でえるを迎える。

「ようこそ、占いの館へ…あ、違った…ハーブティーのお店へ…。」

黒いドレスに黒のレースのヴェールを被った女性占い師、万間知恵は何事もなかったように説明してくれた。

「私はこちらの女主人、万間知恵と申します。こちらがハーブティーのメニュー。すべてに簡単なタロット占いが付いてますの。今こちらで占うか、後日お店で占うか、お選びいただけます。いかがなさいますか?」

えるは、知恵が差し出したメニューを覗き込む。

「へぇ、すごいですねぇ。どうしよかな?ほな、今日は、あまりゆっくりできひんので占いは後日で、ハーブティーは何かリラックスできそうなのを…どれが良いですやろ?」

えるは大学では生物学を専攻していて植物学も講義を受けているが、ハーブティーには詳しいくない。
知恵が答える。

「お嬢さん、この後大きな仕事か何か大切な事があるのね……だったらこれ。リラックスと集中力を高めるブレンドよ。」

「…ほな、それをお願いします…」

えるはこの後のステージ発表の事が見透かされたようで内心ドキリとした。

(もしかして、この占い師さん、すごい人なん?ハーブティーもすごい効力があったりして〜!)

えるの期待が俄然高まった。

知恵が運んで来たガラスのポットにはフレッシュハーブが沈んでいる。カップからも柔らかな湯気が立ち昇っていた。
えるは香り嗅ぎ、ひと口含んでみる。

「美味しい〜」

甘く優しい香りが鼻から頭に抜けて、温かいお茶がえるの体をほぐす。しかしながら最後にはミントの爽やかさが残って、視界がはっきりとして、頭が軽くなった。これなら集中力も高められそうだ。

「すごいです。おいしかったし、これなら発表も上手くいきそうです。ほんまおおきに!」

えるは笑顔で知恵に礼を言う。

「あらあら、そんなに喜んでいただいて嬉しいわ。発表、頑張ってらしてね。あ、これ占いの券、今度お店に持っていらして。」

知恵が差し出した占いの券にはタロットカードのイラストだろうか、美しい絵柄が印刷されていた。
えるはその券を受け取ると御守のように大切にポケットしまった。
店のテントから出ると、ポケットを優しく触る。そして、真っ直ぐステージへ向かって歩いていった。



「女将さん、俺…そろそろ行く…」

伊那谷がそう呟くと、女将の渋乃が振り返った。

「あら、もうそんな時間?!大変、ありがとうね。こっちは大丈夫だから、そのうち、えるちゃんも来るって言ってたし…。予定あるのに無理言って悪かったわね。」

少し申し訳なさそうな顔をする渋乃に、伊那谷は付け加えた。

「あ、でもほんとに忙しかったら…呼んで…近くには居るから…。」

桜城天守閣は夕陽の残照をわずかに背負って、赤からグレーへと色を変えていくところだった。

七夕祭りの手伝いに駆り出されてた、常連客の伊那谷はそろそろ次の予定があったのだ。帰り支度をまとめて、やけに大きな荷物を持つとソフトクリーム屋台のテントを後にする。
その後ろ姿に『田舎料理柿の木』の女将、市田渋乃は声を掛ける。

「どんちゃん、ありがとう〜!今度お店来た時は、丼奢るから〜!」

女将の渋乃は朝からこの七夕祭りにソフトクリームの屋台を出している。売り上げは上々だった。
夕暮れが濃くなり、屋台に明かりが灯り始めた。涼しい風が屋台ひしめく公園の中を吹き抜ける。七夕の笹飾りがさらさらと音を立ててなびいている。
ステージでご当地アイドル【サクラ・キャッスル・ガールズ】のライブが始まったせいか、人通りがまばらになってきた。遠くのスピーカーから、アップテンポの曲が聞こえてくる。

渋乃は一息ついて、椅子に腰掛け手拭いで汗を拭う。
頭に着けていたパンダのプラスチックのお面を外して、改めて眺めてみる。このお面は先ほど休憩した時に買ったものだが、眺めていると、だいぶ昔のお祭りの記憶がよみがえって来そうだった…。

ちょうどその時、

「女将さ〜ん、お待たせしました〜!」

なんだか上機嫌の雨香えるが帰ってきた。

「あら、えるちゃん。ご機嫌ね!ステージ発表、上手くいったようね!疲れてるだろうに悪いわねぇ。」

申し訳なさそうな顔をする渋乃にえるは、

「何言ってるんですか〜、私が来たかったんです!これ、一緒に食べようと思いましてん。」

そう言って、日々ちゃんの作ったパンダたこ焼きを差し出した。たこ焼きの上にかわいいパンダの顔のマシュマロ?が乗っている。

「わー、何これ!かわいいじゃない!」

「そうなんです。あの、日々ちゃんがたこ焼き屋になってて、これ作ってはったんです。って、女将さんもかわいいパンダのお面持ってるじゃないですか〜!?パンダとパンダ、これ一緒に写真撮りましょう!」

そう言って、えるは鞄からスマホを取り出し、パンダのお面を着けさせた女将さんと、パンダたこ焼きと自分自身とをスマホの画角に収めようと手を伸ばす。

「ところで女将さん、このお面どこで買ったんですか?」

「あ、これね、そこの前にお面屋さんが出てたのよ。白い蛇のお面被ってるお兄さんがやってて。白蛇って縁起がいいでしょ、だからそれが欲しいって言ったんだけど、売り物じゃ無いからって断られちゃって…。で、パンダ。パンダも縁起良さそうでしょ?」

「へぇ〜、へびのお面屋さんかぁ…って蛇?ヘビ?ヘビっ!!」

えるはびっくりして立ち上がった。

「女将さん!そのヘビさん、どこ、どこにおりやんした??」

「え?どこって…その辺にお店あったけど…」

話を最後まで聞かないうちに、女将の渋乃が指さした方へ、えるは走って行ってしまった…。

「あらま。若い人はエネルギッシュねぇ〜。」

ひとり屋台に残った渋乃は、えるの行方を目で追いながらも、パンダたこ焼きをひとつ口に入れた。

「あらま。これも美味しいわ。」

渋乃は、ニンマリと笑いながら、よしっと気合を入れて椅子から立ち上がった。


つづく


こちらの小説は桜城市とのコラボ作品です♪

オリジナルキャラクター達の住む架空都市【桜城市〜さくらのじょうし】

このnoteの世界に突如として現れた桜城市はオリジナルキャラクター達の住まう街。それほど大きくはないけれど、海あり山あり、お城あり、一年中桜の咲いているハッピータウンです。オリジナルキャラクターを作って登録すれば、誰でも桜城市民になれます。

詳しくはコチラから↓

短編小説『ほのぼの柿の木びより』は桜城市柿の木町にある「田舎料理柿の木」の面々のほのぼのした日常を不定期、基本読切短編にて綴っていく予定です。といいつつ、七夕祭り編はちょっと長くなりましたが、残り1話!よろしくお願いします。

桜城市には色んなクリエイターさんのコラボ作品も多数投稿されています!

皆さんも架空都市桜城市に遊びに行きませんか?


今回、作中に登場したコラボキャラクターは

クリエイター ともえさんの
万間 知恵 さん

黒いヴェールに包まれた女占い師、ハーブティーにも詳しい!

占いの的中率が異常に高い凄腕占い師さんです!



クリエイター 織の日々是好日さんの
日々ちゃんアヒルちゃん

愛らしい日々ちゃんとアヒル様の桜城cityでの日常が、ポップな4コマ漫画で楽しめます!パンダたこ焼きの生みの親です♪


お面店の店主、白蛇のお面の男
クリエイター 山本蛇内さんの
本山蛇添(もとやまだぞえ)さん↓

蛇人間なんだけど、なんか優しそうなオーラがでています。不思議な力が使える月の密偵らしいです…。


桜城市へのご質問、移住相談等はこちらの窓口で♪↓

市長の瑛さんが答えてくれます。
住民同士の井戸端会議場としても利用しています♪

次回、七夕祭り編最終回です。よろしくお願いします!

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