【桜城市コラボ小説】ほのぼの柿の木びより④〜いよいよ七夕祭り本番!
「だいたいこんなもんで、いいかしら!」
『田舎料理柿の木』の女将、市田渋乃は七夕祭りに出店するソフトクリーム屋の準備をおおよそ終え、首に掛けた手ぬぐいで汗を拭っている。
「お祭りらしくなって来ましたね!」
手伝いに来ている柿の木のアルバイト、雨香えるもタオルで汗を拭いながらしばし手を止め周りを見まわす。
今日は桜城市の七夕祭り当日。桜城公園にはたくさんの屋台が皆忙しそうに開店の準備をしている。
桜城公園は桜城市のほぼ中央に位置する桜城(さくらのじょう)の天守閣の周りに広がる、本丸、二の丸跡を利用した公園である。いつでも満開の桜に囲まれていて、そのどこからでも桜城の天守閣を臨むことができる。
今日は桜の木と木の間に、高さ5メートル以上ありそうな笹が何本も立てられ、カラフルな七夕飾りがさらさらと風に揺れている。
お祭りが始まるのが待ち切れないのか、子供たちも七夕飾りの中を走り回って風になっている。
「こっちはだいたいいいから、えるちゃん、少し他のお店見て回ってきたら?面白そうなお店がないかチェックしてきてよ。」
レジの釣銭を確認しながら、女将の渋乃が言う。いつもは着物姿に割烹着の女将も今日は、Tシャツに商工会の法被を着ている。
「えー、いいんですか?ほなちょっと一周見てきます!」
そう言うと、えるは脱いだ法被をきれいに畳んで椅子に置き、軽い足取りで広場へ繰り出して行った。
桜城公園の広場には大小様々な店が並んでいた。焼きそば、たこ焼き、射的にヨーヨー釣り、お面、くじ引き、かき氷、綿あめ、お酒や焼鳥といった居酒屋まで出現していた。
えるはその中で一軒気になる店を見つけた。占い付ハーブティー、そう看板が出ている。
(お祭りにハーブティーなんて見たことあらへん!しかも占い付って、めっちゃ面白そう!!)
準備をしている女性もいかにも占い師らしい格好をしているし、えるは後で寄ってみようと心に決めた。
(たこ焼き屋も何種類も店だしてはるなぁ。どこが美味しいんやろか?)
そんな事を考えているうちに、たこ焼きを焼いている日々ちゃんと黄色いアヒルちゃんを発見した。
「日々ちゃん、こないだぶりやんか〜。たこ焼き屋さんしとるの?」
以前、色々あって知り合いになった日々ちゃんに、えるは声をかけた。日々ちゃんは栗色のセミロングにグリーンの瞳の可愛らしい少女に見えるが、実は100歳だった事を思い出し、敬語のほうが良かったかなと後悔する。
「失礼、日々さんや、ちゃん付けしてごめんなさい。」
「いえいえ、気にしないで下さい。この見た目なので。でもこの見た目のほうが得することも多いんです。
あ、それより、たこ焼きいかがですか?」
日々ちゃんの焼いているたこ焼きの上にはパンダが乗っている。
「えっ、パンダかわいい!これめっちゃかわいいですやん!後で必ず買いに来ます!!」
えるはそう約束すると、女将さんが待つ柿の木のソフトクリーム屋台へ戻って行った。
「ただいま〜、戻りました〜って女将さん!!何してはるんですかっっ!」
女将の渋乃は、ソフトクリームの2つのメニュー、【星空ソフト】と【抹茶・桜ソフト】の看板の隣に【イナゴソフト】の看板をこっそり出しているところだった。
「あ、えるちゃん…もう帰ってきたの…おかえり…」
渋乃はバツが悪そうに背中で看板を隠そうとしている。
「女将さーん!この間イナゴソフトは難しいんじゃないかって話しましたやん!これ、これ、この看板!!」
えるは、女将の渋乃が隠しているイナゴソフトの看板に必死に手を伸ばすが、渋乃のディフェンスはなかなか堅い。
「えるちゃん!落ち着いて、話を、聞いて!イナゴは故郷の味なの…。なかなか都会の人にはね馴染みがないかも知れないけど、私にとっては普通の、家庭の味なのよ!知って欲しいの、皆に!だから、お願いっ!!」
そう懇願する渋乃の言葉にえるは、はっとさせられた。
(女将さんにとってはイナゴの佃煮は普通の食べ物なんや。私にとってはあまり馴染みがないだけで…ふるさとの食文化を否定する権利なんて、私にはあらへんやん…)
えるは女将さんの後ろの看板に伸ばしていた手を静かに引っ込めると頭を下げた。
「ごめんなさい、女将さん!私、わかっていませんでした、女将さんの気持ち。もう、イナゴソフトも売っちゃいましょう!!女将さんの故郷を思う気持ち、応援します。こないなったら、イナゴソフト、全力で推しましょう!!」
「やったー!ありがとう、えるちゃん!そう言ってくれたら私もうれしいわ。イナゴソフトも、バリバリ売るわよ〜!!」
渋乃とえるはアイコンタクトで頷き合うと、法被をビシッと着込み、それぞれキビキビと動きはじめたのだった。
そしてこの七夕祭りで【イナゴソフト】が、一番の売れ筋商品になるとは、この時の二人は知る由もなかった…。
つづく
オリジナルキャラクター達の住む架空都市【桜城市〜さくらのじょうし】
このnoteの世界に突如として現れた桜城市はオリジナルキャラクター達の住まう街。それほど大きくはないけれど、海あり山あり、お城あり、一年中桜の咲いているハッピータウンです。オリジナルキャラクターを作って登録すれば、誰でも桜城市民になれます。
詳しくはコチラから↓
こちらの短編小説は桜城市柿の木町にある『田舎料理柿の木』の面々のほのぼのした日常を不定期、基本読切短編にて綴っていく予定です。といいつつ、七夕祭り編はちょっと長くなりそうですみません!
色んなクリエイターさんのコラボ作品も多数投稿されています!
皆さんも架空都市桜城市に遊びに行きませんか?
今回、作中に登場したコラボキャラクターは
クリエイター ともえさんの
万間 知恵
(作中で占い付ハーブティーの店の女性です)↓
占いの的中率が以上に高い凄腕占い師さんです!
クリエイター 織の日々是好日さんの
日々ちゃんとアヒルちゃん↓
愛らしい日々ちゃんとアヒル様の桜城cityでの日常が、ポップな4コマ漫画で楽しめます!
