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愛はどこから来るかしら2【キスの達人3】




海水浴と深海魚の夢


夏休み 海水浴に来ている拓哉と陽介。

「あれ お前らも来てたのか」
砂浜で数人の同級生と行き会う。
なぜかチョット挙動不審な陽介 
他の奴らには内緒で来てたから。

陽介 デカい浮き輪を慌てて体から外そうとするが抜けない!

何を隠そう 陽介は泳げない。
水泳の授業は足が付くプールだったからごまかせてたが。

同級生はそんな陽介にはお構いなしで女子ナンパ。
せっかく海に来たのに男子にかまってられっかよ!

優雅に泳ぐ一ノ瀬と、浮き輪でプカプカ波間を漂う俺。
誘った手前泳げないとは言えなくて結果このザマさ。
かっこわりい俺!  自嘲する。

拓哉が陽介の浮き輪につかまってきた。

「泳ぐよりこっちの方が絶対面白いですよ」
拓哉のおすすめはスノーケリングだった。

一ノ瀬のレクチャーで俺は海の中を探索する。

確かに。
きれいだな と夢中になって海の景色を堪能する俺。

髪がゆらゆら揺れる拓哉を見て 
ふと、俺は深海魚の夢を思い出した。

深海魚が一ノ瀬に変わって俺にキスしてきたあの夢。

え! 動揺してうっかり体勢を崩した。
鼻に水が入ったとたん 方向感覚が狂う。
一瞬記憶が飛んだ。

目を開けるとすぐ近くに一ノ瀬の顔があった。
深海魚の夢の続きかと思ったが 違う。

周囲が騒がしかった。
俺は溺れかけて砂浜で一ノ瀬に介抱されていたのだ。

「良かった…」
気が付いた俺の額にやつの頭が重なる。

はた目にはかなり紛らわしい構図だと思うが
やつは意に介さず 俺が無事だったことに心から安堵していた。
それ以上でもそれ以下でもない。


「すみません 僕の注意が足りませんでした」
誘った自分に責任があると思ってるんだな。 

そういう思考回路がこいつのいい所でもあり危うい所かも 
と俺は思った。

「なんでお前が謝るんだよ。お前のおかげで命拾いしたんだぜ。
泳げないのに誘ったりして 俺の方こそ …悪かった」

「でも、霧島くんと一緒に海に入れて僕は嬉しいです」
控えめな笑顔。

「…なんか、一緒に温泉入ったみてえな言い方に聞こえる」
クスッと笑う。

コイツはいつもこんな感じ。

一見ヤバそうな見た目だが 
性格はおとなしくて礼儀正しい。

言葉使いが丁寧で、感情に翻弄されない。
ココは俺とは真逆。

身体に沢山の古い切り傷の痕が付いてる。

俺は 傷の理由が気になるけど 
聞いちゃダメな気がしてずっと聞けない状態でモヤモヤしている。

今日も海水浴場で 拓哉の身体をチラ見してるやつらが居たが
本人は全く意に介さない。


イノセント


「一ノ瀬さんてさあ 肌きれいだよねー 
まつ毛長いし 女子だったら良かったのに」

唐突に陽介の妹が言った。
至近距離で拓哉の顔を観察する。

「おめーには遠慮ってもんがねえのかよ。中坊が」

「近い!離れろ 暑苦しい。しッしッ」
ぞんざいに妹を手で払う 
犬を追っ払うみたいに。

陽介の家 

リビングで夏休みの宿題をしていたところへ妹が割り込んできたのだった。

「兄ちゃんより一ノ瀬さんの方が教え方上手いよ。
わかりやすいもん」
数学のドリルを閉じて妹は満足げだ。

「ありがとうございました」
大げさに頭を下げて自分の部屋に行く。

「ちゃっかりしてるよなー」
「可愛いですね」
「え?あれが?気を使わなくていいぞ」
「いつも一緒にいるから分からなくなっちゃうんですね」
「…」

「俺 お前といつも一緒にいるけど わかるよ」
「なにが?」

「あ、いやなんでもねえ」
また変なことを言いそうになって気が付く。

「ゲームやってく?」 「イイですね」

二階の陽介の部屋に行く二人 妹は入れ違いに出かけて行った。

「別々の部屋なんですね」
「うん 最初は一緒だったけど俺が中学の時に分けたんだ」
 
陽介の部屋 
PCゲームをしながらチョット違う広告が気になる拓哉。

「へー 一ノ瀬でもこういうの気になるんだ」
「…」少し顔が赤い。

気にしてるのはアダルトサイト。

男子としてはごく普通のことではあるが 
普段の超然としたイメージからは想像できない反応だった。

「見る?」 「…」

恥ずかしそうに俯く拓哉をうっかり抱きしめたくなる陽介。

「お前 見たことないのか こういうの」
「ない です」

無垢な存在にチョット揺さぶりをかけてみたい 
俺の方が知ってる!的な気分でマウントかましたくなった俺。

ドヤ顔でアダルト動画を開く。

「えー…」一ノ瀬の表情が変わる。
食い入るようにその画面を見つめる。

俺は一ノ瀬の横顔を注視する。

俺にとっての関心事は画面に繰り広げられる内容ではなく
それを見るやつの反応だった。

普段は見せない 変化に富んだ表情が興味深かった。

なんだコイツも俺と同じじゃん。 
親近感。 
嬉しくなった。

ちょっといたずらしたくなって一ノ瀬の肩を抱いた。

「試してみる?同じこと」
「え?」
「どんな感じか興味ねえか」

「それは…でも」
顔を赤らめて目を伏せる。
「恥ずかしい…」
乙女かよ!

「ん…でも、じゃあちょっとだけ。  抱き合うくらいなら」
少しだけ好奇心に満ちた瞳で俺を見た。

俺はワクワクが止まらない。

服を脱いで抱き合った。

やつの鼓動が直接伝わってくる。
ああ幸せ♥

「あれ?」
「?」
「この前のレスリングとあんまり変わらないですね」
可笑しそうに笑う一ノ瀬。

俺を床に転がして独り勝ちしたことを思い出したようだ。
これだよ、この桁違いの天然っぷり(泣)
 

母の努力は水の泡?


 
「ちげえよ」
気を取り直して俺はやつの首筋に触れた。

「やめて!くすぐったいです」
身をよじって笑う。

あれ なんか調子狂うな。
身体を離した。

胸の傷。
俺の手が止まった。

沈黙。

「なあ…この傷 いったい誰に…?」
言った直後に後悔。

やつの表情が曇った。

やっぱり聞かれたくない事だったんだ。
「あ、悪い 今のなし! 忘れてくれ」 
「いえ…」

一ノ瀬が何か言いかけた時 ドアの向こうで声がした。

「陽介? 一ノ瀬くん来てるんでしょ?アイス買ってきたから下で一緒に」
言いながら盛大にオープンザドア!

気遣いゼロのうちの母ちゃんが目をむいたまま石像になった。

ベッドで裸の息子が男と向き合ってるシーンなんて
多分 メデューサの目を見た衝撃に等しい。

一ノ瀬が反射的にペコリと頭を下げた。

ふいに石像が動いた。

砕けるかと思ったが意外に冷静に
「ごゆっくり」とだけ言ってドアを閉めた。

俺はその時 エロ動画を流しっぱなしだったことに気づいた。

 
リビングで テーブルをはさんで向き合っている母親と 陽介、拓哉。

気まずい沈黙が続く。

「私の育て方が間違ってたのね」
絞り出すように母親が言う。

「母ちゃん 違うって 暑いから服脱いでただけで」
ごまかそうとする陽介。

「嘘つかないで!」
母親 涙目。

拓哉はたまらず正直に言う。
「二人でアダルト動画を見てました」

母親と陽介の視線。

「段々変な気分になって ちょっと試してみたくなって」

「僕が誘いました。すみません」
頭を下げる。

「おい!違うだろ それ」
言いかけた陽介の言葉を遮るように
「帰ります お邪魔しました」
拓哉は部屋を出た。

追いかけようとする陽介を止める母親。

「もう!あんたって子は! 
きょうだいでも男女だからって せっかく 部屋まで分けたのに
あんたが男に興味があったなんて!

これじゃなんの為にやったんだかわかんないわよ!」
泣き崩れる。

陽介 言葉がない。

「兄ちゃん 大丈夫?」
リビングの入り口に妹が立っていた。

「お前 いつからそこに?」

「一ノ瀬さんと外ですれ違った後から」

「あのひとすごい辛そうだったよ?ケンカしたの?」

「アイツは自分を悪者にして家族と俺の関係を守ろうとしただけ」

「誘ったのは俺の方だから」 
母の泣き声 パワーアップ。

陽介はごまかそうとした自分を心から恥じた。
 

小さな変化


お通夜のような霧島家の夕食風景。
皆が沈黙。

テレビのお笑い番組に、妹が無理に笑って見せた。
父親が合わせるように少しだけ笑う。

再び沈黙。

「ごちそうさま」

陽介は自分の食器を流しに運んで自室に引き上げた。
それを心配そうに見送る妹。

「そういえば…あの子 変わったわ」

母親の言葉に妹と父親の視線が集まる。

「前は 食べたら食べっぱなしで 
自分から食器を下げる事なんてなかった」

「あー そういえばそう」

「洗濯物も 時々たたんでくれたり
なんていうか 優しくなった」

「…一ノ瀬くんちに行ってから 少し雰囲気が変わったみたい」

「じゃあ その時なんかあったってこと?」
妹の鋭い突っ込み。

「やっぱり…」  母親は再び涙目。

「あ、おい 明日香 余計な事言うもんじゃない」

母親 静かに泣き出す。

うろたえる父親。

妻を何とか落ち着かせようと必死。

「かあさん大丈夫だよ。勘違いだよ。
あの年頃にはよくあることさ。

ましてや男ばっかりの環境だと その 代替医療 じゃなくて」

「好奇心から気心の知れた相手とじゃれあうとか、
それに妊娠のリスクもないし」

「に、妊娠!?」 母親はパニック。

「うそ! 男同士で妊娠?」 明日香が目をむく。

不毛な会話。  
着地点が見えない。

「…てか どっちが女子役なのかな」

「こらぁ!何言いだすんだ!」
「ひいいい」テーブルに突っ伏す母親。
 
「あ、ごめんなさい」両手で口を押える明日香。

支離滅裂。カオス状態。
 

その方向で合ってる?


部屋でスマホを開いている陽介。

拓哉に謝罪のメールを打っては消し を繰り返す。
出るのはため息ばかり。

「馬鹿だよなあ 俺」

ドアがノックされた。
父親。
「入るよ」

居ずまいを正す陽介。

「まあ お前もそういう年頃ってことだよな。
うん 女の子と付き合う前に知っておきたいとか思うの 分かるよ。
確かに男はつらいよな」

一人勝手に納得している父親。 
陽介は黙って父を見ている。

「で、お前 誰か好きな子がいるのか?」
「…別に」

「人生は長い これからどんな出会いがあるかわからん。
自分を決めつけない方が良いぞ。

若いうちは選択肢をたくさん持っていた方が良いからな」

「あー、ありがとう父さん」
理解されてる感 ちょっと嬉しい。

「お前が良い方に変化してるなら 
その方向で間違ってないってことだよ」

「うん」 
?良く なっている かなあ 俺。

今日だって…あんなことして結局 一ノ瀬を傷つけた。

リビングに行くと母親が台所で食器を洗っていた。

陽介は黙って横に立ち 洗った食器を拭く。
二人とも黙ったまま。

「さっきは ごめんね。」
「母ちゃんが悪いんじゃないよ」

「一ノ瀬くんにもあんな事言わせちゃうなんて」 
「それは俺がごまかそうとしたから」

「…あの子 あんたを庇ったのよね」
母親は少し笑顔になった。
 
 
あれ以来 俺は一ノ瀬とは会っていない。
メールも送らないし来ることもなかった。

気まずい二人


 
二学期が始まった。

席替えで 俺と一ノ瀬はずいぶんと離れてしまった。
視線が届かないほどの距離。

まるで二人の関係を暗示しているかのよう。

陽介と離ればなれの席に座っている拓哉を見るクラスメイトがいた。 

樋口修。

自分の唇に手を当てて呟く。
「やられっぱなしだと思うなよ」 
攻撃的な視線を向ける。
 
拓哉と目が合う陽介 反射的にそらしてしまう。

どんな顔していいかわからない。 自分が情けなくて。

お前には俺はどんなふうに見えてる?
 
噓をついてその場を逃れようとした俺と
正直に言って俺を庇ったお前。
 
嫌われたよな 軽蔑されたかも。

自嘲しつつも目は自然と拓哉に行ってしまう陽介。
でも目が合うと つい 逸らす。

拓哉の表情は硬いままだ。

「霧島よぉ 一ノ瀬となんかあった? やけによそよそしいじゃんお前ら」
放課後 部活に向かう廊下で数人の同級生に言われる。

「夏休みに ひと夏の経験? 
で気まずくなったとか?」 笑い  
「ありえねー!男だし」
「ないない」
「だよな」

「…」
「え そこ黙るとこ?」

ふと視線を動かすと
陽介の視線の先に 3人のクラスメイトに囲まれている拓哉がいた。

なにやら話しかけて 連れだってどこかに行く様子。

「あいつ…」 一人のクラスメイトに陽介の顔色が変わる。

「霧島 どこ行くんだ 部活は?」
「休む 急用思い出した!」  走る。

「廊下は静かに」
背後で同級生がやれやれといった感じで言った。

あいつ 樋口修!
やっぱりまだあの事根に持ってる? いやな予感。
見失った どこ行った? 

卑怯者のリベンジ


「話ってなんですか?」

拓哉の問いには答えず樋口は準備室の戸を後ろ手に閉めた。
「話なんかねえよ バーカ!」

一緒に来たクラスメイト二人はなんとなく居心地が悪そうだが
樋口はお構いなしに拓哉に迫る。

「お前 この前はよくも恥かかせてくれたなあ」

「この前?いつのことですか?」

「しらばくれる気か。お前が俺にキ…」
そこは言いたくない。
「人前で あんなことしやがって!」

唇から出血し、無様にしりもちをついた自分のみっともなさ。

痛みと羞恥が蘇り怒りが止まらない樋口。

「原因は樋口くんでしょう」
無表情に答える拓哉。

「それと」
二人のクラスメイトに視線を向ける。

「この二人は関係ありませんが」
「うるせえ!」

「その生意気な口 今度は俺が噛んでやるよ」

「…それで気が済むならどうぞ」 
淡々と返され少し怯む樋口。

「いい度胸だ」 
顔を近づけるがギリギリで止める。
離れた。

「お前さあ 肌 きれいだよな男のくせに 
首も細くて
その目も、気持ち悪いんだよ」
今度は言葉で侮辱し始めた。

拓哉は無反応。 
樋口は面白くない。

「あのさあ 前から気になってたんだけど」

言いながら拓哉のシャツのボタンを外す。
拓哉は人形のように動かない。

二人のクラスメイト 目が泳ぎだす。

「この傷 実は やばいプレイでもしてたんじゃねえのか?」
「…」
「理由を教えろよ。そしたらチャラにしてやるよ」

「悪い! 俺 塾に遅れるから帰るわ」
「おれも!」

突然二人はリタイヤ。
逃げるように部屋を出ていった。

「なんだよ腰抜け!裏切るのかよ」

ふっと笑う拓哉。

「もういいですか? 僕も帰りたいんで」
「待てよ まだ終わっちゃいないだろ」

立ち去ろうとした拓哉の肩を樋口が後ろから掴んだ。

その瞬間

突然乱暴に部屋の戸が開けられた。

陽介が息を切らして立っている。

出ていったクラスメイトを見かけて来たもよう。

拓哉のシャツの胸がはだけているのを見て頭に血が上る。
「てめえ 何してんだよ!」

樋口につかみかかる。
胸ぐらをつかんで引き上げた。

陽介の剣幕に怯える樋口。

「ダメ! 殴らないで!」 拓哉が叫んだ。

「こんなやつ 殴る価値もない 霧島くんの手が汚れるだけです」

ハッとして手を緩める。

そのすきに樋口はあたふたと逃げていった。

「お、覚えてろよ」 
震える声で、ベタな捨て台詞を残して。

告白


準備室に残された二人。

拓哉のシャツのボタンを留める陽介。

「またお前に助けられたな」

「あのまま樋口を殴ってたら 俺 歯止めがきかなかったかも」
陽介を見つめる拓哉。

「お前ってさ いつも俺の頭を冷やしてくれるよな。
踏み外さないように」
拓哉の目を見ていった。

「ありがとな 止めてくれて」

硬い表情だった拓哉 瞳が少し緩んだ。

「…ずっと 嫌われたと思ってました 
僕が余計な事 言ったせいで 

霧島くんに迷惑かけましたよね。
お母さんにも…」

「あ、そこは大丈夫だから 気にすんな」
「え?ホントに?」

「うん 全然 心配いらねえ」 笑顔

「良かった」 安堵の表情。

「優しいですね 霧島くん」

「…僕の 身体の傷」
「え」
「みんな気にしてますよね」

「樋口に何か言われたのか」 また熱くなる。

「この傷は 
子供の僕が 痛みに耐えた証」
「…」

「僕を強くするために和樹さんがつけてくれたものです」

「な?…」
「だから僕はこの傷を恥ずかしいと思っていません」

「カズキさんて」

「僕の父です」 

俺は 息をのむ。 

てことは 実の父親に?  
母親を亡くした上に そんなこと?

そんな強くなり方があるかよ! 
 
だけど

父親を悪者にしたら自分も壊れてしまう 
だからそう信じるしかなかったんだ。

苦しかったよな。

俺はこの 天然宇宙人の壮絶な幼少期を知って
やつの健気さに泣きそうになる。

一ノ瀬はまっすぐ俺を見た。

「このことは 霧島くんにだけは知っててほしくて」

感動のあまり俺は一ノ瀬をギュッと抱きしめた。
涙で視界がぼやける。
 
「お前 すげえよ。

俺が 能天気に親に駄々こねてたおんなじ時間に 
お前は そうやって 一人で必死に生き抜いてきたんだな

ほんっと偉いな 尊敬するよ」
 
一ノ瀬は驚いたように固まり
しばらくされるがままになっていたが
やがてその手をおずおずと俺の背中に回してきた。

最初は力が入ってなかったやつの手が 
俺の背中をしっかりつかんだ。

「霧島くん」  消え入りそうな声

「…ありがとう」  微かに震える。

泣いていたのかもしれない。

俺は気付かないふりをした。

君が見た夢


陽介と拓哉の間に流れる空気感が少しだけ変わった。

そのせいなのか
あれ以来 樋口はすっかりおとなしくなった。

拓哉と目が合うと気まずそうに逸らす。

陽介とは目線が合わないように全力で避けている。

昼休み
拓哉がクラスメイトと談笑している。

海水浴場で行き会った連中。

「一ノ瀬ってさ 女子に興味ねえの?」
「え」
「水着の女子には目もくれず 陽介とべったりだったじゃん」

拓哉は 泳げない友達を放っておけますか と心で思った

「二人きりで どっかに消えたかと思ったら…砂浜で救命救急してるし」
可笑しそうに笑う。

「お前そんなことできたんだな 意外」
ちょっと尊敬のまなざし。

「何の話だよ」
当然のように陽介が割って入る。

「お前ら ほんと仲いいよな」 
「べ 別に 普通だし」 とっさに否定する陽介。
「大切な友達です」 拓哉の言葉が被る。
陽介 拓哉を見る。

「あはは やっぱりね おまえらお似合いの夫婦だよ」
どっと笑いが起こった。

「なんなんだよ」 戸惑う陽介。
拓哉はキョトンとしている。

クラスメイト達が去ったあと 
海水浴場の話から また 深海魚の夢を思い出した陽介。

「俺 変なのかな? 前に一ノ瀬の夢を見たよ」
「へー どんな?」

「お前が…」  詳しくは言えない。
「深海魚になった夢」

「なんですかそれ」  笑う拓哉。

「あー そういえば僕も」

「霧島くんの夢を見ましたよ」  
「えっ?どんな」 

「うーん コレ言ってもいいのかな」 ちょっと悩む風情。

気になる陽介
「なになに?」 勝手に何かを期待する。

「霧島くんがね」
「うん」
「…」

「犬になった夢!」 「へ?」

「あ、でもね 見た目は犬だけど 
ちゃんと霧島くんでしたよ その時は」

「日本語話せる犬でした」
「はあ」

「でも次の日 言葉が話せなくなって」 
「…」

「わんわんしか言えなくなって 
でもまだ僕の言うことはわかったんです」
「なんか シュールだな」

「で、最後は ほんとうにただの犬になってしまって」

「僕がどんなに呼んでも全然聞かなくて どこかに行っちゃったんです」
「…」

「悲しかったです」

「目が覚めてもしばらく凹んでいました
なんでこんな夢を見るんだろうって」

視線を落とした一ノ瀬を見て
俺はまた抱きしめたくなった。

両肩をガシッと掴んで
「…俺 犬になっても絶対お前のこと忘れたりしねえよ!」

真顔で言い切った。


文化祭


展示コーナーに写真コンテストの受賞作品が飾られている。
それらを見ている陽介と拓哉。

「そういえば これって 
ずっと前に霧島くんが出すつもりでやめたやつですよね。」

「あー はは…」
ふと 視線の先に人だかりができている。

なんだなんだ? 
人をかき分けてそこに近づく陽介を見て
なぜか皆がニヤニヤ。
 
「は?なにこれ」

後から追いついた拓哉
「あ…」

固まる二人。

「おい!誰だよこんなもん撮ったのは!」
真っ赤になって騒ぐ陽介。

「いやあ 助かって良かったじゃん 
陽介 一ノ瀬に超絶感謝しろよ」

ぎゃはは と誰かが笑った。

『特別賞』の文字が掛かったその作品は

救命救急で息を吹き返した陽介と 
それを安堵の笑みで見つめる拓哉のツーショット。

【友達以上 恋人未満】

泣けてくるようなタイトルだった。

To be continued


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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