第92話:ウメばあちゃんの『新作日本昔ばなし』!『心の牢屋の鍵』
語りかけ
「リクちゃん、自分のこと、許せなかったことってあるかい?」
ウメばあちゃんもね、昔、よう泣いたもんじゃ。
でものう、自分をゆるすって、ほんとにたいせつなことなんよ。
むかし話
むかーしむかしのことじゃった…
町のはずれに「ユルくん」という少年がおった。
明るくて友だちも多かったが、
ある日、ひとつの失敗で落ちこんでしもうてな。
「ぼくなんか、いなくなればよかった」
そうつぶやいて、心の奥に鍵をかけたように、
誰とも話さんようになった。
そんな夜の夢に、不思議なおじいさんが現れて言うた。
「自分でつけた鍵は、自分にしか開けられん。
“ごめんね”と“ありがとう”が、あんたの鍵じゃ」
翌朝、ユルくんは小さく震えながらも、友だちのもとへ行った。
「ごめんね。ぼく、こわくてにげたんだ」
「でも…ありがとう。待っててくれて」
そのとき、胸のなかで“カチャ”っと音がして、
心の中の重たい扉が、すーっと開いた。
ユルくんの目から、涙がぽろりとこぼれて、
それがまた、あったかかったそうな。
子供たちへ
ほらね、リクちゃん、自分をゆるすちゅうのはな、
だれかに言ってもらうんやなかとよ。
自分の口で、自分に鍵を渡すことなんじゃ。
「うん…ぼくも、ひとつ鍵を見つけたかも」ってリクちゃんが笑った。
そいぎ、今日はこのへんにしとこうかね。
(終)
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