第75話:昭和の暮らしを支えた 名もなき仕事図鑑『公衆浴場の番台係──木札の音と湯気の中で、人を見守る仕事』
昔は、どこに どんなふうに おられたんですか?
銭湯の入り口をくぐると、ちょこんと高いところに座っとる番台さんがおったやろ。
あれが町の“見守り役”やったんよ。
女湯と男湯の真ん中、木の札をカチャッと鳴らして「いらっしゃい」。
子どもが小銭を出すと、「はい、三十円ね」って笑いながら受け取ってくれた。
どんなことをしてはったんですか?
仕事はお金の受け渡しだけやないんよ。
お客さんの靴や忘れ物の管理、湯加減の見回り、時にはケンカの仲裁まで。
常連の名前も顔も、みんな覚えとる。
「あんた今日は早いね」「あら、お孫さん来とるの?」
そんな会話が、湯気の向こうでぽつりぽつりと交わされとった。
どんな人たちが その仕事を?
多くは女将さんやね。
旦那さんが釜焚きをして、奥さんが番台を守る。
中には、戦争で家族を亡くした人が一人で切り盛りしとる場合もあった。
けど、どの人も芯が強くて、笑顔がやさしい。
町の子どもらにとっては、“お風呂のお母さん”みたいな存在やったんよ。
その仕事、どうして 見かけんようになったんですか?
マンションに風呂がつくようになって、銭湯が減ったんやね。
番台も、機械の券売機に取って代わられた。
けど、あの木札の「カチャッ」という音や、
湯気の中で笑う番台さんの顔は、今でも心のアルバムに残っとるわ。
最後にひと言、もらえますか?
人のぬくもりって、湯よりも深いもんやね。
番台さんは、それを守っとったんやと思う。
お金のやりとりより、「おかえり」の一言が、何よりのサービスやった。
🌸ここまで読んでくださってありがとうございます。
もし懐かしいなぁ、と思っていただけたら、
フォローやスキで応援してもらえると嬉しいです😊
いいなと思ったら応援しよう!
🌿チップでの応援、ほんの少しでも嬉しいです。いただいたご支援は、新しい記事づくりの糧にします。