第13話:ウメばあちゃんの『新作日本昔ばなし』!『月を売った男』
語りかけ
リクちゃん、最近、なんでも「いくらするか」で物ごとを決める人が多かろ?
でもね、ばあちゃんは思うとよ。ほんとうに大切なもんは、お金で測れんと。
今日はね、「月を売った男」の話ば聞かせちゃるけん。変わっとる話やけど、よ〜く聞いてごらん。
むかし話
むかーしむかしのことじゃった…。
ある村に、ちぃと変わった男が住んどった。名を「ソラジロー」と言うてな、空ば見上げてはブツブツ呟いとったと。
ある晩、村の広場で月を見ながら、こう言うたんじゃ。
「この月の光ば、瓶に詰めて売ったら、きっと人の心がホッとするばい」って。
周りのもんは大笑い!
「月ば売る? こいつは頭がおかしかとちゃうか?」
「そんなもん、買うバカもおらんばい!」
でもな、ソラジローは気にせんと、小さな瓶に月の光が差し込む時間を見計らって、一本一本、大事に詰めはじめたんじゃ。
「はい、これは“月のやすらぎ”。今夜の静けさを、詰めてみました」
「こっちは“忘れんぼうの月”。昔好きやった人を思い出す光じゃけん」
最初は誰も買わんかった。
けどな、ある夜、泣きながら広場に来た若者がおってな。ソラジローはそっと瓶を手渡した。
「言葉がいらん夜も、あるけんね。」
若者はその瓶を抱えて帰った。次の日から、顔つきが少し優しゅうなっとったと。
それからじゃ。
「この瓶、ほしか!」「あたしにも月の思い出ば分けてくれん?」と、村の人が一人、また一人と訪れるようになったんじゃ。
ソラジローはお金を取らんやった。「代わりに、あんたの心に残っとるいちばん大事な思い出、ひとつだけ教えてくれ」と言うだけじゃった。
— あ、リクちゃん、ばあちゃん、涙出てきたばい。いかんいかん、話ば続けるね。
そのうち、村全体が少しずつ変わっていった。
人と人が思い出を語り合うようになり、忘れとった“心の豊かさ”が戻ってきたんじゃ。
物の値段でしか価値を測れん時代に、ソラジローは“心の値打ち”を売っていたんかもしれんねぇ。
子供たちへ
ほらね、リクちゃん、「ほんとうの価値ちゅうのはな、お金やモノじゃなくて、人の心ん中にあるとよ。」
月の光は、誰のものでもなか。けど、それば「誰かのために」そっと渡すことで、心ば照らす力になるんじゃね。
そいぎ、今日はこのへんにしとこうかね。
(終)
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