カード決済会社視点での「2025年表現規制」考察
2025年「表現の自由」阻害事件の構造とVisaの立場からの考察
2025年に発生した、Steamやitch.ioへの決済圧力を巡る一連の「表現の自由阻害事件」は、単なるエロコンテンツの問題ではない。特に、2020年に発覚したPornhubの未成年被害動画問題を発端として、VisaやMastercardがどのように自社のリスクを最小化しようとしたかを理解することが、この問題の構造を正確に把握する鍵である。
1. 事件の発端:2020年のPornhub事件
カナダを拠点とするPornhubを運営するMindGeek社は、ユーザー投稿型の動画の中に、未成年や同意なき撮影による深刻な人権侵害が含まれていたことで世界的非難を浴びた。
VisaとMastercardは広告決済や有料会員決済に関与していたとして、結果的に民事訴訟に巻き込まれた。2022年には「Visaが共犯的関与をした可能性を否定できない」という司法判断が下され、企業ブランドとしての信用が大きく揺らいだ。
筆者注:当初Visaはアダルトコンテンツに寛容だった、ただ単にpornhubでの決済許可を行なっただけである。しかし巻き添えを喰らって訴訟騒ぎの被告に名前を連ねる事になってしまった。「Visaもまた被害者」なのである。
2. Visaの立場:単なる支払い仲介ではいられない
この事件以降、Visaは「コンテンツへの関与がない」では済まされない段階に突入した。仮に今後も類似の事件に巻き込まれた場合、
投資家離れ
CSR批判
政治的制裁
といった三重苦に直面するリスクが現実味を帯びていた。
そのため、最も確実なリスクマネジメント手法として「潜在的に危険とみなされる表現への決済制限」を段階的に導入していったのである。
筆者注:pornhub訴訟に巻き込まれたVisaは、リスクヘッジのために段階的に検閲を開始、手始めは比較的小規模プラットフォーム(日本企業が多い)だったと思われる。Pixivの成人コンテンツ投稿規制(2022年)や「とらのあな通販」の決済遮断(2023年頃)その他DMM、FANZAへの圧力は、世論やクレームの度合いを観察する「試金石」だったと考えられる。
3. 事実上の検閲:民間企業が“表現のゲートキーパー”に
VisaやMastercardは国家ではない。よって表現そのものを取り締まる権限はない。しかし、経済的インフラを支配しているがゆえに、「金が流れない=流通しない=見られない」という構造を作ることが可能である。
これは国家による法的な検閲ではなく、「民間による検閲的判断」であり、かつそれが誰にも止められないところが問題の核心である。
4. エロ→暴力→風刺と規制対象は広がる
今回の焦点は「アダルトコンテンツ」だったが、これを許せば次はゴア、暴力、精神疾患、そして政治的風刺などへ規制対象は拡大する可能性が高い。
事実、YouTubeやInstagramなど主要プラットフォームでは、すでに過剰な自粛が進んでおり「誰にも不快感を与えないコンテンツ」しか生き残れない空気が醸成されている。
5. 表現の自由を唱える前に必要な問い
ここで重要なのは「表現の自由を守れ!」と叫ぶことではない。まず、**自分がVisaの経営陣だったとして、同じ判断をしなかったか?**と真剣に問う必要がある。
巨大な国際企業
数十億人が利用するインフラ
政治的・倫理的な攻撃に常にさらされる
このような立場で「反社会的と疑われうるコンテンツにも決済を許可し続ける」という判断を下せる人間が、果たしてどれだけいるだろうか?
6. 結論:「誰の自由か」を問い続けることが、自由の防衛となる
今回のような事件において重要なのは、単なる「オタクvs倫理」の構図ではなく、
「誰が判断し、誰がアクセスを制限するのか?」
という、もっと根源的な問いである。
エロにもゴアにも関心がなくても、「流通のゲートを握る民間企業による判断」が広範な文化や思想表現に影響を与えうるという現実を直視する必要がある。
表現の自由とは「自分の嫌いな表現も含めて、それが存在する自由」なのである。
