AI時代のIT職種とは?職種名がズレる理由と、増える仕事・減る仕事【2026年8月版】
本日は、AI時代のキャリア・職種のシリーズ第1回です。

転職サイトを開いて、こんな場面に心当たりはないでしょうか。
ひとつめ。「AIエンジニア」「LLMエンジニア」「MLOpsエンジニア」「AI Evaluation Scientist」が同じ検索結果に並んでいて、どれが自分の延長線上にあるのか判断できない。
ふたつめ。社内で「DX人材が足りない」と言われているけれど、自分がその人材に当てはまるのか、当てはまらないのかが分からない。
みっつめ。AIで仕事がなくなるという話は何度も聞くけれど、それが自分の職種の話なのか、他人の話なのかが分からない。
この3つは、どれも同じ原因から来ています。職種の名前を、複数の主体がバラバラに決めているからです。 この記事では、その構造を整理して、自分の位置を確認する順番までを示します。
こんな人に向けて書いています
IT業界で働いていて、次のキャリアの方向を決めかねている方
事務・営業・企画などの職種で、AIの影響を具体的に知りたい方
求人票に並ぶ職種名と年収の関係を、公的なデータで確認したい方
読み終えたときに、職種名に振り回されずに、自分がどのカテゴリにいて、次にどこを見ればいいかが分かる状態を目指します。
結論を先に3行
職種の名前は、経産省・厚労省・企業の3か所で別々に決められているので、一致しません
一致するのは名前ではなく「任される仕事」の側です
職種名そのものは数年で入れ替わります。追いかける対象を間違えないでください
職種の名前は、3か所で別々に決められています
まず、名前がズレる仕組みそのものを見てください。

左が国のスキル標準です。経済産業省とIPAが定める「デジタルスキル標準」は、2026年4月16日にバージョン2.0へ改訂されました(経済産業省の公表資料、2026年4月16日)。DXを推進する人材を6つの類型に分け、その下にロールを置く構造です。今回の改訂では「データマネジメント」類型が新設され、データスチュワード・データエンジニア・データアーキテクトの3つのロールが定義されました。あわせて、全類型に共通するスキルとして「AI実装・運用」と「AIガバナンス」が加わっています。
真ん中が厚生労働省の「job tag(職業情報提供サイト)」です。こちらは500を超える職業について、仕事内容・必要なスキル・平均年収を掲載しています。AIエンジニアという職業も掲載されていて、平均年収も確認できます。ただし数値は更新されるため、引用するときは閲覧した日付とセットで扱ってください。
右が実際の求人票です。ここに並ぶのは、上の2つのどちらにも出てこない名前です。AIガバナンス推進担当、LLMエンジニア、SRE、AIエージェント開発。会社が募集枠を作るたびに名前が生まれるので、統一される理由がそもそもありません。

表の内容を文章でも置いておきます。
国のスキル標準:経産省・IPAが決定。単位は6類型17ロール。更新は数年に一度。年収は分からない。全体像をつかむのに使う
job tag:厚生労働省が運営。単位は500を超える職業。定期的に更新。平均年収が分かる。相場を確認するのに使う
求人票:採用する企業が決定。単位は会社ごとの募集枠。毎週変わる。年収レンジが書いてある。今の需要を見るのに使う
3つとも正しくて、目的が違うだけです。「どれが本当の職種名か」を探すと迷子になります。探すべきは名前ではなく、その仕事が何を任されているかです。
職種名そのものが、数年で入れ替わります
名前を追いかけるのが危ういことは、実際の数字で確認できます。

「プロンプトエンジニア」の検索関心の推移)
「プロンプトエンジニア」という言葉の検索関心を、日本国内で5年分たどったグラフです。2022年末まではほぼゼロでした。2023年に入って立ち上がり、およそ4ヶ月でピークに達します。ところがそこから約2ヶ月で3分の1まで落ち、翌年以降は横ばい。2025年の前半に一度戻したものの、その後また下げて、直近はピークの1〜2割です。
立ち上がりよりも、崩れ方のほうが速い。 これがこのグラフのいちばん重要な部分だと思います。当時は「これからはプロンプトを書く技術が職業になる」と言われていて、実際にその肩書きの求人も出ていました。3年でこうなっています。
誤解のないように書いておくと、プロンプトを扱う仕事が消えたわけではありません。その作業が、AIエンジニアや企画職の仕事の一部に吸収されただけです。消えたのは肩書きであって、仕事ではない。 今並んでいる新しい職種名にも、同じことが起きます。
だから追いかける対象は名前ではなく、その名前の下にある作業のほうになります。
2040年、事務職は437万人余ります
次に、増減のほうを見ます。経済産業省が2026年3月に公表した「2040年の就業構造推計(改訂版)」に、職種ごとの数字が出ています。

数字を文章でも置きます。
事務職:約437万人の余剰(概要文では「約440万人」と表記)
AI・ロボット等の利活用を担う人材:約339万人の不足
現場人材:約260万人の不足
就業者数そのものは、2022年の約6,706万人から2040年には約6,303万人へ減ります。ただし全体としては大きな不足は生じない、というのがこの推計の見立てです。問題は総数ではなく、職種のあいだで需要と供給がねじれることのほうにあります。
学歴別では、大卒・院卒の理系人材が約124万人の不足、文系人材が約76万人の余剰と試算されています。地域別に見ると、関東(一都三県)は約193万人の余剰、一方で北海道は約41万人、東北は約53万人の不足です。都市部に人が余り、地方で足りない、という形になっています。
もうひとつ、条件付きの試算も載っています。生成AIやロボットの進展が今より加速すると仮定した場合、事務従事者の労働需要は約1,040万人からさらに約680万人まで下がる可能性がある、という記載です。あくまで仮定を置いた場合の数字で、確定した予測ではありません。
ここで注意したいのは、これは「事務職の人が失業する」という話ではないということです。推計されているのは職種ごとの需要と供給のズレであって、個人の職が消えるかどうかではありません。ズレが起きる場所が分かれば、動く先も考えられます。
企業が困っているのは「作る人」だけではありません
需要側の話も見ておきます。IPAが2026年7月30日に公開した「DX動向2026」は、国内1,799社を対象にした調査です。
この調査では、DXを推進する人材の量について「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業の合計が85.5%でした。この水準は数年にわたってほぼ変わっていません。
もうひとつ目を引くのが、AI導入の効果です。業務効率化での効果を挙げた企業が91.6%だったのに対して、売上向上を挙げた企業は3.9%にとどまりました。多くの企業では、AIは「速くする道具」としては機能しているものの、「稼ぐ仕組み」にはまだなっていない、ということです。
この差が、そのまま求人になって出てきます。モデルを作れる人だけでなく、AIを業務に組み込んで成果まで持っていける人、そして組み込んだあとに統制できる人が足りていない。デジタルスキル標準ver.2.0で「AI実装・運用」と「AIガバナンス」がスキルとして新設されたのも、同じ方向を向いています。
この2つは、まだ体系立った教材が多い領域ではありません。書籍で追いつくには動きが速く、実務で触るには社内に事例がない、という方が多いはずです。手を動かして確かめる段階なら、単発で買える講座が現実的な入口になります。

実務ではこう考えます
求人票に知らない職種名が出てきたら、名前を調べる前に「業務要件」の欄を読みます。そこに書かれているのが実際の仕事です。名前は会社の都合で付いていますが、業務要件は嘘をつけません。
日本と海外では、エンジニアがいる場所が違います
もう1点、日本市場の特徴を押さえておきます。
IPAの調査によると、日本のIT人材のうちIT企業に所属している割合は、2020年の国勢調査ベースで73.6%でした。対して米国は2021年の調査で35.1%、残りの64.9%はIT企業以外に所属しています。同じ「エンジニア」でも、日本では受託する側に、米国では事業を持つ側にいる人が多い、という構造です。
雇用の形も違います。ジョブ型雇用の導入率を調べた民間調査(2025年12月公表)では、日本企業全体で21.8%、従業員1,000人以上の企業でも36.0%でした。職務内容を先に決めて人を採る形は、まだ多数派ではありません。
この違いが効いてくるのは、キャリアの動かし方です。職務が固定されていない環境では、職種名よりも「どの案件に入るか」で経験が決まります。逆に職務が定義されている環境では、求人票の書きぶりがそのまま評価の基準になります。どちらが良いという話ではなく、通用する動き方が違います。
ただ、自分がどちら側の環境にいるかは、社内にいるだけでは分かりません。判断材料になるのは他社の求人票で、そのうち条件面まで書かれているものの多くは、エージェント経由でしか閲覧できません。転職するかどうかとは別に、市場の側から自分の位置を確認する手段として使えます。
■ TechGo
ジュニア・ミドル・シニアに、公的な定義はありません
最後に、等級の話です。
結論から言うと、ジュニア・ミドル・シニアという区分に公的な定義はありません。会社ごとの呼び方です。ただし、近いものさしは存在します。
ひとつが「ITスキル標準(ITSS)」で、職種を11に分類したうえで、個人の能力と実績に応じた7段階のレベルを規定しています。もうひとつがデジタルスキル標準で、IPAはDX推進スキル標準について、ITSS+のレベル4(独力で遂行でき、後進の育成もできるレベル)とほぼ同等の水準を想定していると説明しています。
つまり「独力で回せて、人を育てられるか」が、ひとつの分かれ目として国の側でも言語化されている、ということです。経験年数そのものではありません。この線引きは第3回で扱います。
このシリーズの並び

このシリーズは、1職種につき1記事の形で積み上げます。すべての記事を同じ7つの項目で書きます。1日の仕事、日系と外資で何が違うか、ジュニアとシニアで何が変わるか、AIで変わった部分と変わらない部分、向いている人と向いていない人、公的データ、次に読む記事。読み比べができる形にするためです。
まとめ
職種名が覚えきれないのは、覚え方が悪いからではありません。決めている主体が3つあって、それぞれ目的が違うからです。しかも名前のほうは、プロンプトエンジニアの例のとおり数年で入れ替わります。
追いかける対象は、名前ではなく「その仕事は何を任されているか」です。事務職が437万人余ると言われるとき、余るのは「事務職という肩書き」ではなく「AIとロボットで置き換えやすい作業の量」でした。裏を返せば、置き換えにくい部分を持っている人は、肩書きが何であっても残ります。
では、その「任されている仕事」はどこに書いてあるのか。答えは求人票です。年収レンジも、求められる経験も、実はあの1枚にほぼ全部書いてあります。ただし日本語で出回っている求人票の読み方の記事は、そのほとんどが採用する側に向けて書かれたものです。応募する側からどう読むかを、次回まとめます。
この記事で扱った範囲を、もう少し体系立てて追いたい場合は書籍のほうが早いです。
『達人プログラマー』は、技術や職種名が変わっても通用する、エンジニアの仕事の進め方を学ぶための一冊です。日々の開発力を底上げしたい方は、ここから読むのがおすすめです。
『ITエンジニアの転職学』は、転職市場から自分の経験を見直し、後悔しにくいキャリアの選び方を考えるための一冊です。次にどんな経験を積むべきか迷っている方に向いています。
次に読む
求人票の読み方|応募する側から見たジョブディスクリプション(第2回)
シリーズの並び
第1回 AI時代のIT職種マップ(この記事)/第2回 求人票の読み方/第3回 ジュニア・ミドル・シニアの違い/第4回 日系SIer・事業会社・外資/第5回 AIエンジニア
参考にした一次情報
経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」2026年3月
IPA「DX動向2026」2026年7月30日公開
経済産業省・IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」2026年4月16日
IPA「ITスキル標準(ITSS)キャリアフレームワーク」
厚生労働省「job tag(職業情報提供サイト)」
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