目的語を直接配置できるかどうかで動詞を分類するのは英語だけ?
8つの言語(ゲルマン諸語、ロマンス諸語、スラヴ諸語)における「自動詞・他動詞」の分類と特徴について解説します。
基本的にはどの言語も「目的語(特に対格)を直接取るかどうか」で分類しますが、言語によって名詞の「格変化」や「前置詞の有無」が色濃く反映されます。
ゲルマン諸語
ドイツ語
分類と特徴: 他動詞(transitives Verb)と自動詞(intransitives Verb)に分類されます。
判定基準: 前置詞なしで「対格(4格:〜を)」の目的語を直接取れるかどうかが厳密な基準です。日本語や英語の感覚で「〜を」と訳せる動作であっても、動詞が「与格(3格:〜に)」を要求する場合は文法上「自動詞」として扱われます。
オランダ語
分類と特徴: 他動詞(transitief werkwoord)と自動詞(intransitief werkwoord)に分類されます。
判定基準: 現代オランダ語はドイツ語のような名詞の格変化がほぼ消失しているため、英語と同様な分類です。動詞の直後に前置詞なしで直接目的語を置けるものが他動詞となります。
ロマンス諸語
フランス語
分類と特徴: 他動詞(verbe transitif)と自動詞(verbe intransitif)に分類されますが、他動詞がさらに2つに細分化されます。
判定基準: 前置詞なしで目的語を直接取るものを「直接他動詞」、前置詞(主に à や de)を介して目的語を取るものを「間接他動詞」と呼びます。英語の「動詞+前置詞」のパターン(look at など)に近いものを、フランス語では「間接他動詞」という独立した他動詞のカテゴリーとして扱います。
イタリア語
分類と特徴: 他動詞(verbo transitivo)と自動詞(verbo intransitivo)に分類されます。
判定基準: フランス語と同様に格変化が消失しているため、前置詞を介さずに直接目的語(補語)を結合できるかが基準です。過去形(近過去)を作る際、他動詞は助動詞に avere(have相当)を使い、多くの自動詞は essere(be相当)を使うため、この区別が極めて重要になります。
ラテンアメリカ標準スペイン語
分類と特徴: 他動詞(verbo transitivo)と自動詞(verbo intransitivo)に分類されます。
判定基準: 基本は前置詞なしで直接目的語を取るものが他動詞ですが、スペイン語特有のルールとして「特定の人間・ペットなどが直接目的語になるときは、直前に前置詞 a を置く」という性質(おなじみの「人の a」)があります。これは前置詞を伴いますが、文法上は「直接目的語」であり、動詞も「他動詞」として扱われます。
ブラジルポルトガル語
分類と特徴: 他動詞(verbo transitivo)と自動詞(verbo intransitivo)に分類され、他動詞はさらに「直接他動詞」「間接他動詞」「直接間接他動詞(二重他動詞)」に分かれます。
判定基準: フランス語とよく似ており、前置詞なしで目的語を直接取るものが直接他動詞です。なお、口語(ブラジルポルトガル語の日常会話)では、本来は前置詞が必要な間接他動詞であっても、前置詞を省略して直接目的語のように名詞を繋げてしまう独自の簡略化傾向が見られます。
スラヴ諸語
ロシア語
分類と特徴: 他動詞(переходный глагол)と自動詞(непереходный глагол)に分類されます。
判定基準: 前置詞を伴わずに「対格(〜を)」の目的語を直接取れるかどうかが絶対的な基準です(否定文の際には対格の代わりに生格を取ることもあります)。また、動詞の後ろに接尾辞 -ся(再帰代名詞由来)がついた動詞は、構造的に他動詞としての能力を失うため、すべて「自動詞」になるという明確な形の特徴もあります。
ポーランド語
分類と特徴: 他動詞(czasownik przechodni)と自動詞(czasownik nieprzechodni)に分類されます。
判定基準: ロシア語と同様に、前置詞なしで「対格」の目的語を直接支配できるかが基準です。ただし、ポーランド語はロシア語以上に「動詞の否定文では、直接目的語が対格から生格に変化する」というルールが厳格に適用されるため、他動詞が従える格の形が文脈(肯定か否定か)によって変化する特徴があります。
どの言語においても、名詞の「格」がはっきり残っている言語(ドイツ語、ロシア語、ポーランド語)では「対格を直接取れるか」が基準になり、格が消失した言語(オランダ語、ロマンス諸語)では「前置詞なしで直接置けるか」が基準になっているます。
