#379[二次創作]魔女のはちみつレモンティー[物語]
時計の針がひとつ進んだ。晴れ渡る早朝の窓辺、朝の魔女の店に、すっとんきょうな声がひびき渡る。
(2部構成、1100 + 690字, 読了まで 約 4分)
「すっぱああああい!」
カウンター越しにユイが声を上げると、アカリは一瞬、ハッとして、目が覚めた。
「え、ユイちゃん、どうかしたの?」
エプロン姿で厨房から振り返ったアカリは、おどろいた顔で、ユイを見つめる。
「ア、アカリ……。だから、このハーブティー、すっぱいって!」
ユイはちょっぴりふくれっ面で、プチ・抗議をすると、怪訝そうな顔でカップをもう一度顔に近づけた。
「……そうかなあ、すっごい美味しいと思うけど。」
なぜ? という顔で、落ち着いてユイを見ると、
「なんせ、当店オリジナルのハーブティーですから」
アカリはちょっと得意気に、でも穏やかな顔で、ユイにそう言った。いわゆる、ドヤ顔というヤツだ。
ユイは少し困ったように続けた。
「アカリ。あんた、どーゆー舌をしてんのよ?」
言うやいなや、目線をソーサーの先の、キャンディのボトルに向ける。甘いもので口直しがしたい、とでも言うように。
アカリは自分にも同じものをポットから注ぎ、
「でも、香りはいいでしょ?」
いつもの味を確かめるように、カップに口をつけた。
ま、まあ、香りはいいけど──
ユイはもう一度、少しだけでも飲んでみようと、カップにかけた指をトン、トン、と弄ぶ。
「ね、このあんまり甘くないのが、いいんだから」
アカリは更に得意顔で続けた。
「っていうか、すっぱいんだって……。」
と、ユイは困ったように、苦笑いで肩をすくめた。
──あれ?
ユイはおもむろに、窓の外を見て、驚いてみせた。
「アカリ、出たよ!」
「?」
アカリはきょとんとしながら窓の方へ、目線を遣る。
「ほら、あの虹!」
ユイは窓の外、眼下の港の方に向けて指をさす。
アカリが窓の外を見ると、港の空に大きな虹がかかっていた。
「わあ、すごい!」
アカリは思わず驚いて厨房から出ると、2人は並んで外を見始めた。
「今年に入って、もう3度目だよ!」とアカリが言う。
そして、あることを思い出し、はっとした。
「あれは、きっと、魔女が創った虹だよ」
──え、魔女?
突然、魔女という言葉を聞いて、ユイはアカリを振り返った。
「うん、ほら……」
アカリは奥の本棚から<魔女の奇跡>とタイトルされた本を取り出してくると、ぺらぺらとページをめくって、ユイに見せる。
魔女が創りだしたとされる、さまざまな奇跡が、ズラリと、ページのなかに描かれていた。
「この本、今の子供たちにも人気らしいよ」
アカリがユイに本を手渡すと、食い気味にページをめくり始める。
「へえ、そんな話が……」
ユイは本を受け取り、目を白黒させながら、タイトルと中を交互に見つめている。
アカリは窓の外の虹に目を戻し、小さくつぶやいた。
「この物語を信じる誰かが、またどこかで生まれているのかな」
◇
──おかあさん、ハーブティーってなぁに?
本を読んでいた彩香が、ダイニングテーブル越しに、急に話しかけてきた。
美咲は、娘の口から唐突に聞き慣れない言葉が飛び出して、きょとんとする。
彩香が手にしているのは、いま子どもたちに爆発的に人気の『魔女のハーブは、あんまり甘くない』という児童書だった。
学校の図書館では、争奪戦になるほど人気があり、新刊だというのに表紙が少し取れかかっていた。
美咲は洗い物の手を止め、彩香の横に腰かけると、本を眺めてハーブティーについて話し始めた。
──へぇ、彩香もハーブティーのんでみたい!
パントリーにあるのは、バタフライピーのハーブティーと、ハイビスカスのはずだった。
子どもに飲めるかしら……? 美咲は、
「それじゃ、はちみつレモンティーにしましょう」
買い置きのレモンを輪切りにし、小瓶にはちみつを入れ始めた。交互にそれぞれを重ねて、フタをしめる前にもたっぷりとはちみつをかける。
「これで、明日には、魔法のシロップのできあがり」
美咲がそう言うと、明日まで待つの?と不満げな彩香。
「今すぐ飲みたい!」
と、いうけれど……。
紅茶は彩香にはまだ苦いかな? と美咲は思った。
美咲は残ったレモンの果汁をしぼると、炭酸水を注いで、レモンソーダをふたつ作り、彩香に差し出した。
「それじゃ、魔女の気分で……」
彩香は、お気に入りのいちごのグラスを両手で持ち、そっと口をつけた。
「え、これ、あんまり甘くなーい……」
彩香はちょっぴり、がっかりしてそう言った。
──それじゃ、明日は甘めのレモンティーね。
「魔女あま」のユイが、本の中でウインクをした。
<了, 本編 約 1,800字>
【謝辞】今日の記事は、「魔女あま」のインスパイア作品です。
原作ファンの方にも楽しんでいただけたら幸いです。
イラスト集に300字程の物語をつけるつもりが、お話が大好き過ぎて、気がついたら第一話を踏襲していました。イラスト集は後日、投稿したいと思います。
AONOさん、素敵な作品をありがとうございます。
原作のご紹介
自分のペンネームと、主人公の名前が同じ作品に初めて出会った衝撃と、魔女の世界の愛らしさに、一瞬で虜になり、読み始めました。
作品: 『魔女のハーブは、あんまり甘くない』
著者: AONOさん(note クリエイター)
引用元: 魔女のハーブは、あんまり甘くない 1ー1 魔女の旅立ち(1)
第一章からオススメします、サクサク読めます😃
ハロウィン、クリスマス、新年、バレンタイン……。
これからの季節に欠かせない一編です🎄
あとがき
昨年から、イラストや文を「書く書く詐欺」になっておりました💦
昨秋に、Copilotの仕様が変わり、Image Creatorも少し画風が変わり、以前と少し画風が違いますが、プロンプトで表情や背景、小物の指示が分かるようになり、試しに製作しました。
さて、ここ数日は空気が乾燥しています。風邪予防に「はちみつレモンドリンク」を作ろうと、この企画をひらめきました。
今日から10月です。中秋の名月は6日、重陽の節句(旧暦)は29日、そして31日はハロウィンです。
季節を心待ちに、ワクワクして過ごしたいですね。
(全文 約 2,500 字)

どうぞお楽しみに🎁
それではまた、次の記事でお会いしましょう!
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