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#713_短編_みんなのラーメンサラダ_いい旅・北海道

お酢を摂れてツンと来ない、野菜たっぷりのご当地メニュー。居酒屋の定番です。


短編小説: からっぽの器

午後の熱気の立ち込める滑走路から、蜃気楼のように地平線が揺れている。到着ロビーへの廊下は、先ほどまでいた街の残り香のように高く、涼やかに、ゆったりとした風を漂わせていた。

出張の帰り道。出発前に、行かないで!と大泣きした長男の顔が、まだ胸の奥に残っていた。笑顔で出発したとはいえ、子どもたちがどんな顔で過ごしていたかと思うと、わたしは内心で自分を責めていた。

──ママー!おかえりー!
小学2年の涼真りょうまが、わたしを見るなり、弟の航大こうだいを抱く夫のそばから全力で駆け寄って、膝にしがみついた。

「涼真!来てくれたの?」わたしは涼真の頬を両手で包み、夫に目を遣る。

「こうちゃんとも遊んでくれたの?」涼真が大きく頷くと、夫も軽く頷いた。がんばってくれたんだね、さあ、おうちに帰ろう!わたしは言うと、涼真の手を引き、夫の案内で駐車場に向かった。

「ママ、おなかすいたー!」しばらく車を走らせると、涼真が言う。
夫の話ではお昼ごはんが進まなかったようだった。

「例のあれ、仕込んでおいたよ」夫がバックミラー越しに目を合わせる。

「ありがとう。それじゃ涼真、お母さん、とっておきのサラダを作ろうかな」

わたしは出張中に同僚に教えてもらった、ラーメンサラダを作ることにした。

・・・

「ふぅ……久しぶりのわが家!」
「たった2日で?」夫がからかう。
「いいの!だって涼真の顔、2日も見れなかったもんね〜」エプロンの端を握りしめる涼真の頭をくしゃくしゃに撫で、左に抱えた航大を抱き直した。

わたしは大きなお鍋にお湯をたっぷりと沸かして、小さなフライパンと白ゴマを取り出して、涼真に言った。

「お母さん、これからゴマを煎るから、すり鉢でくるくるしてね」
煎る・・って、なあに?』涼真がふしぎそうに言う。
「油を使わないで、優しく温めるの」
「ふうん……」
「どうして、フライパンをシャカシャカするの?」涼真はじっとフライパンを見ている。「目に入ると痛いよ、遠くから見てね」とわたしは言い、コゲコゲになると苦いの、と話した。

「いいにおい!」涼真は言った。
「もっといい匂いにするよ」わたしはすり鉢に煎りたての白ゴマを流し込んで、すりこぎを取り出した。

「涼真、あぐらをかいて座ってみて」涼真が座ったところに、すり鉢をだき抱えてもらった。「これから、ゴマをすりゴマにするよ」片方の手をすりこぎの上に、もう片方の手は鉛筆を持つようににぎって、すり鉢の真ん中を、くるくるとなぞってもらった。

「わあ!ほんとだ、いいにおい!!」涼真は目をまんまるにして、わたしの方をみる。まだゴマが熱いから、ゆっくりね。ゴマがプチプチと弾けては、熱を帯びた香ばしい香りが立ちこめる。

「そうそう、いいね!涼真はゴマの達人だね」涼真は夢中になって、すりこぎを回した。さあ、残りはあっちでお父さんと、こうちゃんと一緒にね。

言うや否や、涼真は立ち上がった瞬間、ゴマの半分をこぼしてしまった。泣きそうな顔でこちらを見る。やれやれ、と涼真と苦笑いして、わたしはもう一度ゴマ煎り、ラーメンの麺を茹で始めた。

・・・

擦ったゴマを冷まして、夫が冷やしておいてくれたタレに入れた。泡立て器でかき混ぜると、ゴマ油の香りがふわりと上がって来る。

「じゃあ涼真、野菜をお皿に置くの、やってくれる?」
涼真は待ってました、とばかりにお皿と、切った野菜を冷蔵庫から出して「ボクもやったんだよ!」と、レタスの入った大きな袋を得意げに見せてきた。

「さすが、涼ちゃん!それじゃ、お母さんが先にお手本ね」
涼真の背が少し伸びたような、わたしは少しだけ胸がきゅっとした。

「最初にレタス、次にきゅうりだよ。それから麺を乗せて、あとは……今日はトマトと玉ねぎ、ゆで卵ものせようね」

わたしは涼真が取り出した保存袋を並べて、お皿に野菜を盛りつけると、涼真がマネをする。わたしはその上に麺を乗せた。

「涼ちゃん、これも一緒にね」わたしは残りもののキャロットラペと、それにコーンの缶詰をあけ、ゆで卵の脇にちょこんと乗せた。涼真はにんじんをみて、ほんの少しだけイヤな顔をすると、イタズラそうに笑った。

・・・

──いただきまーす!

「ユウちゃんも、お疲れさま!」
わたしと夫はビールで乾杯をした。
テーブルには色とりどりの野菜がたっぷりと乗った、ラーメンサラダが並ぶ。

「これ、おいしいね!」
夫は野菜と麺をつまんで一気に口に放り込んだ。「濃いと思ったけど、野菜から水が出てちょうどいいね」
「うん、レシピを聞いておいてよかった。あとでお礼言おうっと」わたしがそう言って涼真を見ると、「涼真、玉ねぎ食べれたね」夫が涼真を褒める。

「うん、おいしいよ!」涼真が得意げに食べると、航大がぐずって見せた。
「こうちゃんは、おいしい?」2歳の航大の口にとうもろこしを運ぶと、甘じょっぱいタレの味が気に入ったように、モグモグと口をうごかした。

角のとれたお酢の丸みと、野菜の清涼感が疲れをするんと流していく。
何よりも、子どもたちの顔を見て、変わらずにいてくれて、それがいちばんホッとしたかもしれない。

──からっぽになった器をみて、なぜか少しだけ心が満たされていた。涼真が泣いた、二日前の胸の痛みが、そっと埋まるような気がした。

お風呂から上がると2人はすぐに眠った。額についた汗のしずくを拭うと、柔らかな前髪がしっとりと濡れ、気持ちよさそうな寝息が聞こえている。


<了, 約 2,200 字>
書き下ろし


レシピ

ここでは簡単にご紹介します。

具材……野菜(細切り、角切り)
レタス、きゅうり、もやし、トマト、ゆで卵

※ 切りもの、下茹でものは朝に済ませ、冷やしておく。
※ 野菜は3〜4種類、用意すると味わい深くお腹も満たされます。

ラーメンサラダのタレ(2〜4人分)
酢…大さじ4、醤油…大さじ3、水…大さじ3、ゴマ油…大さじ2、鶏がらスープの素(顆粒)…大さじ1、砂糖…大さじ3、マヨネーズ…適量

ツンとこない、甘じょっぱい、鶏ガラ風味のおいしいタレです。
お酢と油で、腸の動きがよくなります✨

🍳ワンポイント
中火にかけて砂糖と鶏がらスープの素を溶かします。泡立て器でよく混ぜながら、溶けたら火からおろします。沸騰しなくてOKです。
鍋(ステンレス、ホーローなど酸に強い素材で)がいいと思います。

できたタレは、一食辺り大さじ2〜3杯で調整してください。
作り置きする場合は、ゴマだけ、食べる前にいると香りがよいです。


あとがき

2024年の夏に構想のあった物語で、今回は久々に小説を書きました。毎日書いてないと、物語ではなく日記になってしまいますね。読みたい本も消化しつつ、また少しずつギアを上げて、小説を書けるようにしていきたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました🍧

みなさんもどうぞ、楽しい夏をお過ごしくださいね🍦

これは冷やし中華です
ラーメンサラダとの違いは、ほうれん草と小松菜のようなものかな?
(多分、違う笑)

AIさん、日本の古民家を描くのが少し上手になったような気がします🍉

久々に大きな記事を書きました
読んで下さってありがとうございます🍦


コングラありがとうございます🎖️

この記事だけで作り方が伝わっているといいのですが……。
ありがとうございます😊

すべて、2026.8.10 受信です
ありがとうございます🌟

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久藤 あかり | はじめまして! スキ、コメントが1番うれしいです。私の記事を元にあなたの記事を書いてもらうのも大歓迎!心が動く言葉はありましたか?ご感想お待ちしています😊