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長野の【やたら】をフレンチの目線で。さっぱりとした旨味を病気で食べたくない母に向けて。

このレシピは、病気で食べれない日が続く私の母、そして、いつも北海道から応援してくださっているS様に向けて考えました。

かなり個人的な内容で作る夏のレシピですが、ご容赦いただきますよう宜しくお願いします。

てゆうか、許してくれ。

しんどい人に対して、手間がかかった料理かもしれませんが、最後には、簡単に手を抜けるやり方も書いてます。


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このブログでは、私が料理人として普段考えていることや、レストランで使っている技術を、ご家庭でも取り入れやすい形にしてご紹介しています。

今回は少し趣向を変えて、長野県の郷土料理を作っていきます。

今回作るのは、長野県北部、北信地方を中心に昔から食べられている「やたら」です。

農林水産省より




まず最初に言っておきますが、私は長野県民ではありません。

ですので、長野県の方から見たら、

「うちのやたらはそんな作り方じゃないよ」

というご意見もあるかもしれません。

ただ、そんなことを言っていたら、自分が生まれた県以外、残り46都道府県の郷土料理について何も話せなくなってしまいますので、そこは少し許してください。

今回私がやりたいのは、昔から伝わる「やたら」という料理をそのまま再現することだけではありません。

まず、その料理がどういう環境で生まれ、どんな食材を使い、どうして夏に食べられてきたのかを理解する。

そのうえで、

「フランス料理をやってきた自分だったら、ここにどうアプローチするだろう」

という考え方を少しだけ加えてみます。

伝統料理を壊したいわけではありません。

むしろ、元の料理を理解したうえで、その良さを残しながら別の表情を作れないか。

今回は、そんな料理です。

そもそも「やたら」とは何なのか


やたらは、長野県北部の北信地方を中心に食べられてきた郷土料理です。

基本となるのは、なす、きゅうり、みょうが、青唐辛子など、その時期に採れる夏野菜と、大根の味噌漬け。

それらをとにかく細かく刻んで混ぜ合わせ、ご飯にのせて食べます。

農林水産省では「夏野菜のふりかけのようなもの」と紹介されています。地域では、ぼたんこしょうと呼ばれる青唐辛子や丸なす、大根の味噌漬けなどが使われてきました。調味料をたくさん加える料理ではなく、大根の味噌漬けが持つ塩味や旨味、青唐辛子の辛味そのものを調味料として使う、とても素朴な料理です。

名前の由来にもいくつか説があります。

「やたらと何でも入れるから」。

「やたらと細かく刻むから」。

あるいは、夏野菜と漬物を混ぜてご飯にのせたら「やたらに美味しかったから」。

こうした説が伝えられています。

そして、この料理がすごく理にかなっていると思うのが、夏に食べる料理だということです。

暑くて食欲が落ちているときでも、みょうがの香り、青唐辛子の辛味、漬物の塩味、夏野菜のみずみずしさがあることで、ご飯が食べやすくなる。

これは、やたらだけに限った話ではありません。

山形県の「だし」のように、夏野菜を細かく刻んでご飯にかけたり、宮崎県の「冷や汁」のように、冷たい汁物をご飯と一緒にさらっと食べたりと、日本全国には似た役割を持つ郷土料理がいくつも残っています。

地域も使う食材も違いますが、共通しているのは、暑い時期でも手軽に食べやすく、野菜や発酵食品、魚や出汁などから栄養を取りやすく、さっぱりしていて、それでいてちゃんと美味しいということです。

こういう料理が何世代にもわたって残っているのは、単に「昔から食べていたから」だけではないと思います。

その土地の気候や生活の中で、本当に使いやすかった。

食欲がなくても食べられた。

畑で採れた野菜を無駄なく使えた。

そして何より、美味しかった。

だからこそ、家庭の中で繰り返し作られ、結果として郷土料理として残っていったのではないかなと思います。

私は、こういう料理を見ると「昔の人は理屈を説明しなくても、ちゃんと合理的なことをしていたんだな」と感じます。

今回のやたらも、その良さを大切にしながら考えていきます。

ちなみに、やたらで使われてきた大根の味噌漬けには、長野らしい信州味噌が使われます。

信州味噌は、大豆と米こうじを使った代表的な米味噌で、淡色で辛口のものが中心です。

今回、味噌を加えるのであれば、この信州味噌のような淡色系の米味噌が一番自然だと思います。

今回は「やたら」を冷たい出汁で


本来のやたらは、細かく刻んだ夏野菜と大根の味噌漬けを混ぜて、ご飯へそのままのせる料理です。

今回は、そこから少し離れます。

私が作りたいのは、夏に食欲がないときでも、さらっとご飯と一緒に食べられるような、冷や汁と冷やし茶漬けの中間のようなやたらです。

お客様の中にも、体調の関係であまり食欲が出ない方がいらっしゃいます。

私自身も、家族を見ながら、

「夏でも何か少し食べやすいものが作れないかな」

と考えることがあります。

もちろん、これを食べれば何かが治るというような話ではありません。

ただ、暑い日に重たいものは食べたくないけれど、ご飯と野菜なら少し食べられる。

そういう一皿があってもいいと思っています。

そこで今回は、本来使われる大根の味噌漬けの代わりに、切り干し大根を使って作っていきます。



味噌漬けを一から用意するより、ご家庭では圧倒的に使いやすいからです。

今回の野菜は、できるだけ農家さんの顔が見えるものを

今回使う野菜は、すべて道の駅で購入しました。

農家さんの名前が書いてあり、誰が作ったものなのか分かる野菜です。

切り干し大根も同じです。

漂白された真っ白なものではなく、そのまま乾燥させた切り干し大根を使います。

今回使うのは、

トマト、なす、大葉、オクラ、梅干し、みょうが、きゅうり、生姜、青ねぎ、そして切り干し大根です。


本来のやたらから考えると、かなり具材は増えています。

でも「やたらと何でも入れるから、やたら」という説があるくらいですから、そこは少し甘えさせてもらおうかなと思います。

切り干し大根は、一度きちんと下処理を


まず切り干し大根です。

乾燥したものを一度水につけ、ふやかしてから軽く洗います。





切り干し大根は、とても美味しいのですが、独特の乾燥香が結構強く残っています。

それが好きな方はもちろんそのままでもいいと思います。

ただ今回は、子どもでも食べやすく、食欲が落ちているときにも食べやすいようにしたいので、その香りを少しだけ穏やかにしていきます。

まず水で戻して洗い、軽くアクを抜いておきます。

その間にトマトを湯むきします。

オクラも同じお湯で軽く茹でます。



トマトとオクラは氷水へ落とし、しっかり冷やします。

トマトは皮と種を取り除き、1cm角くらい。

オクラは食べやすい大きさの輪切りにします。
きゅうりもね。

ここは別に、何ミリでなければいけないという話ではありません。



今回いろいろな食材が入るので、一緒に口へ入ったときに食べやすい大きさで揃っていれば十分です。

そして、トマトとオクラを茹でたお湯はそのまま使います。

ここへ戻した切り干し大根を入れ、さっと茹でます。



これによって、切り干し大根に残っている独特な香りやアクをもう少し抜いてあげます。

茹で上がったら、軽く水で流しておいてください。

香り・食感・旨味を別々に考える


ここからが、今回私が少しフランス料理的に考えた部分です。

全部一緒に刻んで混ぜるのではなく、

食感、香り、旨味。

この三つを、一度別々に考えてみます。

香り、食感を考える


まず青ねぎです。

青い部分は小口切りにします。



白い部分は、少しひし形のように大きめに切っておきます。



なぜ白い部分だけ大きくするかというと、食感を残したいからです。

鍋に本当に少量の油を入れます。

ごま油でも、サラダ油でも構いませんが、私は太白ごま油くらいのクセのない油が合うと思います。


そこへ白ねぎを入れ、焼き目を付けます。



ここでは、ねぎへ中まで火を通すことが目的ではありません。

焼き色を作ることが目的です。

ねぎへ焼き色が付くことで香ばしさが生まれ、それが後から冷たい出汁へ移ります。

これが今回の香りの一つになります。

焼き色が付いたら取り出します。

同じ油で、なすにも焼き色を付けます   




なすは皮付きのままで構いません。

1cm角くらいに切っておきます。

ねぎを焼いた油で、そのままなすを炒めます。

こちらも動かさずしっかり焼き目を付けます。

なすは油との相性がいいので、焼いたときの香りと甘味が加わります。

冷たい料理だからこそ、ただ生野菜を刻むだけではなく、一部の野菜に「焼いた香り」を加えておく。

これによって、冷たい料理の中にも少し立体感が出ます。

焼けたら、こちらも取り出します。



最後に、下茹でした切り干し大根をザクザクと少し太めに切り、同じ鍋で炒めます。 


切り干し大根には、もともと噛んだときの食感があります。

そこへさらに軽く炒める工程を加え、少し香ばしさを付けます。

これで、

焼いたねぎ。

焼いたなす。

炒めた切り干し大根。

この三つができました。

すべてボウルへ入れ、ボウルの下へ氷水を当ててしっかり冷やしておきます。 


次は冷たい味噌出汁つくり


野菜を冷やしている間に、出汁を作ります。

本来であれば、昆布と鰹節から取ってあげるのが一番いいと思います。

ただ今回は、茅乃舎のだしパックを使いました。




家庭料理ですから、簡単にできるところは簡単でいいと思います。

出汁を取ったら、醤油と塩で軽く味を付けます。


ここでは、味を強くしすぎないことが大切です。

この後に味噌も入りますし、梅干しも入ります。

さらに野菜の旨味も入ってきます。

最初から出汁だけで完成形の味にしようとすると、最後には強すぎる味になります。

「あ、出汁として美味しいな」

くらいで止めておきます。

そこへ、おろした生姜を加えます。



そして出汁も氷水へ当て、しっかり冷やします。



出汁が冷えたら、味噌を溶いていきます。

今回使うのであれば、私は信州味噌、もしくは信州味噌に近い淡色の米味噌をおすすめします。
私がここで冷たい状態で味噌を入れるのは理由があります。
本来、味噌は沸騰せずに、温めた状態で香りが1番出るもの。
今回は、冷たいお茶漬け風で、香りは先ほど焼いた野菜たちから少し分けていただく予定です。その上で冷たい料理と言うものは、塩味がかなり重要です。
塩味が暖かい時と比べると少し強くないと感じにくい。
ですので、あえて冷たい状態で味噌を溶かすのです。


赤味噌のように強く熟成したものよりも、淡色系の米味噌のほうが今回の夏野菜や冷たい出汁を邪魔しにくいと思います。

これで、少し冷や汁のような、冷たい味噌汁のような出汁が完成します。

焼いた野菜の香りを冷たい出汁へ移す


冷たい味噌出汁へ、先ほど炒めて冷やしておいた切り干し大根、ねぎ、なすを加えます。

ここですぐに盛り付けてもいいのですが、少し置いておくと、焼いたねぎやなすの香りが出汁へ移っていきます。

切り干し大根からも旨味が出ます。

温かい煮込み料理ではありませんが、冷たい液体の中でも、時間を置けばそれぞれの味は少しずつなじんでいきます。

もしこれを多めに作って、

「食欲がないときに少しずつ食べたい」

というのであれば、別のやり方もあると思います。

切り干し大根、なす、ねぎに先に味噌を絡ませて、少し濃いめの「野菜味噌」のような状態にして保存しておく。


食べるときに冷たい出汁で伸ばす。  



そうすれば毎回全部を仕込む必要がありません。

梅干しの種も、捨てる前に使います

梅干しは種を取り、果肉をペースト状になるくらい細かく刻んでおきます。 

そして取り出した種。

これもすぐ捨てません。

種の周りには、まだ梅肉が結構残っています。

ですので、先ほど作った冷たい出汁の中へ入れておいてもいいと思います。
ぽいっとな。

梅の香りや塩味が少し出汁へ移ります。

ただし、盛り付ける前には必ず取り出してください。

これは本当に、間違って食べると危ないので。

最後に生の野菜を合わせる


ここまでで、加熱した野菜と出汁は完成です。

あとは、生で食べる野菜を準備します。

トマト、きゅうり、オクラは食べやすい大きさ。

みょうがは細かく刻みます。



大葉は千切り。

青ねぎの青い部分は小口切りにしておきます。

この料理では、

焼いた香り。

生野菜のフレッシュな香り。

出汁の旨味。

味噌のコク。

梅干しの酸味。

生姜やみょうが、大葉の爽やかさ。

それらを最後に全部合わせていきます。

冷やご飯にかけて完成です



昨日の晩ご飯で残ったご飯があれば、それで十分です。

冷蔵庫に入っている冷やご飯をそのまま使ってもいいのですが、私は一度ほんの少しだけ電子レンジにかけます。

完全に温めるのではありません。

固くなったご飯をほぐすくらいです。

そこへ、まず切り干し大根、なす、ねぎが入った冷たい味噌出汁をかけます。

その上へ、トマト、きゅうり、オクラを盛ります。

さらにみょうが、生姜、青ねぎ。

梅干しのペースト。

最後に大葉の千切り。

これで完成です。



私は今回、さらに炒った白ごまを散らし、最後にオリーブオイルをほんの少しだけ回しかけました。

味噌と出汁の和風の味の中に、最後オリーブオイルが薄く入ることで、少し軽やかな香りとコクが加わります。


フランス料理的に何かを足すとするなら、このくらいで十分だと思います。

正直、ここまで毎回やってられないと思います

ここまで読んで、

「いや、こんなの毎回やってられないよ」

と思った方。

その通りです。

私もそう思います。

今回は「自分だったら、やたらをどう料理として組み立てるか」を考えたので、少し工程を増やしています。

でも、本来のやたらはもっとシンプルです。

夏野菜と大根の味噌漬けを細かく刻み、混ぜる。

それだけでも十分美味しい料理です。

だから、ご家庭ではもっと楽をしていいと思います。

例えば富澤商店などで売られている乾燥野菜のミックスを使ったっていい。



削り昆布のような乾物を加えて、旨味を補ってもいい。



スーパーで普通に買えるふりかけを少し利用してもいいと思います。

「ゆかり」でもいいし、その親戚のような「ひろし」でもいい。





本来のやたらそのものではなくなりますが、考え方としては、

野菜を細かくして、香りと塩味と旨味を加え、ご飯を食べやすくする。

それができれば、日常の料理としては十分なんじゃないかなと思います。

郷土料理は、そのまま残すだけでなく、考え方を残す

今回やたらを調べていて面白かったのが、この料理には「旬の夏野菜を食べ切る」という、ものすごく日常的な知恵が詰まっていることです。

毎回決まった高価な材料を買ってくる料理ではありません。

そのとき畑にあるなす。

きゅうり。

みょうが。

唐辛子。

そして家に保存してある大根の味噌漬け。

それらを刻んで、ご飯と一緒に食べる。

だから家庭によって中身も少しずつ違います。

そして、こういう料理は長野のやたらだけではありません。

山形のだしや宮崎の冷や汁のように、全国には、暑い時期でも食べやすく、野菜や出汁、発酵食品などを上手に使いながら、さらっと栄養を取れる料理がいくつもあります。

昔から残っている料理には、それなりの理由があります。

作りやすい。

その土地で手に入りやすい材料を使える。

食欲がなくても食べやすい。

栄養も取れる。

そして、何より美味しい。

これだけ条件が揃っているから、何十年、何百年と家庭の中で作られ続けたのだと思います。

だから私は、郷土料理をただ「昔の料理」として見るのではなく、今の生活にも使える知恵として見るのが面白いと思っています。

元の料理に敬意を持ちながら、

「今の家庭だったらどうするか」

「子どもだったらどうするか」

「食欲がない人だったらどうするか」

「フランス料理人だったらどう考えるか」

そんなふうに料理を考えてみてもいいと思っています。

今回のやたらは、本場のやたらとはかなり違います。

でも、夏野菜をたっぷり使い、香りと食感を楽しみ、ご飯をさらっと食べられるようにする。

そこは、やたらが昔から持っている良さを残せたのではないかなと思います。

夏は暑い。

食欲が出ない日もあります。

それでも何か少し食べたい。

そんなときに、冷蔵庫に残ったご飯と、その日に手に入った夏野菜で作ってみてください。

全部揃えなくてもいいです。

やたらと刻んで、やたらと入れる。

そのくらいの気楽さが、この料理には合っているのかもしれません。

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料理人のキムラ 働きたい飲食店を目指して目標に進んでいます。

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