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福祉とは二度寝できる朝のことだ



ヒールで山を登った日、ふくらはぎが「解せぬ」と鳴いた。


はじめに断っておくが、これは山登りの記録ではない。
母校の大学で講義をした日の記録だ。

しかし、私のふくらはぎが物語ってる。あれほぼ登山やんけ、と。


キャンパスを行進するアリは妙にデカく、虫の生命力はこちらの想定の3倍。
通学路でうりぼうとエンカウントし、「あら可愛い」などと油断すれば、母いのししが交通ルール無用の野生のダンプカーと化して突進してくる。

そんな母校。

この日の私にタイムマシンで会えるなら、まずその足元を指差し、「なぜヒールなのだ」と小一時間問い詰めたい。

完全に戦うフィールドを間違えている。

さて、そんなサバイバルな環境で、私はピカピカの教師の卵である1年生たちに「教育と福祉の協働」について話をしてきた。


「福祉」の正体って、なんだろう。


授業の冒頭、学生たちに問いかける。
「“ふくし”って、どんなイメージ?」

きっと多くの頭の中では、教科書的な「高齢者や障がいのある方への支援」といった言葉が浮かんだだろう。
かつての私も、福祉という言葉を “たまにしか会わない遠い親戚のおっちゃん” 程度に思っていた。

でも、今はこう話している。
「ふくし」とは、「だんの らしの あわせ」の集合体なんだ、と。


例えば、休日の朝に心置きなく二度寝する権利。

これには、二度寝できる体力があり、寝ていても殺されない安全が確保され、眠たい身体を預けられるふかふかの布団がある。

コンビニで何気なく買った新商品が、想像の5倍おいしかった時の静かな高揚感。

これには、自由に買う経済力があり、買いたい時に買いに行ける健康な身体があり、ものを味わって食べられる心のゆとりがある。


日常に散らばる、私たちにとって「あって当然」の無数の幸せ。
毎日の何気ない生活の中での「あたりまえ」。

それは明日事故で動けない身体になったって、年を重ねて判断力が鈍くなったって、双子を出産をして生活リズムがガラリと変わったって、「あたりまえ」であり続けなければならないもの。

どんな立場の人も、誰もが、幸せだと思える社会をみんなでつくっていく。

それが「ふくし」。


政治家だけが頑張るのではない。
先生だけが教えるのでもない。

私たち一人ひとりが、そう思って行動を積み重ねていくってこと。



この社会は、もはやチームで戦うRPGだ。


だけど、その「ふだんの暮らし」すらままならない子どもたちがいる。

不登校、貧困、虐待にヤングケアラー。
理由は複雑に絡み合い、もはや学校の先生や親という特定の個人が、精神力と体力だけで乗り切れるフェーズはとっくに過ぎ去った。

ワンオペ育児ならぬ、ワンオペ教育。

そんな根性論は、平成に置いてきたはずだ。

じゃあ、どうするか。
答えはシンプル。チームで戦うしかない。

今の社会課題は、一人で倒すにはあまりに巨大なラスボスだ。

学校は勇者、家庭は魔法使いだとして、それだけでは到底太刀打ちできない。

NPOという名の僧侶が必要だし、地元企業という戦士もいる。
そして何より、近所のおばちゃんという「重要なヒントをくれる村人」や「HPを全回復してくれる宿屋の主人」なしに、この冒険は進まない。


それぞれが違う武器や魔法(=専門性)を持ち寄り、
同じラスボス(=課題)を倒すために協力する。

それこそが「協働」。


そう、この社会は壮大なRPGだ。と、思う。


講義という種を蒔いたら、こんな芽が出た。


「福祉という言葉はよく耳にすることがあるけれど、改めて何かと聞かれると難しい質問でした。私は勝手に福祉と聞くと障がいを持つ人や高齢者などを対象とした社会支援だと思っていたので、普通に学校に通えている子どもや私たちにもあてはまるものであるような気がして新発見になりました。」

「『すべてのこどもがやりたいことに挑戦できる社会をつくりたい』という言葉に共感しました。家庭の事情等、様々な要因で我慢を強いられているこどもたちも含めたすべての人々が幸せに暮らしていける社会をみんなで作っていく必要性を学びました。」

「子どもの可能性を環境や支援の不足で狭めたり、選択肢を少なくさせてしまうことがないように、学校とそれ以外の機関がそれぞれの立場を強みとして活かし、やる気や活力を引き出すことが重要であると思いました。」


結局のところ、社会を動かすのはいつだって、
誰かの「え、これ、ほっとけなくない?」という小さな違和感から始まる。

その視点を持てるだけで、社会の見え方はきっと変わるはずだ。
その違和感を無視しない大人でありたいし、そういう大人を一人でも多く増やしていきたい。

子どもを支えるのは、先生だけの仕事じゃない。
親だけの責任でもない。

どの立場でも、どんな仕事でも、「見守る人」になれる。

だから私は、これからも子どもを支えるための「協働」という仕組みづくりを、続けていきたい。


あ、あと、ヒールで山は登るべきではない。
それもまた、今回の講義で得た大きな学びだ。

次に母校へ行くときは、トレッキングシューズを持参しようと固く胸に誓っておこう。


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ふじい のぞみ|こどもの夢とまちをつなぐ社会福祉士🚀 わーい!PCとうんうん向き合うカフェタイムのミルクレープ代にさせてもらいます✨しごとがんばれるー!