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映画館でマナーの悪い客たちに苦しめられた話

以前に映画の感想を書いた時に少し触れたのだが、やはりちゃんと詳しく書くべきだと思ったので、改めて映画館でカッチンが迷惑を被ったお客について記しておこうと思う。

あれは今から少し前、映画館に『サンキュー、チャック』を観に行った時だった。

『サンキュー、チャック』はSNSでかなり好評の映画で、それはそれは楽しみに映画館に向かった。

シェイクスピア風に言うと、登校する生徒ではなく下校する生徒の足取りといったところである。

空いてる時間帯を狙ったこともあって混雑はしておらず、それでもキツキツでの鑑賞が苦手なため、かなり前の方の席を購入した。

席について映画のスタートを待っていると、同じ列の離れた席に高齢の男性が1人腰かけるではないか。

「ほう。後ろの席が結構空いてるのに前に座るのか」なんてことを思うこともなく、たいして気にも留めていなかった。

ここで「クソ!同じ列に座るんじゃねぇよ!」なんて思っていたら、カッチンこそ映画館にふさわしくない人間である。

そしてカッチンが座ったすぐ後ろの列、1つ席を空けた斜め後ろに中年男性が1人、その男性の2席空けた隣にはマダム2人が座っていた。

ちなみに上映前に後ろの席をわざわざ確認するはずもなく、後列のお客の配置を確認したのはトラブルが起きてからである。

なので「上映前にお客の配置を確認するなんて神経質な野郎だな」などと思わないように!

いよいよスクリーンに映し出された予告編が終わり、映画泥棒が捕まるいつもの風景を見た後に、『サンキュー、チャック』の冒頭が映し出された。

いつも映画を観る時とまったく同じ流れである。

つまりトム・クルーズ主演の『コラテラル』のキャッチコピー「その夜は、いつものように始まった」とまったく同じ状況である。

いつも思うのだが、映画泥棒を捕まえる時はあんな生ぬるい捕まえ方じゃなくて、L.Aの警察みたいにボコボコにすればいいのに。その方が抑止力になる気がする。

そんなわけで『サンキュー、チャック』が始まったわけだが、間違いなく中盤までは平和な時間が流れていた。

序盤はなかなかに不可解な映画だったので、置いてかれないようにカッチンもかなり集中力を発揮して鑑賞していた。

事件が起きたのは映画が中盤に差し掛かった頃である。

なにやら右側にボワッと影が見えた。

もちろんスクリーンを観てるわけだから、見えたというよりかは、視界に入ってきたと言った方が正しい。

ボワッとした影はちょうど人間の頭ぐらいの大きさだった。

そのためその影が視界に入った瞬間に背中に冷たいものが走り、思わず「ひ!」と声をあげそうになった。

視界に入った影の大きさがちょうど人間の頭部ぐらいの大きさだったので、童(わらべ)の霊が現れて、ひょこっと顔を出しているのかと思ったのだ。

しかし、そこはさすがに冷静なカッチンである。

「いや…童の霊が『サンキュー、チャック』を観るとは思えない。観るならコナンとかマリオを観るはず」と瞬時に思い直し、じゃあ影の正体は何なのか?と首を右側にグルっと回した。

ああ…!

童の霊だった方がどんなに良かったか!

首をグルリと回した先には、斜め後ろに座っている客の足があったのである。

ちゃんと説明するので情景を思い浮かべてほしい。

斜め後ろの客は靴を脱ぎ、靴下むき出しの状態で前の席の背もたれの上に足を乗せて鑑賞していたのだ!

知らない人も多いと思うが、カッチンは少々潔癖症で、温泉やスパ的なところに行くと無意識につま先だけ、もしくはかかとだけで歩いてしまう人間である。

信じられるだろうか?

そんなカッチンの右側に、1つ席が空いてるとはいえ靴下むきだしの足が差し出されているのである。

にわかに信じることができず、両手で目をゴシゴシとこすり「きっと見間違えだろう」と思いながら、もう1度首を右に回してみた。

するとどうだろうか?

やっぱりあるではないか!

いくら目を凝らして見ても、オッサンの足があるのである。

よりにもよってオッサンの足である。

このオッサンがもしも広瀬すずさんだったなら、カッチンもそこまで気にしなかったと思う。

ちなみに変な趣味があるわけではなく、あくまでオッサンよりかは全然いいという意味である。

影の正体が足だとわかった瞬間、怒りがワナワナと込み上げてきた。

拳の中で爪が突き刺さるかと思いきや、深爪なのでその心配はない。

さりげなく後ろを見ると、足を上げてる無法者の横にはマダム2人が座って鑑賞している。

このマダム2人もスクリーンを観る時に否が応でもオッサンの足が視界に入るわけで、非常に不快な思いをしているはずである。

さらに後列の方々は洩れなく、足を視界に入れながらの鑑賞を余儀なくされているのである。

「こんな暴君が令和の世に存在するのか!?」と驚愕しつつも、「ここは注意するべきであろう」という思いが同時に頭に浮かんだ。

しかし、さらに同時にカッチンの頭には、近年ネットニュースで見かける物騒な事件たちが浮かんできたのである。

もしかしたら武器的なモノを所持してるかもしれないし、総合格闘技を10年以上やってる猛者かもしれない…。

顔を見ればちょっとは雰囲気がわかりそうなものだが、上映前に顔なんて見ていないし上映中は暗くてよく見えない。

思いっきり振り向いて凝視もなかなかしづらい…。

そうこう思っているうちに「こんな客に意識を持っていかれては映画のチケット代がもったいない」という思いに怒りがすり替わっていき、昔読んだブッダの本を参考に『サンキュー、チャック』へと意識を戻していった。

これはもちろん簡単なことではない。

しかもカッチンはさっきも言ったように、少々潔癖症なのである。

斜め後ろのオッサンが足を背もたれに乗せたせいで、「もしかしてこういう客は他の上映回でもいるのか?じゃあ今座ってる椅子も誰か足を乗せてた可能性があるのか?」と戦々恐々とし始めてしまった。

その結果、背もたれに首を預けていることにすらストレスを感じ始めたのだ。

「くっ!このオッサン…どこまで迷惑をかければ…」なんて思っていた矢先だった。

カッチンと同じ列の離れた席に座っていた高齢男性が動いたのだ。

いや、正確に言うと音が聞こえてきたのだ。

「おお!ついに注意する人が現れたのか!」と思った人は、残念ながら世間を甘く見すぎである。

同じ列の離れた席に座っているオッサンが出した音は、持ち来んだお菓子をバッグから出す音だったのである。

なんのお菓子だったかは確認できていないが、とりあえず食べる時に毎回袋がガサガサ音を立てるお菓子であった。

右側を向けば中年男性の足、さらに奥にはガサガサと音を立ててお菓子を貪る高齢男性…。

いったいカッチンが何をしたというのか…。

せめてもの救いは、オッサンの足から異臭がしてこない事だけである。

「カッチンは蓄膿なのか?」と思った人、残念ながらハズレである。

あんなマナーの悪いオッサンの足がクサくないはずがないから、もしかしたら空調の関係で風上だったのかもしれない。

無人の左側だけやたら平和である。

このあまりにムゴイ極限状態での映画鑑賞を強いられたカッチンを救ったのは、自分自身だった。

ここだけの話、カッチンはかなりの貧乏性である。

「貧乏性じゃなくて貧乏だろ」と思った輩は、映画館で童(わらべ)の霊に呪いコロされるだろう。

ひょこっと顔を出した貧乏性は、すぐさま合理的な答えを与えてくれた。

「そんな奴らのために映画のチケット代を無駄にするのか?」と。

カッチンは映画が大好きで映画館に足繫く通っているが、そのために普段からかなり節約しているのである。

貧乏性が顔を出した瞬間、驚異的な集中力で映画の世界に没入したことは言うまでもない。

こんなとんでもない事態に巻き込まれたにも関わらず、『サンキュー、チャック』はとてもいい映画だった。

この映画を観て、なおさら怒りに飲み込まれないで良かったとしみじみ思えた。

そしてエンドロールが終わり、足上げオッサンの顔を確認してやろうとすぐに席を立たなかったカッチンは、スクリーンの前を歩くマル対の顔をしっかりと確認した。

見るからにイモ野郎であった。

多分だが、本心から前の座席の背もたれに足を乗せるのが他人の迷惑になると思ってないのであろう。

正直マナーの悪い客に感情を揺さぶられた時は悲しい気持ちになったが、集中し直してなんとかリカバリーできて本当によかった。

ちなみにこの出来事がちょっとトラウマになって、次の映画館での鑑賞から、足上げ野郎がまた現れないかと心配するようになってしまった。

奴の罪は重い。

イヤな思いをする人が再び出ないように、くれぐれも気を付けてほしいものである。

カッチン自身も無意識にマナー違反をしていないかと身が引き締まる出来事だった…。

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