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中学受験のコスパを考えるたび、私はイクラ丼を思い出す

「中学受験はコスパが悪い」

そんな声をたまに聞く。○○大学を目指すなら高校受験がオススメ、その方がコスパがいいよ、とか。私は、

教育っていう正解のないフィールドを「コスパ」という指標で語ること自体、ナンセンス

だと思っている。


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私は小学1年生のとき、地元のお祭りでエレクトーン奏者を見て、「かっこいー!」と感動し、親に頼んでエレクトーンを習わせてもらった。しかし、家での練習がとかく嫌いだった私は、すぐ落ちこぼれた。先生も怖かった。(全然練習してこない生徒だったから、怒られるのも当然なのだけれど。)


結局、たった1年で辞めた。今となっては楽譜を読むことすら怪しい。エレクトーンの技術に関しては、ほぼ何も身に付かなかった。


エレクトーン教室には、同じ学校のめぐみちゃんがいた。めぐみちゃんは私よりもずっと前から習っていた。おとなしいけれど、とても優しい子で、エレクトーン教室の足を引っ張る私にも嫌な顔ひとつしなかった。そればかりか、練習のない日に家で教えてくれたりもした。


私は1年で教室を辞めてしまったけれど、その後もめぐみちゃんは仲良くしてくれて、放課後もよく遊んだ。めぐみちゃんの上達したエレクトーンを聴かせてくれたりもした。


ある年のめぐみちゃんのお誕生日。めぐみちゃんのお父さんが店長をやっていた海鮮居酒屋を昼間だけ開け、お誕生日パーティーをすることになり、私は招待された。


そこで私は、生まれて初めて「イクラ丼」を食べた。世の中にこんな美味しいものがあるのか。大人が行ける「居酒屋」という場所は、こんな素晴らしいものが食べられる場所なのか。感動しすぎて言葉も発せず、もくもくと食べていたことを今でもよく覚えている。

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エレクトーン教室に通ったことは、「エレクトーンが上達する」というパフォーマンスだけで見れば、コスパ最悪だろう。でも、私はエレクトーン教室に通わなければ、

めぐみちゃんと仲良くなることもなかった。
めぐみちゃんの努力の音色を聴くこともなかった。
そして、イクラ丼で心が震えるほど感動することもなかった。

エレクトーン教室に通わせてくれて、お父さんお母さんありがとう、と今でも思っている。


仮に、息子の中学受験をなんらかの事情でやめることになったとしても。塾で素晴らしい先生や友達との出会いがあり、そこから何かを感じたり、気づいたりしたなら、私は通わせて良かったと思うだろう。


逆に、第一志望の中学に合格したとしても、その後息子が燃え尽きてしまい、勉強が大嫌いになってしまったら、私は中学受験をしなければ良かったと思うかもしれない。


もちろん、中学受験はお金がかかる。だから、高校受験と比較してどれくらいお金がかかるかを考えるのは大事だろう。でも、それはかかるコストの比較であって、パフォーマンスまでは測れない。



何を得るかなんて、そのときにはわからないし、何を得たと感じるかも人それぞれだからだ。
……そう思うのは私だけだろうか。



めぐみちゃん、元気かな。久しぶりに連絡してみよう。


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