巽くんと今日子さん 第6話
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内開きの心の扉
中は暗くてひとりぼっち
鍵をあけ少し開いて様子みる
ノックの音はもう聞こえない
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第6話 心の扉
夢を見た。
少し開いた扉から巽くんが入ってきて笑顔で言うの。
「今日子さん、オムライス食べに行きましょう。」
ほんとは夢なんて見ていない。
スマホを眺めて眠れない夜が続いている。
「じゃあ、今度行きましょう。」
何度脳内で再生したことだろう。LINEのトークルームに向かって、なんのはなしですか、と問いかける。
あれから一週間たっても“今度”のお誘いは来ない。
そうだった。
巽くんは自分からはLINEしないおサムライさん。
バイト中だってそんな話にならないしこのまま今度なんてこないのかも。そういえばLINE交換したときでさえ全然メッセージこなくって『よ·ろ·し·く』って送った後やっときたメッセージ『彼女放ったらかしにしたみたいで焦りました💦』だったっけ。
これは間違いない。
このまま待っててもなんにも始まらないパターンだ。
気がつけばLINEのトークルームを見てしまう。
いけない、いけない。
Ahoセグさん…とまた新月メッセージのサイトを開く。
怖くても本音を伝えて
本心に従って行動して
勇気をもってあなたが本音を語った先にある
幸せな世界
私の本心、私はどう思ってどうしたいの。
今までの私はどうだった。今までと同じでいいの?
自問自答が続く。
自分から行動に移すことのない私はいつも相手任せで浅い交友関係しかない。淋しさも少しはあるけど自分から行動したら戻ってこれなくなってしまいそうで怖い。傷つきたくない臆病者だ。相手にばかり行動を求める私はずるいのかな。巽くんとはフィフティフィフティ、対等な関係を築きたいと思ってる。『よ·ろ·し·く』って送ったときもちゃんと返してくれたから勇気を出して自分からLINEしてみたら何か変化訪れるんだろうか…。
うん、決めた。LINEする。
LINE自分からする私に変わる。
なんてことないメッセージなんだから。
ドキドキしたりしないんだから。
こんばんは。
先日聞き忘れてました。
オムライス
どこかお気に入りのお店ありますか。
こんばんは。
前に好きだったオムライスあるんですが
今はやってなくて。
良さそうなお店探してみます。
勇気を出して送ってみてからわりとすぐに返信がきてホッとする。でもお店選び降谷さんの送別会でも巽くん、候補沢山挙げてくれてたよね。きっと巽くんのことだからオムライスのお店もたくさん調べてくれそう。だけどあんまり気を遣わせたり負担はかけたくない。
沢山調べてくれそうな気もしますが
良さげなお店にふらっと入ってみるのも
楽しいかも知れませんよ。
ふらっと。いいですね。
じゃあまた良さげなとこあれば行きましょう。
あっ、また“今度”のパターンに嵌まってしまった。
もしも…同じ気持ちならいつ会うかそのお誘いはして欲しいから、そこには触れず毎日LINEする口実を探してしまう。家にいても外にいても。そうしてる間も巽くんからのメッセージはこない。
今日も何もないんだろうな…。
そう思いつつどこかで“今度”を期待して浮き足だってる自分がおかしい。お洋服どうしようなんて早くに家を出てバイト先1駅手前でおりる。
駅の拡張工事で高架下のお店が軒並み撤去を余儀なくされたこのエリア、立ち退いたお店が続々と移転オープンし始めた。再開発も一緒に進めているんだろう。今までなかったお店もちらほら見てとれる。
あっ、ここ新しいお店だ。
表の看板にはパスタとオムライスのランチメニューがズラリと並ぶ。中のライスはバターライスかチキンライスが選べ、ソースもプレーンなケチャップからビーフシチュー、デミグラス、アメリケーヌ、ホワイトなど10種類近くもある。パスタはフィトチーネタイプのみだけど種類はやっぱり豊富だ。巽くんとのオムライスこのお店いいかも。美味しいのかな。
カラン、少し高い音で扉についたベルがなった。
チーク材とサイフォンで立てた珈琲の落ち着いた薫りに似合わずソワソワと店内を見渡す。12時半、もう出口近くの席しか空いてない。
「パスタ、アメリケーヌソースでお願いします。ドリンクは食後に珈琲を。」
パスタにしたのはオムライス一緒に食べたいから。半月のような器の真ん中に盛られたフィトチーネの生パスタはもっちりしていて見た目以上にボリュームがある。
うん。美味しい。
温かいうちに食べたいから、スマホで撮ってから記憶するようにゆっくり味わう。珈琲の香りを味わいながらスケッチブックに描いていく。
そのあとお気に入りのショップで小花の入ったトレーナーを見つけた。黒にデイジー、甘すぎないけど可愛い。
今日はいいとこ見つけちゃった。
5日ぶりだし、LINEしてもいいよね。
こんばんは。
お店情報です。
オムライスのいいお店見つけましたよ。
今日はパスタを頼んでみましたが
モチモチしてて美味しかったです😃
お店の写真にスケッチもと送って完了。
返信あるまでにらめっこ。
返信遅くなりました。
良さそうですね!
今日子さん今度連れてって下さいね。
巽くんからはまた“今度”。私は誘って欲しいんです。
でも『いつにしましょうか』がどうしても言えない。
だって年が上だし、だって巽くんはこれから社会に出る人だし、だって、だって、だって。いつだって私の心は臆病風に吹かれている。
それからも何度かお店を見つけてはLINEする。
巽くんは返信ひとつするにもすごく気を遣う人。それは言葉選びから感じとれる。だから余裕のないときは既読になるのも遅くなるのかも。返信に気を遣わせないようなことしか送らなくなったらトークルームがポストみたいな独り言ばかりになってしまった。
降谷さんの送別会から1ヶ月、お店の定休日がやってきた。巽くんと一緒に帰ってから1ヶ月。
巽くんと一緒に来たかった、そんなことを考えながらカランとお店の扉をゆっくり開ける。
あっ、夜はパスタとオムライス以外にピザやアラカルトメニューがあるんだ。一緒に食べるならピザもいいよね。熱々でパリッとしたこの生地の感じ伝わるかなぁ、一緒に食べたい気持ちも伝わるといいな、よしっ、今私はこうしてます、リアルなトーク送っちゃおう。美味しそうなピザを前にしてそんな気がムクムク沸き上がってくる。
巽くんにも『いいですね、僕も食べたいです』なんて思いが、沸き上がってくれたらなんて思ったのに、ついに既読は翌朝まで付くことがなかった。
第7話に続く
なんのはなしですか
途中までで止まっていたお話しを再掲して続きを書いていますが不器用で拙いストーリーに赤面です。
いつもお付き合いありがとうございます。
途中まででストップしてたお話。
(下書き稿として置いておきます。)
こちらへのビューや好き、コメントも励みになりました。ありがとうございます。
