#51 憧れの「有松絞り」を求めて。ひとり旅が教えてくれた、願いを口にする勇気。
「いつか、本場の有松絞りで浴衣を作ってみたい」
ずっと心にあったその願いを叶えるため、私は「ひとり日帰り旅行」という冒険に出かけました。
行き先は、名古屋市にある絞り染めの町、有松。
家には子供もいるし、私が一日空けるのは家族に迷惑をかけてしまうかも……。そんな不安もありましたが、思い切って相談してみると、夫は「行きたいところなんだから、行っておいでよ!」と快く送り出してくれたのです。
「まずは自分の希望を口にすること」。それが、この旅の最初の、そして最大のハードルだったのかもしれません。
そして新横浜から名古屋はのぞみだと1駅。意外と近い。これも行ってみないとわかりませんね。
タイムスリップしたような江戸の街並み
駅から一本道を入ると、そこには江戸時代の情緒あふれる景色が広がっていました。あちこちに掲げられた「ありまつ」の絞りのれんを見て、「本当に来れたんだ!」と胸が熱くなりました。

宝探しのような、問屋さんでの出会い
勇気を出して飛び込んだのは、ご家族で営まれている昔ながらの問屋さん。
緊張していた私を、お店の方は「ゆっくりしていってね」と優しく迎え入れてくれました。
次々と箱から出される、色とりどりの反物たち。それはまるで宝探しのようでした。
体に当てて鏡を見ながら、お店の方と語らい、ゆっくりと選んだ理想の一枚。
人の温もりに触れながら選ぶ時間は、何にも代えがたい贅沢なひとときでした。
一反の布に宿る、職人たちの魂
その後訪れた「有松・鳴海絞り会館」では、絞りの奥深い歴史を知ることに。
かつて耕作が難しい土地だった有松の人々が、生き抜くために知恵を絞り、工夫を重ねて発展させてきた伝統技術。
驚いたのは、絞り模様をつけるために糸を括る職人さんは生涯たった一つの技法だけを専業として守り続けるということ。
「括る」「染める」「解く」。
何人もの職人さんが数ヶ月かけてバトンを繋ぎ、ようやく一反の布が出来上がる。
その気の遠くなるような工程を知り、自分が手にした布の重み、尊さを改めて実感しました。
私も手拭いの雪花絞りを体験して来ました。完成を想像しながら畳む、絞る、染める。とても楽しい体験でした。
できあがった手拭いは世界に1つのお土産になりました。

「ただ可愛い」が「かけがえのない宝物」に変わるまで
もし有松絞りの浴衣をデパートで買っていたら、私にとってそれは「ただ可愛い浴衣」だったでしょう。
でも、現地へ行き、歴史を知り、作っている方々の想いに触れた今、その浴衣は私にとって「物語の詰まった宝物」になりました。
一人で一歩踏み出したからこそ見えた景色、聞こえた声。
このひとり旅で得た「自分の願いを大切にする気持ち」を胸に、仕上がった浴衣に袖を通す日を今から心待ちにしています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
絞りというと藍染のイメージが強いですが、いまはピンクや水色、カラフルなものもたくさんあります。
6月には有松しぼり祭りも開かれますよ。
今年の夏は世界に1つの浴衣、着てみませんか?
名古屋から有松まで名鉄名古屋本線で25分ほどです。
https://shibori-kaikan.com/arimatsu-isan/
