見出し画像

Quest4の性能と今後のヘッドセットの買い替え戦略を考察する('26/4更新)

[2026/4] Xrostella VR1、Quest 3系/Pico4系の値上げについて追記
[2026/1] Quest4とSteam Frameに関する最新情報を追加、文章を大幅に更新
[2025/7] Quest4が2027に延期とのリーク情報を追加
[2025/5] 昨今のHMDの状況、追加のリサーチを踏まえて内容をアップデート

今のVR業界を牽引しているのは間違いなくMetaである。
社名変更もそうだが、なにしろVR/AR領域への投資が1年で100億ドル(1兆円以上)単位という頭のおかしい金額なので、当然といえば当然。
XRの技術開発はもちろん、製品(コンシューマ向けのヘッドセット)で見ても、局所的にはともかく大局的にはMetaが最優なのは疑いないだろう(コスパまで含めて見れば、だが。もちろんより高価格でより高性能なものは存在する)。

局所的に」というのは、Metaは製品戦略的に3年ごとに新型HMDを出すことにしていて、その狭間では同価格帯でも他社が先んじることがあるためだ。
例えばQuestの競合であるPico4は2022/10に次世代光学系であるパンケーキレンズをMetaに先駆けて採用し発売されたが、これは2020/10登場のQuest2と、2023/10登場のQuest3の間の3年間に登場したため。
まあこれは同じような部品を組み合わせて作るスマホのような電気製品の事情と、製品ライフサイクルを考えたら当たり前の話である。

ただ「(ソフトウェアやコスパを含めた総合的な完成度で)発売時点のMetaのヘッドセットが他に劣ることはまずない」ということは概ね疑いないだろう。
なので自分は、現在のQuestと次期のQuestの性能をベンチマークにHMDの買い替えを考えるのが合理的だと思っている。

そこで今回、少し気が早いが次世代モデルQuest4の性能を予測して、これと比較しながら今後どんなヘッドセットなら買い/我慢なのか?を考えてみようと思う。


■MetaのHMDロードマップ

ではここで、MetaのVRヘッドセットの製品ロードマップを見てみよう。
実はMetaの製品ロードマップは市場の状況を見て割と頻繁に改定されている。経緯を全部書くとややこしいので、2026/1時点での最新の情報に基づく推測が以下のとおりである。
(※取り消し線:情報が出ていたがキャンセルされたモデル)

普及機:Quest2(2020年)⇒Quest3(2023年)⇒Quest4(2027-2028年)
廉価機:Quest2(価格改定後)⇒Quest 3S(2024年)⇒Quest 4S?(2027-2028年:未確定)
ハイエンド:Quest Pro(2022年)⇒ Quest Pro2(2024年、中止)⇒ Quest Pro2(La Jolla: 2027年)⇒ Puffin/Phoenix(軽量MR: 2027年前半

次世代機Quest 4、その廉価版(仮にQuest 4Sとする)はPismo High, Pismo Lowのコードネームで2026年発売に向け開発中と報じられていたが、25年7月時点で延期。Pismo Hight/Lowの開発はキャンセルされたものの、25年12月の最新の情報では再び2027-2028年を目指して開発中とのこと。
なおQuest 4Sについては情報は出ておらず、商品展開上、廉価版は出るだろう…という推測の下載せている。ただしMetaは採算性改善を優先する動きを見せており、Quest 4Sが発売されない可能性は依然ある。

またQuest Pro2とされていたコードネームLa Jollaはキャンセルされ、代わってコードネームPuffin/Phoenixと呼ばれる超軽量モデルの開発が進んでいる。ディスプレイとバッテリバック+処理部を分離して、頭部に装着するデバイスを100gほどまで軽量化するとのこと。

価格は1000ドル(15万円)前後が見込まれ、Quest 4値上げの見込みを考えると、ハイエンドといえるかも若干微妙で、新しい形での普及機と見たほうがいいだろう。…と言ってる間に、Quest 3が10万円に価格改定されており、インフレや世界的なメモリ値上げを見るに、もう一段上がってなんだかんだ20万円弱になるのではと見ている('26/4追記)

なおPhoenixは当初2026年発売予定だったが、2027年前半に延期と報道されている(2025/12)。製品の体験向上を目指したブラッシュアップのためだそうで、昨今の予算削減や開発の難航が推測される。


◆Metaの目指しているものはなにか?

さて、ハイエンドモデル(Quest Proの後継機)の2度に渡る製品化キャンセル、軽量化、さらに1000ドルというPhoenix/Puffinの価格設定を鑑みるに、もはやMetaは従来のQuest Proの発展型となるハイエンドモデルは出さないと考えるべきだろう(Quest Proは1500ドル)。
これは「全部のせ」として鳴り物入りで登場した3999ドルのApple Visionへの世間の反応も一因と思われる(販売は初年度30万台ほどと言われる。これはQuest 3の1/10だ)。

また以前とは違い、2025年時点でVR-HMDは既に安価帯でもハードとして一定のレベルまで成熟している。Quest 3も既に500万台程度は売れており、ゲーム機として見ると一定の成功を収めている(2025クリスマス商戦でもSwitchの1/4、PS5の1/3くらいは売れている)。
ただ、所詮はゲーム機として売れているにすぎない。Metaが望んでいるのはスマホに続く「次」の情報プラットフォームの独占であって、ゲーム機を作ることではない(でないとあんな巨額投資は正当化できない)。

だからこそ、今Metaが求めているのはQuest ProやApple Visionのような「全部乗せ」でも「より優秀なゲーム機」でもなく、その用途を拡大…特にスマホやPCの牙城へ食い込めるMRデバイスだ。その一つがRay-ban Metaのスマートグラスで、撮影などスマホの機能をウェアラブルの形で切り出し、200万台以上を売り上げている。
そしておそらく次の狙いは生産性(Productivity)用途で、それが2025/11に正式投入されたPCの仮想モニタとしてQuest 3を使うMixed Reality Linkといえる。

まさにPC向けの仮想モニタアプリImmersedと、それに合わせて割り切った軽量小型化で装着性を高めたImmersed Visorを追走しているわけで、そうなると「全部入り」のLa Jollaではなく軽量全振りのPuffin/Phoenixに注力するのは至極真っ当な判断といえる。1000ドル(15万円)の価格もPCと考えるとそれなりに妥当感がある。
またこうした生産性用途が根付けば、あとは時代とともに本体のスペックが上がり、いつしかウェアラブルコンピュータとして生産性のプラットフォームに成り代われる…というMetaの目算も見える。

仮想デスクトップ:Immsered Visorのプロモ画像

Metaはゲーム機を作りたいのではない。あくまでMetaの経済圏に人を呼び込む、情報生産/消費の舞台となるデバイスを作りたい。メタバースはその最初の(そして目的に対しては今のところあまり上手くいっていない)ムーブメントといえる。

そういう意味で、自分のようなゲーマーやVRChatterは言ってみればMetaと同床異夢、たまたまお互いが欲しいものが一時的に合致したにすぎない。MetaがフルトラやLighthouseなどに一切興味を示さず、PC接続専用のHMDをまったく出さないのがその傍証になる。
なのでPicoがPico4 Ultraで足トラッカーを出してきたが、Metaがこれに追従することは絶対ないと思う…と言っていたら、案の定「PICOが成功すれば検討するかも」と軽く流したそうだ。

ただ一方で、Metaもなまじゲーム機としてQuestが売れている(繰り返しになるがSwitchやPSの数分の1は売れている)だけに、現状のQuestを切り捨てることもまたないだろう。よってQuest 3の順当な後継機としてのQuest 4自体は十分期待していいはずだ。ただし大きな投資を伴う新機能・デバイスや、これまでのような低価格は期待できない。また、Phoenix/Puffinが本命とはいえ、Quest 4もまた生産性用途での廉価機としての役割も期待されることになるだろう。
(なお、MetaがASUSなどを巻き込んで計画していたハイエンド機も残念ながら2025/12に事実上の中止が発表されている)

と、この辺りを前提に、2027-2028年に来るであろうQuest4のスペックやらを予想してみよう。


■Quest4の性能を予測する

VRヘッドセットの最近の競争軸はだいたい以下のような点である。Quest4のスペックを考えるため、各項目に分けて予測してみる。

①新世代のチップセット+パネルによる処理能力・画質向上
②光学系、バッテリ配置などのハードウェア設計
③小型化、軽量化
④カメラパススルー、深度センサ、顔トラ、アイトラなどのセンサ系
⑤MR、ハンドトラッキングなどのソフト的機能拡充

①新世代のチップセット+映像パネル

これは最新のSnapdragon XR2+ Gen2の次世代チップセットと考えていいだろう。QualcomもMetaの製品開発と歩調を合わせてくるのが自然だ。

現状最新のXR2+ Gen2は片目4.3Kの解像度(=4300x4300:Quest3は2064x2208)が90fpsで描画できるスペックらしい。すげーな。
Quest3はこの一世代前、XR2 Gen2で、最大3Kのところを2.2kの解像度に抑えている。電力消費や他の処理、なにより高解像度液晶パネルの調達コストを考えての選択だろう。ここはボトルネックにならない。

ただ解像度はどうも3Kまで到達できるかも微妙な様子である。
昨今の情報を見ると、HMDの解像度のボトルネックはチップセットではなく、パネルの技術的制約らしい。
LCDを高解像度化(≒高密度化)すると、液晶の詰め込み過ぎで画面が暗くなってしまい、それを補おうとバックライトを明るくすると熱と消費電力が爆増してしまう…というジレンマが、高解像度化を阻んでいるという。特に熱的にもバッテリー容量的にも制約の厳しいスタンドアロン型では大きな課題になる(裏を返すと、この制約が比較的緩いPC接続専用HMDは解像度でやや有利になる可能性が高い)(2025/5追記)

これは2026年に鳴り物入りで登場するVRの元祖Viveの最新鋭機、Steam Frame2160x2160という、2023年発売のQuest 3とほぼ同じ解像度で登場することからも裏付けられる。極論、数年間この解像度が液晶モデルのデファクトスタンダードになっても驚かない (2026/1追記)

さて、とはいえさすがに2027年末登場の最新鋭機となると、解像度自体はあげてくると思う。
Quest3の画素密度が1218ppi。LCD(液晶)パネルは2024年頃の研究~量産検討レベルで2000ppi=4K解像度に到達したそうで、量産まで5年とすると2029年にこれが市場投入となる。
となると時期的にQuest4はいいとこ1600ppi・2.6inchパネル=解像度2840x3038くらいがMAXだろう。ただしMetaのVR投資削減、採算性の改善要請、一般論として十分実感できる性能向上が30%以上(実際Quest2⇒3は画素数ベースでそれくらい)なのを考えると、解像度は2350x2520、高くて2680x2880くらいのレンジに落ち着くのではないか(それぞれ28.5PPD、32.5PPDで、生産性用途にもそれなりに応えられそうな数字と思える)。Vive Focus Visionなどの2448x2448 LCDとほぼ同クラスだ。

なお、じゃあなんでMeganeX superlight 8kなどの4K OLEDパネルはあんな高解像度なのか?というと、OLEDは自発光素子なので高密度化しても邪魔になる画素や配線がなく、透過率の問題がないため。
もっともOLEDはOLEDで寿命の問題や、画素密度的に半導体と同じプロセスで製造せねばならないので製造ラインが高価&歩留まりが悪く製造コストがバカ高い(4Kヘッドセットがどれもこれも30万する理由)というまた別の課題を抱えていて、ここはLCDが明らかに有利な点といえる。

また廉価版のQuest4Sについては、Quest3Sが液晶・光学系をQuest2のから流用していることを考えると、Quest4SもQuest3からの流用になるると推測される(解像度は2064x2208)。
減価償却が済んだ最新モデルの部品を次期廉価モデルで使い回すのは理にかなったやり方に思える。パンケーキレンズはコストアップ要因だが、Pico 4があの値段でパンケーキレンズを入れてきてることを鑑みるに、まあさすがにここは頑張るだろう。…廉価版が発売されるなら、だが。
ただ昨今の物価高でQuest 3Sすら8万円とQuest 3の旧価格に近づいており、廉価版の必要性は高まっているようにも思える('26/4追記)


②光学系、バッテリ配置などのハードウェア設計
③軽量化、小型化

ここは現状、新しい要素が見えず、少なくともQuest2⇒Quest3でのフレネルレンズ⇒パンケーキレンズに並ぶような変化は出てこないだろう。Quest4は元々優秀なQuest3の光学系の小改良になると予想。光学系はスペックでは見えないが画質面で非常に重要で、Metaはこの領域で世界トップのノウハウをもっている。ここはQuest 4でも手を抜かないだろう。
また表示系以外も、低価格&スタンドアロン(バッテリ内蔵)という前提だとQuest3の設計はほぼ現状の最適解だし、またハイエンドモデルとなるPuffinのキモがハードウェアの分離による劇的な軽量化である以上、差別化の観点からもQuest2/Quest3の系譜から大胆な変更があるとは考えづらい。

つまりQuest4は形状・重量ともQuest3から大きく変わらないと考えるのが自然だ。ただし①で書いたLCDパネルの発熱問題から、冷却系の強化は入るだろう。重量増はもちろん、ファンノイズがうるさくないといいが。


④カメラパススルー、深度センサ、顔トラ、アイトラなどのセンサ系

まず、Quest Pro⇒Quest3で省かれたフェイストラッキング(顔トラ)は、現状生産性用途でもゲーム用途でも(大半の人にとって)ほぼ使い道がないので、この復活はないだろう。
一方でアイトラッキング(アイトラ)は、次世代のインターフェイス(Gaze Input: AVPが搭載してるアレ)として載せてくる可能性が高くなってきた。となるとパフォーマンス改善のためFoveated Rendringも当然入れてくるだろう。いまだに他社が追いつけないオーパーツのようなQuest Proのアイトラのノウハウもあるだろうし、ここは期待できる。
またQuest3のウリだったMR機能は引き続き重視されるはずで、RGBカメラや深度センサは続投・高画質化、チップセットの性能向上もあってカラーパススルーの解像度も現状の18PPD相当から24PPDくらいまでは上がるだろう。

そして自分の予想ではセンサーは増える。本命がVision Proにも搭載されていたLiDARセンサ。後述するが、Quest4のウリは操作系の革新になると予想している。そのため、Quest3のカメラ画像処理に加えて、より細かい空間的な手の動きを検出できるLiDARセンサを採用してくるのではないか。
ここはQuest4Sでまるっとオミットされてコストダウンポイントとなるだろう。iPhoneに載ってるLiDARモジュールですら単体で50-100ドル(7000-14000円)もするのだ。


⑤MR、ハンドトラッキングなどのソフト的機能拡充

おそらくQuest4のキモになるのはこの部分。Quest3からわかりやすい進化が液晶の高解像度化くらいである分、ここが注力点になるのではないか。

最も強化されると考えるのが、ハンドトラッキング・アイトラッキング・AIによる操作インターフェイス。昨今のQuest3のソフトアップデートの目玉だったが、この開発で得られたノウハウをQuest4で再構築し、さらにアイトラッキングを組み合わせて新たな操作系を提案してくるのではないか。特に先行するPhoenix/Puffinがコントローラーレスな操作系(開発の遅延もここに時間がかかっていると思われる)なので、Quest4にもこれは組み込まれ、生産性用途のデフォルトになるだろう。
またLiDARセンサが搭載されれば、空間的な手の動きをより高精度で捉えられるようになるので、コントローラーなしでも操作感は今よりぐっと洗練されるだろう。
このLiDARはMR機能を一段上に引き上げる役割も担う。既にAR/MR用途は産業分野でのトレンドとして進んでいるので、これを取り込もうとするのが自然だ。眼の前のオブジェクトや部屋をスキャンする能力、より正確なキーボード認識(特に仮想キーボード:机をタイピングできるようになる)、オクルージョン処理などが強化されると思う。

また、MetaがAI投資へ大きくかじを切っていることを考えると、操作系の補助にAIが活用されるのはほぼ確実だろう。特にここはAppleが出遅れている分野なので、AVPとの差別化要素としても申し分ない。音声での入力・操作、自然言語による対話的操作も可能かもしれない。
またここまで機能の統合が進むと、現状はPC連携が前提のMixed Reality Linkでも、その主導権はMetaのデバイスが握ることになる。スペックが追いつけばPCが不要になる世界も見えてくる。

ただ、Phoenix/Puffinはともかく、Quest 4の基本的な位置づけ自体は依然「ゲーム機」に軸足を置くはずだ。なので、従来型のコントローラーはなくならず、完成度の高いQuest3から流用されて標準付属となる。
もしPhoenix/Puffinがハンドトラッキング併用前提の小型コントローラー…例えばSONY SRH-S1のような指輪型のコントローラーや、Meta Ray-Banで採用された筋電位式のコントローラーを採用することがあれば、オプションとして対応してくることも期待したい。

なおQuest4Sはこの恩恵を受けることは難しそうだ。AI機能のみ対応で、操作系はQuest 3のままが現実的か。というのもフォームファクタがQuest3のままではアイトラの追加は難しいし、コストの高いLiDARは論外、となると操作系の統一は難しい。Quest 4Sに相当する廉価機の情報が2026/1現在出ていないのは、それを嫌ってのことかもしれない。
それでも、傑作機Quest3の性能向上版と思えばゲーム用途では悪くない。まあ値段も現状のQuest 3並の可能性も高いが…。

では、以上を総合してのQusest 4の予測スペックがこちら。

Quest4 予想スペック(2026/1更新)

解像度:片目2477x2650(片目2.6k:30PPD
チップセット:Snapdragon XR3(仮)
センサ:カメラx4、RGBカメラx2、LiDARセンサ、アイトラッキング
重量:500g+
光学系:パンケーキレンズ
操作系:Quest3コン+ハンドトラッキング、筋電位コントローラー(オプション)
トラッキング:インサイドアウト(Lighthouse非対応)
想定価格:850ドル(13.5万円)程度

スペック的にはQuest 3からの正当進化。悪く言えば(ゲーム用途では)面白みのない仕上がりになるが、アイトラッキングにより省電力/描画性能は着実に改善し、また生産性用途での実用性は大幅に高まるだろう。
上手くいけば、解像度は低い代わりに値段1/4で、遊べるゲームも豊富なApple Vision Proになるだろう。

なお、価格は確実に上がる。現状Quest 3の512GBモデルは650ドルであり、これにLiDARやアイトラの追加コストが少なくとも75ドル程度、これにMetaが明言している採算性改善を乗せると、850ドル(13万円)程度は覚悟すべきだ。Quest 4Sが出るにしても、そちらも650ドル(10万円)は割らないだろう。
それでも他社のHMDよりは安いが、VRChatユーザーやゲーマー的には、以前ほど頭抜けたコスパのHMDではなくなる。ゲーム以外の用途が増えるのは一応の慰めだろう。


■そしてヘッドセットの買い替え戦略

さて、こんなHMDが(仮に)2027年10月に登場すると仮定した場合、はたしてHMDをどう買い替えていくのがいいのか。つまりQuest 4を待つのか、待たずに既存のHMDを買うのか?何を基準に判断すべきか考えてみよう。

総合的に見た時のQuest4の優位性は揺らがないだろう。しかし以前ほど圧倒的ではなくなる。価格の上昇、機能の重点が生産性用途に寄ることで、VRゲームのみが欲しいユーザーにとっての魅力が若干下がるからだ。
またこの値上げの動きに、もう一方の廉価機であるPicoが追従するかどうかでもQuest 4の位置づけは大きく変わる。Picoも次世代機ではSoC、液晶ともQuest 4とほぼ同じものを採用するはずで、そうなると生産性用途では段違いでもPC用HMDとしてはほぼ差がないPicoが最安のエントリーモデルとなり「とりあえずQuest」の時代が終わる可能性がある。
(ただ中国の景気動向を見るに、そこまでの気前の良さは期待できない気もするので、LiDARを省略+割安価格でQuest 4より2万円ほど割安=10万円がPico次世代機の価格と予測しておく…と言っていたら、物価高で既にPico4 Ultraは10万円代に突入。Questより安価な機体は現実的ではなさそうだ)

さて、では他のライバルとなるHMDについて「画質・価格」「拡張性」「軽さ」の3つの視点から見ていこう。

◆画質と価格について

画質と価格。この2つは非常に強く関係しているので、あわせて今後の見通しを解説する。
まず、Quest4がMeganeX superlight 8kやPlay for Dream MR、Pimax Dream Airなどの3840x3554 4K OLED族に解像度で勝てる見込みはゼロだ。というのもこの4K OLEDは部品コストで600ドル(8-9万円)はくだらないので、価格的にQuest4にはどうやっても使えない。ただ同時に4K OLED族な時点で30万円~という価格も確定である。
Bigscreen Beyond 2を始めとする2560x2560 OLED族も同じ理由で、BS2の17万円という価格よりも大幅に安くなることはないだろう。既に説明のとおり、OLEDは高解像度化できるが高い。

一方、Questを含む安価なLCD(液晶)10万円前後の価格で出せるわけだが、こちらはこちらで今後5年くらい3K超えはムリという結論が出ている。

よって当面、価格・解像度の面でHMDは2極化するのがほぼ確実だ。
① 解像度は~3Kだが10万円前後のLCDモデル(Quest4、Next Pico、Steam Frame
② 4K解像度だが30万円前後のOLEDモデル

要は安くて高解像度の「ちょうどいい」HMDは待つだけ無駄だ。
もし高解像度が欲しい、Quest4を待たずとも30万円の出費を覚悟して4K OLED族を今すぐ買ったほうがいい。PC専用のMeganeX superlight 8Kと、つい最近出荷が開始したPimax Dream Airはいずれも200gほどと軽量がウリ。

またスタンドアロンのPlay for Dream MRこちらでレビューしているのでご参考に)と、初のAndroid XR対応機としてSamsungが発売したProject MoohanことGalaxy XRも市場に出揃ってきた。

さすがに30万はちょっと…ということなら、解像度を諦めて比較的安価なLCDのヘッドセットを買うのがいいだろう。Steam Frameが2160x2160の解像度(Quest3、Pico4とほぼ同じ)を採用したこともあり、ややもすると高解像度化の流れはPhoenix/Puffinが出る2027年中頃まで停滞するのでは?という気もする。

そしてこの両者の価格・解像度の中間地点にいる2560x2560で17万円Bigscreen Beyond 2、というのが現状の概観になる。

Quest 4の解像度はこのBS2と同じ程度と予測される。最新鋭機というには微妙だが、それでも価格vs画質のコスパは良い、というのがこの観点でのQuest 4の立ち位置になるだろう。

なお、2448x2448という高解像度LCDを採用しているVive Focus Visionは、17万円というやや高めの価格ながらQuest4のスペックを先取りしているように見える。だが画質とはパネル解像度×光学系設計の掛け算であり、Focus Visionは旧式のフレネルレンズの採用もあってここの評価が非常に低いため、Quest3かBigscreen Beyond 2を買う方がよいというのが自分の考えである。Viveが頑張ってパンケーキレンズの次世代機を出してくれることを祈る。


◆拡張性について

ここは当然ベースステーションを使うBigscreen Beyond 2などのLighthouse系ヘッドセットが強い。HMD・コントローラー・周辺機器の組み合わせが自由だからだ。
ただ昨今は非Lighthouse系の周辺機器も充実してきており、HaritoraX、ContactTrackなどHMDを選ばない汎用トラッカーも増えてきている。始祖のValveもSteam FrameでついにLighthouseを捨てた

そもそもベースステーションとコントローラー一式を揃えるとHMD以外にさらに10万円ほどかかる。これだけで値上がりしたQuest 4が買えるほどの額なので、インサイドアウトのHMDを買うほうが合理的だ。
つまりどうしても使いたいLighthouse前提の周辺機器やHMDがあるといった場合に限って、かなり割高なのを覚悟の上で買う、というのが正しい選び方になる。

ただしPico4 Ultraは、専用オプションとして安価なIMU/光学式ハイブリッドの独自トラッカーが設定されており、ちょうどQuest系とLighthouse系の間のニッチに滑り込んでいる。価格も安く、モーショントラッカーだけほしい!というなら有力な選択肢だろう。Questが合理性ゆえに捨て去ったこういうユニークな専用周辺機器は、VRゲーミングの文脈では意外と鍵になるのかもしれない。


◆軽さについて(2026/1改訂)

最後に「軽さ」だが、これはQuest系ではどうやっても手に入らない。これはバッテリ内臓のスタンドアロン型の宿命的な欠陥で、ザッカーバーグの心が折れない限りMetaがこれを諦めることは多分ない。つまり軽いHMDが欲しい人は積極的に買い替えを検討すべき、といえる。

ただしここでもトレードオフがある。MeganeX SL8K、Pimax Dream Airなど200gクラスの軽量HMDは基本的にワイヤレス接続不可、PCVR専用になる。
ワイヤレス化には通信速度の限界から映像信号をデコードするプロセッサが必須で、そうなると普通はバッテリーも乗せるので、どうしても500gになってしまう。この解答がQuest系、Pico系、そしてPlay for Dream MRである。

軽量さをとるか、ワイヤレス接続を取るか。ここはほぼ確実に二択になる。

さて、ここで軽さを選ぶなら、本命は片目2.56kの高画質で107gという脅威の軽さを誇るBigscreen Beyond 2。またShitallの4Kながら重量179gと軽量なMeganeX Superlight 8kも魅力的。ただしどちらもLighthouse環境が前提で、ベースステーションを持っていないとややハードルが高いのが難点。

その点、先に紹介した2025/5発売予定のPimax Dream Airは200gほどと軽量ながらインサイドアウトでベースステーション不要なのがポイント高い。ただしやはりPCとの有線接続は必須

またこのインサイドアウトの軽量機という領域にSharpが飛び込んできた。200g切りでPico4/Quest3同等の2160x2160のLCD、そしてメガネ型というXrostella VR1だ。お値段はクラファン時点で20万円超えと中々。

なお冒頭に紹介したImmersed Visorは、軽量&インサイドアウト方式で無線接続可という点でかなりユニークなのだが、待てど暮らせど発売される様子がない。

インサイドアウトかつバッテリーレスのHMDは…あとは作機のVIVE Flowくらいだがまあ論外。SteamVRも非対応だし。

この点、俄然Metaの分離式で超軽量100gを狙うPhoenix/Puffinが気になってくるのだが、コントローラーレスであり、そもそもSteamVRに対応するかすら分からない。好調なスマートグラスの文脈に寄せた機体の可能性もあり、機体はしないほうがいいだろう。

結論として、軽さかワイヤレスかも当面は二者択一になる。また10万円前後で軽量HMDの選択肢はない


◆まとめると(2026/1)

ここまでで、HMDの選び方はおおよそ絞れてきたと思う。

ポイント① A「安価なHMDがいい(解像度~3Kで十分)」 or B「高くていいから解像度4Kクラスほしい」
ポイント② A「軽量(200g級)HMDがいい」 or B「重くていいからワイヤレス運用したい」

①-A / ②-A 解像度はそこそこで安価がいい、軽さがほしい
Bigscreen Beyond 2
①-A / ②-B 解像度はそこそこで安価がいい、ワイヤレス運用したい
Quest系、Pico系、Steam Frame
①-B / ②-A 4K解像度がほしくて軽さもほしい
MeganeX superlight 8k (アウトサイドイン), Pimax Dream Air (インサイドアウト)
①-B / ②-B 4K解像度がほしい、ワイヤレスで使いたい
Play for Dream MRGalaxy XR

図で整理するとこうなる。

こうして整理すると、実は2026/1現在でもおおよそのHMDのタイプは出揃っており、もはや突然「理想のHMD!」というのが登場する可能性は低い。2025年末に発表されたSteam Frameが、スペック的にあまりインパクトがなかったのもある意味当然。そしてきたるQuest 4も基本的な立ち位置はQuest 3と同じで、図のちょっと左側にズレる程度だ。
よって2027-2028年までQuest 4を待つか、他のHMDを買うかは現時点でも判断できる、というのが自分の意見だ。

そして現状のQuest 3、それに続くQuest 4は、
 ・それなりの解像度(解像度vs価格のコスパがいい)
 ・最安は揺らぐが依然安価な価格(Pico≧Quest>その他)
 ・ワイヤレス運用可能(ただし500gと少し重め)
という点で、依然総合的なバランスでは頭一つ抜けていることが改めて分かる。逆にいえばこの何が不満か?を考えれば、自分が求めているものが分かるだろう。

ともかく根本的な原因が技術的制約にある以上、数年程度でこの背反は解消しない。きっちり割り切るところを選ぶ必要があるだろう。
Quest 4、そしてPhoenix/Puffinが次の時代の扉を開ける2027年まであと1年以上ある。今、はたして自分にとって最適な「賢い買い物」の仕方とはなんだろうか?そういう後悔のない買い物をするために、この怪文書が少しでも参考になったなら幸いだ。

■終わりに

この怪文書の初稿は2024/9。そこから既に1年以上が経っているが、ありがたいことに沢山のアクセスがあるため、定期的に情報のアップデートを続けている。
HMDの進化は日進月歩であり、技術やトレンドや世の中も日々移り変わる。当然、予測はとても難しい。当初はMetaが比較的手堅く、リズミカルな製品展開を続けることを前提に書いたが、それも裏切られっぱなしだ。「賢い買い物を」なんて賢しらに言いながら、結局Play for Dream MRも買ってしまった

ただ、こうして言葉にして追っているからこそ俯瞰して見えてくるものもある。時とともに変わりゆくこの原稿が、誰かの役に立つことを願う。
さて、この予想が当たるか外れるか、分かるのはいつになるだろうか。それを楽しみにつつ、発売から2年経っても(LCDでは)「最新鋭」のQuest3でしばらくは遊び続けようと思う。皆さんもよきVRライフを。

筆者X(Twitter)
https://twitter.com/fleabane_haru


いいなと思ったら応援しよう!