noteの企業戦略2026骨子

オープン社内報です。先日づけでCXO→CSO(最高戦略責任者)になりました。実態としてここ数年は戦略メインでやっていたため、それにあわせてのタイトル変更です。

そんなわけで、パブリックにできる範囲での、noteの基本戦略を再編集してみました。


noteのストラテジー

戦略を一言で

創作が生まれ、届き、報われ、また次の創作につながる循環を設計する。

そして、AIがコンテンツを無限に生み出す時代に、noteは「信頼できる創作」と「人と人の続く関係」が集まる場になる。

私たちの基本戦略は、市場を奪い合うのではなく、クリエイター、読者、企業、メディア、出版社、AI事業者、パートナーと利害を接続し、創作の市場(エコシステム)そのものを大きくしていくことです。


私たちは、何のためにあるか

だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。

note社のミッション

noteのすべての戦略は、この一点に奉仕します。
事業も、数字も、AIも、提携も、組織づくりも、目的はここにあります。

創作をはじめる人を増やす。
創作を続ける人を増やす。
創作が届き、関係が生まれ、収益や機会につながる状態を増やす。

この循環を、クリエイターや社員の個々の頑張りだけに頼らず、仕組みとしてまわしていくことが、noteの役割です。


なぜ、いま戦略が要るか

誰もが発信できる時代になりました。
さらに生成AIによって、文章、画像、音声、動画など、あらゆるコンテンツをつくるハードルは急速に下がっています。

しかし、創作を「はじめる」ことが簡単になっても、続けること、届くこと、信頼されること、収益や機会につながることは、まだ難しいままです。

むしろ、コンテンツが増えれば増えるほど、次の問いが重要になります。

誰がつくったのか。
なぜ信頼できるのか。
どんな文脈で読まれるべきなのか。
その作品は誰との関係を生むのか。
その価値は、どう次の創作につながるのか。

AIがコンテンツを増やす時代は、noteにとって逆風ではありません。
むしろ、信頼できる創作、人の名前で届く表現、長く続く読者との関係の価値が上がる時代です。

だからnoteは、単なる投稿サービスではなく、創作が生まれ、届き、報われ、次の創作につながる循環を設計する会社になります。


どうやって達成するか

そのために、システム全体を一つのサイクルとしてまわします。

作者が集まり、
作品が増え、
読者が集まり、
関係が生まれ、
収益や機会が生まれ、
その反応がまた次の創作を生む。

この創作の循環を、プロダクト、AI、メディア提携、イベント、IP展開、企業発信によって大きくしていきます。

私たちは、個別の機能や事業を足し算するだけでは勝ちません。それぞれの事業が、同じ円の中で役割を持ち、互いに強め合うことで勝ちます。個々の事業の成功ではなく、事業同士の接続と循環が重要です。

C2Cで創作と読者関係が増える。
note proで企業の一次情報と信頼ある発信が増える。
イベントで帰属感と継続理由が生まれる。
メディア提携で作品の出口が広がる。
IP展開で作品の可能性が外の市場へ広がる。
AIでこの循環の速度と精度を上げる。

noteが大きくなるほど、クリエイターが始めやすく、続けやすく、届きやすくなる。
クリエイターが増えるほど、読者、企業、メディア、パートナーにとってのnoteの価値も上がる。

この循環をつくることが、私たちの勝ち方です。


私たちは、市場をどう広げるか

私たちは、創作市場を奪い合うものとは考えません。

出版社、メディア、放送、配信、企業、教育機関、地域、AI事業者、クリエイターコミュニティ。
それぞれが持つ強みを接続すれば、創作が届く出口はもっと増やせます。

noteは、すべてを自社だけで抱え込む会社ではありません。
創作が生まれる場所、読者と関係が生まれる場所、作品が外の市場に広がる場所、企業や社会が信頼ある情報を届ける場所として、さまざまなプレイヤーとつながっていきます。

競合を倒すのではなく、創作の総量を増やす。
市場を囲い込むのではなく、創作が報われる経路を増やす。
その結果として、noteの存在価値も大きくしていきます。


何をやるか

C2C — 創作循環の本丸

C2Cは、noteの本丸です。

だれもが創作をはじめやすく、続けやすく、届きやすく、収益化しやすい状態をつくります。

これまでnoteは、記事販売、サポート、マガジン、メンバーシップなどを通じて、個人が創作で収益を得る道を広げてきました。
これからはさらに、単発の記事販売だけでなく、続く関係を育てることを重視します。

読者が一度買って終わるのではなく、クリエイターの活動を継続的に応援する。クリエイターも、単発のヒットに依存するのではなく、読者との関係を積み上げていく。

この「続く関係」が、創作を長く続ける土台になります。

ただし、継続課金だけに狭く寄せるわけではありません。
単発販売、無料公開、サポート、メンバーシップ、法人スポンサー、外部メディア展開、IP化など、クリエイターごとに合う形は異なります。

noteは、特定の収益モデルにクリエイターを押し込むのではなく、創作の種類や成長段階に応じて、複数の選択肢を持てる場をつくります。


B2B / note pro — 企業の発信を、信頼ある場に接続する

note proは、企業の発信を、届く場所と信頼ごと提供する事業です。

企業は広告だけでなく、自分たちの言葉で、思想、事業、文化、採用、社会への向き合い方を伝える必要が高まっています。
noteは、その一次情報が読者に届き、蓄積され、信頼に変わる場所になります。

企業は単なる顧客ではありません。
場を豊かにする発信者であり、クリエイターや作品を支えるスポンサーであり、社会に新しい問いを届けるパートナーです。

note proの安定収益は、note全体の挑戦を支える基盤にもなります。
C2Cだけでは取りにくい大きな投資、AI活用、メディア提携、IP展開、コミュニティ施策を支える原資になります。

B2Bは、C2Cと別の事業ではありません。
企業の発信が増えることで、読者が増え、信頼ある情報が増え、クリエイターの機会も増える。
その循環の一部として、note proを育てていきます。


イベント — 創作を続ける理由をつくる

創作は、ひとりで始められます。
でも、ひとりだけで続けるのは難しい。

イベントは、創作を続ける理由をつくります。

オンラインの関係を、リアルな出会い、帰属感、熱量、次の行動に変える。
書き手同士が刺激を受ける。
読者がクリエイターの背景を知る。
企業やメディアが新しい才能に出会う。
そこから、次の作品や仕事が生まれる。

イベントは単発の盛り上がりではなく、創作循環の中で、関係を強くする装置です。


メディア提携 — 作品の出口を広げる

noteには、日々多くの作品が生まれています。
しかし、作品の可能性はnoteの中だけで完結しません。

書籍化、映像化、音声化、マンガ化、ゲーム化、講座化、イベント化、企業とのコラボレーション。
作品には、もっと多くの出口があります。

メディア提携は、noteで生まれた作品を外の市場へ広げる役割を担います。

出版社やメディアは、noteにとっては創作の可能性を広げる重要なパートナーです。彼らが持つ編集力、制作力、販売網、ブランド、読者接点と、noteが持つクリエイター基盤、読者反応、データ、コミュニティを接続する。

そうすることで、作品がより遠くへ届き、クリエイターに新しい機会が生まれます。


IP / Tales — 作品の可能性を育て、広げる

IP事業は、noteの中にある作品の可能性を発掘し、育て、外の市場へ届ける役割を担います。

大切なのは、「当たる作品を予言する」ことではありません。
読者の反応、編集の目、パートナーの知見、AIによる発見支援を組み合わせて、作品の可能性をより早く、より広く見つけることです。

noteには、まだ世の中に大きく届いていない作品や才能があります。
その作品を、書籍、映像、マンガ、音声、ゲーム、海外展開など、さまざまな形で広げていく。

IP展開は、noteにとって収益機会であると同時に、クリエイターにとって「創作を続けた先にある可能性」を増やすものです。

ただし、IPは不確実性の高い領域です。
だからこそ、最初から一つの型に固定しません。この分野は固定的な一本足打法をさけ、流動的な調整のできる柔軟な組織構造を目指します。

自社で育てるもの。
出版社や制作会社と組むもの。
企業やブランドとつなぐもの。
海外展開を目指すもの。
AIを使って発見・翻訳・展開を支援するもの。

複数の選択肢を持ちながら、作品ごとに最適な広げ方を探っていきます。


これらを貫くもの:AIネイティブ化

AIは目的ではありません。
AIは、創作の循環を速く、大きく、強くするための基盤です。

私たちはAIを、クリエイターを置き換えるためではなく、クリエイターの創作を拡張し、作品をよりよく届け、note全体の実行速度を高めるために使います。

AIネイティブ化には、少なくとも4つの方向があります。

1. 創作支援AI

書き始める。
構成する。
磨く。
要約する。
翻訳する。
読者に届きやすくする。
継続のヒントを得る。

AIによって、創作のハードルを下げ、続ける負担を軽くします。

ここで大切なのは、AIがクリエイターの個性を消すことではなく、クリエイターが自分の表現に集中できる余白を増やすことです。


2. 流通AI

作品が増えるほど、届ける仕組みが重要になります。

AIを使って、作品と読者、作品と企業、作品とメディア、作品と次の展開機会をよりよく接続します。

検索、推薦、分類、要約、翻訳、外部流通、AIエージェントへの接続。
人が読むための流通だけでなく、AIが情報を探し、整理し、紹介する時代の流通にも対応していきます。

noteは、人にもAIにも見つけられやすい、信頼あるコンテンツの基盤を目指します。


3. 価値化AI

AI時代には、コンテンツの価値の生まれ方が変わります。

人が読む。
AIが参照する。
企業が活用する。
メディアが発見する。
作品が別の形式に展開される。
読者との関係が新しい収益になる。

価値の出口が増えるほど、noteはその可能性を探り、実験し、仕組みにしていく必要があります。

現時点で、クリエイター還元の形を一つに固定することはしません。
還元率、分配方法、利用許諾、提携モデル、AI活用の範囲は、技術、法制度、市場、クリエイターの期待によって変わっていきます。

だから私たちは、最初から硬いルールで選択肢を狭めるのではなく、信頼を損なわないこと、説明可能であること、クリエイターにとって機会が広がることを判断軸にしながら、複数のモデルを試していきます。


4. 業務AI

AIは、プロダクトだけでなく、組織の働き方も変えます。

開発、CS、営業、編集、審査、分析、法務、経理、採用、広報。
あらゆる業務にAIを組み込み、少人数でも大きな挑戦ができる組織にします。

ただ効率化するだけではありません。
人が判断すべきこと、関係をつくること、創造性を発揮することに、より多くの時間を使えるようにします。

AIによって、社員の頑張りを増やすのではなく、社員がより本質的な仕事に集中できる状態をつくります。


AIとデータに対する考え方

AIとデータは、これからのnoteにとって重要な競争力になります。

同時に、ここを固定的に決めすぎると、未来の選択肢を失うリスクもあります。
技術も、法制度も、社会の期待も、パートナーとの関係も、まだ大きく変わっていくからです。

だからnoteは、現時点で過度に細かいルールを固定するのではなく、次の考え方で進めます。

守るべき信頼は守る。
試すべきことは速く試す。
学びながら、必要なルールを更新する。

すべてを禁止から考えるのではなく、すべてを無制限に進めるのでもありません。
創作の場としての信頼を損なう可能性が高いものは慎重に扱い、可能性を広げる実験は積極的に進める。

大切なのは、固定されたルールそのものではなく、判断の質です。

クリエイターにとって機会が広がるか。
読者にとって体験が良くなるか。
パートナーにとって参加する理由があるか。
noteにとって持続可能な事業になるか。
社会に対して説明できるか。

この問いを持ちながら、AIとデータの使い方を進化させていきます。また、確立したノウハウを業界や国と共有し、みんなでグローバルを含めた市場の最大化を目指すべきだと考えます。


絶対に守るもの

クリエイターの信頼。

これがnoteの土台です。
どんな売上も、どんな成長も、これを大きく損なってまで取りにいきません。

短期の売上のために、場の健全性を壊さない。
クリエイターの期待と大きくずれたことをしない。
新しい活用を進めるときは、その意義を説明できるようにする。
価値が生まれたときに、noteだけでなく、クリエイターやパートナーにも機会が広がる設計を考える。
問題が起きたときは、学び、直し、仕組みにする。

迷ったら、短期の利益だけで判断しない。
信頼と成長の両方を増やす道を探します。


何をやらないか

戦略とは、やることを決めるだけではありません。
やらないことを決めることでもあります。

私たちは、短期的なPVのためだけに、場の質を下げることはしません。

クリエイターの継続を犠牲にして、短期売上だけを最大化することはしません。

企業やパートナーの都合だけで、読者体験や創作の多様性を大きく損なうことはしません。

AIを、単なるコスト削減やコンテンツ量産のためだけに使うことはしません。

ただし、「やらないこと」も、未来の可能性を狭めるためのものではありません。
新しい技術、新しい収益モデル、新しい提携、新しい流通の形は、積極的に試します。

大切なのは、禁止リストを増やすことではなく、noteのミッションに照らして、やるべき実験とやるべきでない実験を見極めることです。


どう測るか

クリエイターのために測るべきKPIは、創作者と読者の継続率。

企業体として測るべきKPIは、企業価値フリーキャッシュフローです。これは、この2つが、noteが持続的に挑戦し続けるための自力を示す数字だからです。

企業価値が高まれば、より大きな挑戦ができます。
フリーキャッシュフローが生まれれば、外部環境に左右されにくくなります。
自力があれば、短期的な圧力に流されず、クリエイターの場を長く守ることができます。

ただし、ファイナンス上の数字だけを追えば、創作の場は歪みます。

だから私たちは、成長指標には必ずペアとなる指標を持ちます。

売上を見るなら、クリエイターやパートナーに生まれた機会も見る。
PVを見るなら、読了率や継続率も見る。
投稿数を見るなら、継続して創作する人の数も見る。
AI活用を見るなら、体験向上、流通改善、業務効率、信頼への影響も見る。
企業利用を見るなら、読者にとって価値ある一次情報が増えているかも見る。
IP展開を見るなら、短期収益だけでなく、作品とクリエイターの可能性が広がっているかも見る。

大切なのは、一つの数字に組織を従わせることではありません。
数字を通じて、循環が健全に大きくなっているかを見続けることです。


指標の考え方

noteが見るべき指標は、大きく4つに分かれます。

1. 創作の循環を見る指標

継続して投稿するクリエイターは増えているか。
読者との関係は増えているか。
無料・有料を問わず、創作が次の創作につながっているか。
クリエイターがnoteを使い続ける理由は増えているか。

2. 事業の成長を見る指標

C2Cの流通額。
継続課金の成長。
note proの成長。
イベント参加やコミュニティの広がり。
メディア提携から生まれる機会。
IP展開の数と質。
AIによる流通・制作・業務改善の成果。

3. 財務の持続性を見る指標

売上。
粗利。
営業利益。
フリーキャッシュフロー。
企業価値。

4. 歪みを検知する指標

解約率。
読了率。
継続率。
通報やトラブル。
クリエイターの不満。
読者体験の悪化。
社員の過負荷。
短期施策への依存。

この4つを組み合わせることで、成長しながら、大切なものを壊さない経営をします。


私たちの働き方

クリエイターの視点で考える

私たちは、機能や数字の前に、クリエイターの現実から考えます。

どうすれば始めやすいか。
どうすれば続けやすいか。
どうすれば届きやすいか。
どうすれば収益や機会につながるか。
どうすれば孤独にならずに創作を続けられるか。

クリエイターの視点で考えることは、優しさだけではありません。
noteの競争力そのものです。


速く試し、効いたものは仕組みにする

最初から完璧な答えはありません。

小さく試す。
数字と声を見る。
効いたものを伸ばす。
効かなかったものから学ぶ。
再現できるものは仕組みにする。

属人的な頑張りではなく、続けるほど強くなる仕組みに変えていく。
これがnoteの働き方です。


個人の頑張りに頼りすぎない

創作の場を長く続けるためには、社員自身も長く走れる必要があります。

気合いで乗り切る。
一部の人の頑張りに頼る。
毎回ゼロから考える。
同じ問題を何度も解く。

そうした働き方では、創作の循環を大きくすることはできません。

だから私たちは、プロセスを整え、AIを使い、ナレッジを共有し、再利用できる仕組みをつくります。

社員が疲弊するほど売上が伸びる会社ではなく、仕組みが強くなるほど挑戦できる会社にします。


最後に

noteが目指すのは、ただ大きなプラットフォームになることではありません。

創作をはじめる人が増える。
創作を続ける人が増える。
読者との関係が増える。
企業やメディアとの接点が増える。
作品が外の市場へ広がる。
AIによって、創作の可能性がさらに広がる。
その結果として、noteの事業も強くなる。

この順番を間違えないことが大切です。

私たちは、クリエイターの信頼を土台に、創作の循環を設計し、その市場を大きくしていきます。

AI時代に、信頼できる創作が生まれ、届き、報われ、続いていく場所へ。
noteは、その中心的な結節点にしていきたいと思います。



具体的な各チーム向けのミッションやアクション、判断基準などは、これからStrategy Bookを作成します。もうちょっとお待ちください。


いいなと思ったら応援しよう!

深津 貴之 (fladdict) いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。