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短編小説「しあわせの行方」

 新幹線が駅のホームに滑り込んできた。ホームにびゅっと冷たい風が走り、体を覆う。
人々の足音や声がその重い無機質な物体になだれ込むと、駅のホームはとたんに静かになる。こうやって新幹線を眺めると人々の表情も様々で泣いていたり、笑っていたり、上京したてだろうかどこか困った表情を浮かべていたりする。
 人の表情を観察している間に、次の僕の乗る新幹線がやってきた。東北の田舎で育った僕は、東京の生活についていけず精神を壊し、上京から5年で田舎に帰ることになった。両親には、ほら見たことかと呆れられ、数少ない地元に残る友人たちには笑われた。犬の太郎ですら、お前もう帰ってきたのか?と目を丸くするに違いない。

 東京の騒々しいい音、匂い、人の歩く速度、人当たり。総てが僕に合わなかった。(決して否定しているわけではないことをわかってほしい。)合わなかっただけだ。
 地元の駅に降り立つと親友が出口で待っていてくれた。
「お帰り。あれ?お前5年間東京に行っていたんだっけ?」
憎たらしい嫌味を言ってくれる。
「行ってませんね。僕はどこにも」
親友は、爆笑し手に持っていたレモンスカッシュを僕に渡す。
「最近はやっているらしいんだよ。すっぱくて爽やかでいいよな」
一口、口に含むと確かに口の中が途端に爽やかになった。
「少し歩こう。こっちもやっと桜が咲いたんだよ」
 東京はとっくに散っていた。近くの公園へ2人で歩く。

 昔は、学校帰りにこうやって2人で公園へやってきて夜まで語り合った。学生らしくゲーセンやカラオケに行くでもない公園に。
「俺、結婚するんだよ。岬と。」
「えっ?そうなの?よかったじゃん。おめでとう!」
「ありがとう。でもな・・・・」
結婚の報告にしては、表情がさえない。
「どうしたんだよ?めでたいだろ。」
「岬余命半年なんだ」
「え???」
僕の頭の中には、ありとあらゆる映画が蘇る。
「それでも、結婚したいんだ。あいつの為にじゃなくて、俺があいつを愛しているから結婚したいんだ。」
僕は、言葉に詰まる。親友の気持ちもわかる。でも・・・果たしてお互いそれが幸せに繋がるのか。でも、これは当事者しかわからない。
「ごめんな。僕が5年離れている間にそんなことがあったのか。ごめん。僕の話ばかりで」
いつもそう。僕が精神を壊していたから、そんなつらい悩みもいつも言い出せなかったに違いない。
「もう2人の答えはでているんだ。結婚式に来てくれよな」
「必ず行くよ。そしてもう一人で抱え込むな。僕はいつでもここにいるよ」
親友は、少し笑って、少し泣く。

 これからは、幸せの倍、きっと困難が訪れる。幸せの行方は、本人たちしかわからない。

 桜のはなびらがゆらゆら降って、親友のレモンソーダの上に乗る。
「がんばれ!!!がんばれよ」

というように。

今回、こちらに参加させていただきました!
「#せりふ三題噺」「#新幹線花びらレモンスカッシュ」

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