見出し画像

『バリウムを飲む』古民家暮らしの絵本画家【エッセイ】

自己紹介

菅原暢子(すがわら ようこ)
1976年 宮城県生まれ
築70年の古民家に家族7人で暮らしています。会社員
の傍ら、絵本画家・イラストレーターとしても活動中。これまでの様々な体験をもとにエッセイを書いています。

『バリウムを飲む』

先日、5年ぶりに健康診断を受けた。
なぜ5年も受けなかったのか。そのうち痩せてから受けようと思っていたからだ。5年経っても痩せなかったので諦めて予約した。

とりあえず「基本コース」というのを予約することにする。「胃透視検査」を付けても同じ値段だったので、お得だと思いそれも頼んだ。

朝、何も食べずに病院へ向かう。もともと朝はコーヒーしか飲まないので、別に空腹は感じない。毎朝コーヒーしか飲まないのにどうして痩せないのか。不思議である。

病院の更衣室で検査着に着替える。ロッカーの鍵を手首に付けた。体重を測る時は忘れずにこの鍵を外さなくてはならない。
これだけでもきっと5kgはある。

「身長を測ります。背中をぴったりくっつけて、顎を引いてください」
身長は少し縮んでいた。

しまった!今ので体重も測定されたらしい。
身長計の顔をしていたから油断した。


血圧。
2回測って、調子の良い方を出す。

採血。
「アルコール消毒しても大丈夫ですか?」
と聞かれて、
「いえ、アルコールはちょっと…」
と言うのに憧れている。
散々経口摂取しているくせに、何を今さらである。

聴力検査。
「ピー」
ボタンを押す。
「ピー」
押す。
「…」

聞こえているようないないような、よく分からないが、とりあえず押す。

視力検査。
右、左、上、下、は分かるが、「斜め」が入ってきたとたん言い間違える。

胸部レントゲン。
「髪の毛結んでください。金具が付いていませんか?顎ここに乗せてください。あ、腕はこう。
あ、もうちょっと…はい、そのまま」
バタンとドアがしまってレントゲン技師さんが消えたと思ったら、
「はい、終わりでーす」
って、レントゲンは緊張するわりに撮影が一瞬である。

胃透視検査。
「バリウム飲むの初めてですか?」
「いえ、20年くらい前に一度だけ」
「じゃあ、人生2回目のバリウムだ。頑張ろう!」
何だか体育会系の元気な検査技師さんだ。

「これ、発泡剤ね。これで胃を膨らましま〜す。
一気に口に入れてください。ゲップは我慢だ。
それいけ〜」
テンションが高い。顆粒の発泡剤を口に入れたら、「ショワワワワーーーッ」と一気に膨張した。
「はい、バリウムを一口飲んで、ごっくん!」
飲めない。一口ではとても発泡剤を飲み込めない。
口に残っている分はどうすればいいのか。

「はい、それではバリウムをもう一口いってみようか。ごっくん!」
残った発泡剤を一緒に飲み込む。
どろりとしたバリウムが食道を逆流してくる。
降参だ。今すぐこの検査を中止して頂きたい。

「上手ですよ〜。じゃあ、残りのバリウムを全部飲みましょう!それいけ〜」
どうしてそうテンションが高いのか。
「はい、ごっくん、ごっくん♪」
検査技師さんがリズミカルに急かす。
言いたいことはあるが、喋ると吐いてしまうので逆流してくるバリウムを、バリウムで押し返す。白目になりながら全部飲みきった。

「はい、台が動きま〜す」
ちょっと待った。
今、動かされるのは無理なんだが。
「私の方を向いて、身体を斜めにしてください。そのまま身体をを一回転させますよ。
はい、ぐるん!」
回る?え?回れとな?
私は白目のまま一回転する。

「手すりにしっかりつかまっていてくださいね。台が動きま〜す」

吐く。このまま検査を続けたら絶対に吐く。

「はい、苦しいね。苦しいよね。もう少しだ。頑張れ頑張れ♪」

そこからの記憶はほとんどない。
八木山ベニーランドのパイラットくらい台が縦横に傾き、天の声のように聞こえてくる検査技師さんの指示に私は無心で従った。

「最後に胃の辺りを少〜し押しますね」
ハンマーのような機械にグッと腹を押される。
バリウムが食道を這い上がり、喉元までやってきた。もはやこれまでか。

「大変お疲れ様でした。よく頑張りましたね」

白目。


検査が終わると看護師さんに下剤を渡された。
「今ここで2錠飲んでください」
「あの…これから子どもの授業参観に行くんですけど、下剤飲んでも大丈夫でしょうか」
「あら、でもなるべく早くバリウムを排出しないといけないから、トイレの近くで参観してください」

バリウムを排出しないとどうなるのだろう。
ChatGPTに聞いてみる。

「腸閉塞になったり、腸に穴があくこともあるよ」

恐ろしい。病気になりたくないから検査をしたのに、そんなリスクがあったとは。
言われた通りすぐに下剤を2錠飲んだ。
授業参観はトイレの近くにいれば良い。

最後は医師の問診だった。
「どこか、身体の具合が悪いところはありますか?」
「いいえ、特にありません」と答える。

5年ぶりに健康診断を受けた。どこも具合の悪いところはないが、血圧やコレステロールが気になってくるお年頃ではある。
子どもにもまだまだ手がかかるし、健康に無頓着でいられた若い頃とは違う。
来年もまたちゃんと健康診断を受けに来よう。
食事にも気をつけて、少しは運動もしよう。



ただ、バリウムだけはもう勘弁して欲しい。


今後、胃の調子が悪くなった時はバリウムではなく
鎮静剤を使用の上、ぜひ胃カメラ検査をお願いしたい。

ここまで読んで頂きありがとうございます。
またのお越しをお待ちしております。

いいなと思ったら応援しよう!