【とある二人のラヴソング】かたつむりムービング
「かたつむりムービング」
ん? と彼女が振り向く。
日差しに照らされ、キラキラと。
「僕は不器用だから、分速6センチの“好き”を、毎秒飛ばしてる」
普段、笑顔が基本の形の彼女の顔が、眉毛を上げて少し崩れる。
「なにそれ、詩人?」
恥ずかしくなり、下を見る。
芝生は白くなりかけている。
「えい!」
彼女が僕に飛びついてきた。
そのまま手足を挟まれる。
女の子の力だ! 抜け出すのは……
無理だった。
バレーボール選手の中では小柄とはいえど、
相手は全国に名を知られるアスリートなのだ。
全く動けない。
降参しよう。
「なに?」
「私の“好き”は光速だ! 拘束だけに!」
逆光でどんな顔してるかわからない。
「……なにそれ」
「すべった?」
笑いが込み上げる。
かたつむりの“好き”を待つ人じゃない。
きっといつもの笑顔。
いつでも君は、僕の速度を飛び越えるんだ。
