【奇跡の園芸】ケチでセコい素人の私が、猛暑の浜松で植物の「命のバグ」を起こした話
園芸に関しては完全に素人の私である。
にもかかわらず、5月にアップしたシクラメンのコラムが未だに読まれ続けている。ありがたい話だ。あの時は「春なのに狂い咲きした我が家のシクラメン」について書いた。だが、物語はそこで終わらなかった。
今、このクソ暑い真夏の真っ只中、我が家の玄関先では常識ではあり得ない大事件が起き続けている。
今日話すのは、植物の専門書に書いてあるような「正しい育て方」ではない。ただひたすらにケチで、セコくて、諦めが悪かった素人の私と、それに命がけで応えてくれた植物たちの泥臭い生命力のドキュメンタリーだ。
常識その①:真夏に咲くわけがない「ガーデンシクラメン」
昨年の秋、私は赤、白、紫の3鉢のガーデンシクラメンを買ってきた。少し大きな鉢に植え替えたら、冬から春にかけて本当に綺麗に咲いてくれた。花が終わった時、普通の人は「今年もありがとう」で廃棄するのが一般的だ。
だが、ここで私の「セコい神様」が耳元で囁いた。「おい、まだ葉っぱが緑色してるぞ。捨てるの、もったいなくないか?」と。
私は廃棄をやめ、なんとなく毎朝水をやり続けた。すると5月のコラムの通り、彼らは秋や冬以上の華やかさで、再び爆発するように花を咲かせた。
「まぁ、春だからそんなこともあるか」と思っていた。しかし、本番はここからだった。
今、日本列島は猛暑だ。ここ静岡県浜松市三ヶ日町も、とんでもない暑さである。人間ですらへばるこの過酷な真夏の中、我が家の玄関先の軒下で、あの赤、白、紫のシクラメンたちは、今もなお色鮮やかに、狂ったように咲き続けている。
シクラメンといえば「冬の花」だ。本来なら夏は葉を枯らして休眠するか、暑さで腐って枯れるはずである。
調べてみると、春以降もセコく水をやり続けたことで、植物が「あれ?私たち、眠らなくていいんじゃないか?」と勘違いして、非休眠のスイッチが入ったらしい。そこに浜松の温暖な気候と、玄関の軒下という日陰・風通しの環境が、奇跡的な避暑地になったということだ。
植物は、与えられた環境の中で「生き残るためのベスト」を尽くす。衣替えもせずに夏を全力疾走で駆け抜けていた。
常識その②:冬に枯れ枝になった「サンパラソル」
我が家の奇跡はシクラメンだけではない。もう一つの主役がいる。
昨年初夏に買ったピンクの花、サンパラソル。最近までマンデビラという本名だとは知らなかった。園芸店では「一年草扱い」として売られていることが多いこの花。案の定、冬になると日本の寒さに耐えかねて、見るも無惨なカサカサの枯れ枝になった。普通ならゴミ箱行きだ。
だが、ここでも私のセコさが炸裂する。「見た目は枯れ木みたいだけど……土の中の根っこは生きてるんじゃないか?」
そこから私は、真冬の間も枯れ木に向かって毎朝毎朝、水をやり続けた。はたから見れば、ただの怪しい奴である。家族には「何に水やってるの?」と呆れられた。
ところがである。今年の春、奇跡が起きた。あのカサカサだった枯れ枝から、小さな緑の芽がピョコッと顔を出したのだ。
そこからの爆発力は凄まじかった。一年かけて育った根が、新苗とは比べものにならないほど強固に張り巡らされ「2年目の根っこ」として一気に力を噴き上げたのだろう。現在、サンパラソルは昨年の倍以上の花を咲かせて、玄関先をピンク色に染め上げている。
完璧じゃなくていい。セコくていい。生きていれば、大逆転がある。
私は園芸のプロではない。剪定の技術も、肥料の配合も知らない素人だ。ただ「もったいない」というセコい気持ちだけで、毎朝水を注いできただけである。
しかし植物たちは教えてくれた。
「どんなに常識外れだと言われても、どんなに一度は枯れ枝のようにボロボロになっても、根っこが生きていて、水さえ繋がっていれば、いつか倍以上の花を咲かせる季節が来る」ということを。
今、心が折れそうな奴。周りの目が気になって自分を責めている奴。「もう自分なんて枯れてしまった」と思っている奴。いいじゃないか、完璧じゃなくて。教科書通りに生きられなくたっていい。
私のセコい水やりが起こしたのは、植物の「命のバグ」だったのかもしれない。だが、人間にも同じことは起きる。誰も期待していない季節に花を咲かせることがある。夏のシクラメンが、冬のサンパラソルが、それを証明している。
我が家の玄関先は、今日も常識外れにカラフルだ。綺麗に整えられた庭じゃない。素人のケチが生んだ、生命力の爆発だ。
もし今、「もう終わったかな」と思っている人がいたら、一度だけ我が家の玄関先を見に来てほしい。夏にシクラメンが咲き、冬に枯れ枝だったサンパラソルが笑っている。根っこは、人が思っているよりずっとしぶとい。私は、今年の夏、そのことを植物たちに教わった。


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