平成漫画探訪~HELLSING
吸血鬼でありながら人間に味方(臣従)し、吸血鬼を狩るスゴ腕のハンター。
「不死者(ノスフェラトゥ)」、「死なずの君(ノーライフキング)」等様々なあだ名を持つ。
傲慢不遜で飄々とした性格。
下された命令を邪魔する存在やこちらに喧嘩を売ってきた存在、主(ヘルシング卿)を侮辱した者はノリノリで打ち倒しにかかるかなりの戦争狂。
主人公であるがどう見ても「ラスボス」であり、敵のほうがラスボスに挑む主人公に見えることが多々ある。
アーカードは化け物には一切の容赦をしないが、人間、特に「あきらめを踏破した者の誇り高さ」には敬意を表する。
「人間の素晴らしさ」を誰よりも称賛し、人間から打倒されることを密かに望む。
だが、敵が人を辞めてしまった時、失望して悲哀の顔に「不老不死」の真実が隠されている。
「人間は弱いから美しい」
「素敵だ。やはり人間は、素晴らしい」
化け物を倒すのはいつだって人間だ。
人間でなくてはいけないんだ!
TVアニメは野沢那智(作者がナチ好き、ということで”那智”繋がりで決定)
OVAアニメの声優は洋画の吹き替えで有名な中田譲治。
製作陣の本気が伺える声優チョイス。
なお「ブラックラグーン」では第一話、旭日重工業の主人公の上司(重役)に声を中てる。
ニコニコ動画では声を聞いた瞬間、調教済の古参兵からは「アーカードの旦那やないけ!」と一斉にコメントが流れる。
作者は平野耕太。
日本の漫画家。
ファンからの愛称は「ヒラコー」。
ページのほとんどが(物理的に)真っ黒に染まっていることもしばしば。
極端な構図やポージング、デフォルメされた人物画などが特徴。
なお、軍服の作画には苦労するらしく、
「あんな描きにくい奴ら死ねばいいんですよ!」
「ナチはヘドが出るほど描き過ぎた」と語っている。
奇抜で大げさな(演技的な)台詞回しが印象的で、とりわけ一話をほぼ丸々使った度肝を抜く少佐の演説シーン。
シリアスな展開でも不意打ちのようにギャグシーンが挿入される。
どんな時でも笑いは忘れないらしい。
次回作に「ドリフターズ」がある。
独特の台詞や個性的なキャラクター、『ジョジョの奇妙な冒険』をリスペクトした作品として人気を呼び、テレビアニメ(但し黒歴史である)からOVA化がなされた。
ラスボスの様な場面と圧倒的強さを持ちつつも人間に憧れ、敗北することを望む主人公
ナチスの極秘部署が吸血鬼を武装化して作者の私怨(※1)の下、イギリスロンドンで大量虐殺を楽しむ。 演奏はワルシャワフィルハーモニックオーケストラ
プロテスタントに敵意や憎悪を持つバチカン(※2)の特務機関がそれに乗じてさらに虐殺していく
例外はあれど基本的に「人間賛歌」を悪役(主人公)の観点で描いた作品
(※1)作者が「ロンドン旅行で散々な目に遭った」ことへの“憂さ晴らし”だった。 視聴したイギリス人は大爆笑、ドイツ人は大激怒。
(※2)この作品がバチカンに知られ、「神の教えをたっぷりと教授しませう」とバチカン本国から招待状を贈られるも辞退している。
実はアメリカでも翻訳されて出版されていたりする。
しかもナチだのなんだのもそのまんまで少佐の英語がドイツ訛りになる凝りよう。
更にはドイツでも出版されているが、一部の改変を除き、ほとんど完全独訳となっている。
本屋が「レジに隠して売る」っていうくらいなのだからそのヤバさが窺える。
登場人物は男女を問わず喫煙者・手袋・眼鏡を着用しているキャラクターが多い。
・テレビアニメ
”原作者を激怒させたTVアニメ”
原作者も1話で期待していたが、3話で不満を露わにして罵詈雑言の感想を吐きながら抗議(「DVDを売った」というエピソードはあまりにも有名)、後にOVAが作られる布石となった。
・OVA
テレビアニメとは打って変わって、「原作そのまま」をモットーに製作された。これには原作者も満足したらしい。
そして”特殊ED”が2つある。
1.「スタイリッシュ国際問題」
2.ペンウッド卿戦死時
「スタイリッシュ国際問題」という特殊ED。
BGMのナチス・ドイツの軍歌「イングランドの歌(英国征討歌)」
これはイギリスに攻めるため、軍艦に乗って出撃するという内容の歌詞で、最後の大隊とイスカリオテ(バチカン)がイギリス(ロンドン)をメチャクチャにする本作にはある意味お似合いの曲ともいえる。
ヒラコーはHELLSINGの取材のためロンドンに赴き、ロンドンではアジア人ということで馬鹿にされ、ホテルのサービスも悪く、オマケに露店でも偽ブランド品をつかまされるなど散々な目に遭った。
これにキレたヒラコーは、「作中でロンドンを跡形もなく破壊する」ことを決意。
エンディングでも破壊された観覧車に乗り、高い所からロンドンを見て「どこからどんな風に破壊してやろうか考えた」という。
その結果がこの内容という訳である。
この映像を見たイギリス人は大爆笑し、逆にドイツ人がブチ切れた。
ワルシャワ交響楽団は「ポーランド」にあり、WWⅡではナチスドイツが最初に侵攻した国でもある。
加えて、エンディングのBGMがかかる前にスタッフロールが爆速で繰り出されることもネタにされており、「エンディングがやばすぎてスタッフロールが逃げた」とか言われている。
ここからは作品内の名台詞を紹介しよう。
1.『見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)』
インテグラお嬢様の大事な部分を隠すいちじくの葉。
私は命令を下したぞ 何も変わらない!!
「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)」!!
「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)」だ!!!
アーカード曰く「またぐらがいきり立つ!!」らしい。
「恐れるべきは死ではなく、生を無駄にすることだ」
「信念こそが人を真に強くする」
「守るべきものがあるとき、人は本当の力を発揮する」
2.『少佐殿!少佐!代行!代行殿!大隊指揮官殿!』
俺も大隊に参加して、叫びたい!
3.『彼は無能だ。だが、彼は ”男の中の男”だ』
古来からの親友(ペンウッド卿)のかたき討ちを決意する、ジョンブルの気概がいい。
4.『インテグラ私は駄目な男だ。無能だ。臆病者だ。 自分でも何故こんな地位にいるかわからん程駄目な男だ。 生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも当然だ。 自分で何もつかもうとしてこなかった。 いつも人から与えられた地位と仕事(つとめ)をやってきた。 だから、せ、せめて仕事は、この仕事は全うしなきゃならんと思う…んだが…。』
作中もっとも”人間らしい”キャラクター、ペンウッド卿の最期の伝言。
この通信が届いているかわからない
しかし誰かに届いていると信じて送信する
もうすぐここは陥落する
もうすぐそこまで化け物たちがドアの向こうに
すぐそこまで来ている
本施設よりこの通信を聞く『人間達』に最後の命令を送る
抵抗し 義務を果たせ!
本人は自分が家柄だけでこの地位に就いてしまった、と自虐するが防衛本部の部下たちが誰一人職務を放棄せず、人として最期の抵抗をする作中でも1.2.を争う「人間賛歌」の名シーン(もう一つはアンデルセン神父との戦闘中)
そして「笑顔の絶えない職場」のシーンでもある。
このセリフをいう時のBGMが、また切ないんだな…毎回見ると泪がでちゃう。
そしてこの時の特殊EDはワルシャワフィルハーモニックオーケストラの荘厳な曲が一層物語に深みを与える。
この作品には『笑顔の絶えない職場』が2種類登場する。
1つは吸血鬼化したナチの古参兵(最後の大隊1000人の吸血鬼と1人の人間)
2つ目はこのイギリス国防本部ペンウッド卿の部下(人間)たち。
『吸血鬼化したナチどもを、バッタバッタと薙ぎ倒す!』
後の『英国無双』である。
あなたのおじい様は──
迫り来るナチ兵共をちぎっては投げちぎっては投げ
まさに英国無双といった有様で近づく敵を片っ端から真っ二つにして
最終的に全身に爆弾をくくりつけて敵の空中戦艦全艦ごと吹き飛びました
彼こそは英国の守護神です。
自分の左目の傷もその時の必殺剣のまきぞえです。
5.『諸君 私は戦争が好きだ』
どこまでも人間であることにこだわり続けた、“「人間」という怪物”を体現した人物といえよう。
その圧倒的存在感、先の演説、記憶に残る名言から、作中でも屈指の人気を誇る。
「知らないのか?デブは、一食抜いただけで餓死するんだ。」
「この私が言うんだから間違いないぞ?」
★原作ではSS少佐の演説を「まる一話分費やす」という狂気のシーンがある。
”少佐”演じる飛田展男氏は、この演説の収録に台本ではなく、原作漫画を持ちこみ、早朝トップバッターで超長台詞を一発撮りでOKが出た逸話を持つ。
これが契機になるのか「幼女戦記」のドクトルの声優にもなる。
以降「マッドサイエンティスト」役が相応しくなる。
諸君 私は戦争が大好きだ
殲滅戦が好きだ
電撃戦が好きだ
打撃戦が好きだ
防衛戦が好きだ
包囲戦が好きだ
突破戦が好きだ
退却戦が好きだ
掃討戦が好きだ
撤退戦が好きだ
平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で
この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ
戦列をならべた砲兵の一斉発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた敵兵が効力射でばらばらになった時など心がおどる
戦車兵の操るティーゲルの88mmが敵戦車を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった
銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の新兵が既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える
敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ捕虜達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ
哀れな抵抗者達が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを80cm列車砲の4.8t榴爆弾が都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える
露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった村々が蹂躙され女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ
英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
英米攻撃機に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
諸君 私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる
諸君 私に付き従う大隊戦友諸君
君達は一体何を望んでいる?
更なる戦争を望むか?
情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?
『戦争(クリーク)! 戦争(クリーク)! 戦争(クリーク)!』
よろしい ならば戦争(クリーク)だ
我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
だがこの暗い闇の底で半世紀もの間堪え続けてきた我々にただの戦争ではもはや足りない!!
大戦争を!!
一心不乱の大戦争を!!
我らはわずかに一個大隊 千人に満たぬ敗残兵に過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の軍集団となる
我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
連中に恐怖の味を思い出させてやる
連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる
一千人の吸血鬼の戦闘団で世界を燃やし尽くしてやる
「最後の大隊大隊指揮官より全空中艦隊へ」
目標英国本土ロンドン首都上空!!
第二次ゼーレヴェー作戦 状況を開始せよ!
この演説は何度聴いても声優の凄みを実感せずにいられない(中の人はカミーユや丸尾君の声で有名)
冒頭の演説は「チョビ髭おじさん」ではなく宣伝相「ゲッペルスの肉声」を使用。
★このシーン、市街地に武装親衛隊が降下時に流れるSCHAFTの「Broken English」は新規録音。
俺も武装親衛隊兵士として飛行船からカタパルト発艦してえ。
声優の凄さを証明する逸話である。
なお主人公の声優を筆頭に”耳が妊娠する”レベルの声優(洋画吹き替えで有名)を揃えているのも特徴。
〇中田譲治(アーカードの旦那)
〇榊原良子(ヘルシング卿)
〇広瀬正志(ペンウッド卿)
〇少佐(飛田展男) ※「幼女戦記」でもMAD役で登場
〇バレンタイン兄弟
・子安武人(ルーク)
・高木渉(ヤン)
〇トバルカイン・アルハンブラ(大塚芳忠)
もう長いので名前だけ玄田哲章、若本規夫、田中秀幸、速水奨、平田広明、坂本真綾…特に”魔弾の射手”のラストシーンは瞳を閉じて「音声だけ聞くと18禁なのか?!」と間違える。
まさしく「またぐらがいきり立つ!!」声優ばかり起用されている。
自分が何故この作品を好むのか?
表面的な漫画的な面白さ・格好良さだけでなく、作者の哲学や精神性、繊細な感性が作中のセリフに表出している、その一つ一つに自分の魂が共鳴してしまう。
作者はトンデモナイ癖と嗜好を持つが、「一体なぜこんな名言を紡ぎだせるのか?」と驚愕してしまう。
白×黒の作画に対し、かなり”ふるい落とされる作品”ではあるが、文章(台詞)だけに注視して読むと作者は、画力以上に文章表現に秀でており、文筆家としても一流なのかもしれない。
ただその照れ隠しがギャグで巧みに覆い隠されている。
作者は実は主人公アーカードと同様「ガラスのハート」を持つ、繊細な感性(感受性)の持ち主なのかも。
よく自身のSNSでも誹謗中傷する者のコメントをスルーできない点がそれを良く表している。
なお、健康を損ねたのか? 一時期手術入院して執筆中断している。
廃棄物軍に潰走した島津豊久と織田信長の続きが読みたいものだ。
