「機嫌がいい人」が、なぜか仕事も人間関係もすべて上手くいってしまう理由。
「あ、この人、いま私の話に退屈してるな」 「口では『大丈夫』って言ってるけど、本当はかなり怒ってるかも」
人の心が手に取るように読めたらいいのに。そう思ったことはありませんか?
かつての私は、まさに「他人の顔色メーター」を常に限界まで振り切らせているような人間でした。クライアントの機嫌、上司のちょっとしたため息、同僚のそっけない返事。相手の心を読みたくて、嫌われたくなくて、必死に相手を観察していました。
でも、必死になればなるほど、なぜか人間関係はギクシャクし、大切な商談で的外れな提案をして失注することもしばしば。
「どうしてこんなに考えているのに、人の心がわからないんだろう?」
そんな私が、ある心理学の研究と、自分自身の「ある大失敗」をきっかけに、180度マインドを変えることになりました。結論から言うと、人の心を読みたいのなら、テクニックに走る前に「まず自分が徹底的に上機嫌でいること」、これがすべてだったのです。
どん底の時にやらかした、ある大失敗
あれは何年か前の冬のこと。プライベートでひどく落ち込む出来事があり、私のメンタルは文字通り「どん底」でした。視野は狭くなり、心の中はどんよりとした重い雲で覆われている状態。
そんな中、私は会社の社運をかけた重要なクライアントとのミーティングに臨まなければなりませんでした。
当時の私は、「公私混同してはいけない。プロとして、相手のニーズをしっかり読み取らなければ」と、必死に相手の顔や声に集中しようとしました。しかし、結果は惨敗。
相手の「うーん、悪くはないんだけどね」という言葉の裏にあるニュアンスを完全に読み違え、押し売りのような提案を続けてしまったのです。後から先輩に「あの時の先方、明らかに困惑した表情をしてたぞ。なんで気づかなかったんだ?」と言われてハッとしました。
私は相手を凝視していたはずなのに、その「微妙な表情の変化」がまったく目に入っていなかったのです。
後から知って驚いたのですが、ハーバード大学のナリニ・アンバディという心理学者が、これに関する面白い実験を行っています。
学生を3つのグループに分け、それぞれ異なる映画を10分間見せて気分を操作した後に、「ビデオに映る先生の教え方のうまさ(評価)」を推測させるという実験です。
ハッピー条件:コメディ映画を見る
悲しみ条件:涙を誘う感動映画を見る
比較条件:自然のドキュメンタリー映画を見る
その結果、コメディ映画を見て「ハッピーな気分」になった学生ほど、先生の能力を正しく見抜くことができたそうです。逆に、一番見抜けなかったのは「悲しみ条件」の学生たちでした。
人間は、ウキウキして気分が良いときには視野が大きく広がります。だからこそ、相手の微細な変化や、細かい部分にまで自然と目が向くようになります。 逆に、私がやらかした時のように、落ち込んでいる時は物理的にも心理的にも視野が狭くなります。悲しい時に道端の小さな段差に気づかずにつまずいてしまうように、相手の心が発している「サイン」を完全に見落としてしまうのです。
「心が読めないのは、私の観察力が足りないからじゃない。私の機嫌が最悪だったからだ」
この事実に気づいた時、目の前がパッと明るくなったような衝撃を受けました。

「声を聴く」より「顔を見る」
それからの私は、大切な仕事の前には意識的に「自分の機嫌を取る」ための準備を始めました。
大好きなお気に入りのカフェで奮発して美味しいラテを飲む。人生で最高に楽しかった旅行の思い出をスマホの写真で見返す。お気に入りのアップテンポな曲を聴く。
そうして「ハッピーな状態」を作ってから人と会うようにすると、不思議なほど相手のことがよく見えるようになりました。「あ、今一瞬、眉がピクッと動いたな」「目が笑っていないな」という、相手の感情の機微が、勉強もしていないのに感覚的に飛び込んでくるようになったのです。
そして、もう一つ意識したのが「相手の顔をしっかり見つめる」ということでした。
スウェーデンのウプサラ大学のパトリク・ジャスリンらの研究によると、声の手がかりから感情を識別できる正答率が54%〜70%であるのに対し、顔の表情からの正答率は60%〜95%と、圧倒的に高いことが分かっています。
人の心は、声よりも、言葉よりも、何よりも「顔」にすべて出ます。 「顔は心の鏡」ということわざは、単なる綺麗事ではなく、科学的な事実だったのです。

相手の顔を見つめることで起きた、一石二鳥の奇跡
ただ、相手の顔をしっかり見るようにしたことで、思わぬ「おまけの効果」がありました。それが、人間関係の劇的な改善です。
相手の表情から感情を読み取ろうと顔を見つめていると、自然と「アイコンタクト」の回数が増えます。 実は、人間は「自分の顔をしっかり見つめてくれる人」に対して、無条件で好意を抱きやすいという性質を持っています。
そっぽを向かれたり、スマホを見ながら話されたりすると、「自分に興味がないんだな」と悲しくなりますよね。その逆で、自分の機嫌が良い状態で、相手に興味を持ってじっと顔を見つめると、相手は「この人は自分を好意的に受け止めてくれている」と感じて、勝手にこちらのことを好きになってくれるのです。
相手の感情を見抜くことができて、しかも相手からも好意を持ってもらえる。まさに一石二鳥のライフハックでした。 (もちろん、凝視しすぎるとプレッシャーを与えてしまうので、時折ふっと視線を外すような引き算も大切ですが、基本は「お顔を拝見する」スタンスです)

最後に:まずは、自分を幸せにすることから
もし今、あなたが「職場の人間関係がうまくいかない」「相手が何を考えているか分からなくて不安」と悩んでいるなら、まずは相手を分析しようとするのをやめてみてください。
それよりも、「どうすれば今、自分の機嫌を最大化できるか」に全エネルギーを注いでみてください。
気分が落ち込んでいる時は、他人の心を正しく読めません。そんな時は、自分が相手に迷惑をかけていることにすら気づけない盲目状態になっています。だから、無理して人に会う必要はありません。まずは温かいお風呂に入って、美味しいものを食べて、寝てください。
仕事で大切な人に会う前こそ、あなたの「大好物」を食べてください。
あなたが上機嫌になれば、世界は広がります。 広がった視界の中で、相手の顔をまっすぐ見つめてみてください。
特別な読心術のテクニックなんていりません。あなたがハッピーでいること。それだけで、人の心は驚くほど簡単に、優しく読めるようになるのですから。

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