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農林水産物・食品の世界動向分析(令和8年8月15日)

農林水産物・食品の世界動向分析(令和8年8月15日)(本文5,204文字)
 
 
JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が発信する「農林水産物・食品ビジネス短信」から、農林水産物ならびに食品の世界動向を分析します。
※本分析は本記事の筆者によるものであり、JETRO他の見解ではありません。
 
 
1. 【主要トピック1】:農林水産物・食品の輸出記録更新と日本産酒類・ブランド等のグローバルPR・拠点展開の加速
2026年上半期の日本の農林水産物・食品輸出額が過去最高を記録した発表内容に基づき、海外市場における日本産酒類・食文化の認知拡大に向けた多様なプロモーションや民間企業の現地展開が活発化している。特に中国、ベトナム、ラオスなどアジア地域を中心とした販路開拓および体験型PRの推進が目立つ。
 
1-1. 上半期の農林水産物・食品輸出額が過去最高の8,977億円に達し拡大基調を維持
農林水産省が公表したデータによると、2026年1月〜6月(上半期)の日本の農林水産物・食品の輸出額は前年同期比で増加し、過去最高の8,977億円を記録した。公表された品目別・地域別の実績数値の伸びに沿って、さらなる市場拡大に向けた取り組みが各方面で進められている。日本政府や輸出事業者は、各国の通商障害の緩和や規制対応を平行して進めることで、輸出基盤の強化を図っている。
 
1-2. 中国・ラオスでの日本産酒類(Sake・本格焼酎)のPRイベント・体験型販促の展開
ジェトロは中国の北京・上海・成都の3都市・計53店舗において、日本産酒類の販促PRイベント「Sake Overflow 2026」を実施した。中国市場における日本酒需要の裾野を広げるべく、大規模な飲食店連携を展開している。また、ラオスにおいても日本産の本格焼酎を現地関係者にPRするイベントが開催され、現地の飲酒習慣に合わせたソーダ割りなどの提案が実施された。これにより、従来の主要輸出先に加え、新興市場や内陸主要都市における日本産酒類の認知度向上と市場定着が期待されている。
 
1-3. ベトナムでの「はま寿司」1号店展開および英国での「HYPER JAPAN」を通じた日本食文化の発信
外食大手のゼンショーホールディングスは、ベトナムのホーチミン市に「はま寿司」のベトナム第1号店をオープンした。東南アジアにおける外食需要に対応し、回転寿司チェーンの現地進出が行われている。一方、英国ロンドンでは大型日本文化イベント「HYPER JAPAN」が開催され、コンテンツとともに日本食や伝統的な食材の魅力を伝える機会が提供された。外食企業の直接進出と文化プロモーションの双輪により、日本食の認知拡大と現地消費の定着が進んでいる。
 
1-4. 米国大手バイヤーの日本招致と「北陸の食輸出促進セミナー」など国内支援体制の整備
ジェトロは米国南部の大手小売りバイヤーを日本に招致し、政府が指定する「フラッグシップ輸出産地」である新潟県および鹿児島県の生産・加工現場を訪問するツアーを実施した。現地の生産体制や品質管理を直接確認させることで、対米輸出の商談成立と継続取引を目指している。また国内では、食品事業者がノウハウを共有する「北陸の食輸出促進セミナー」が開催され、地域事業者の輸出意欲向上と実務対応力の強化が図られた。国内の生産基盤と海外の需要を直接結び付ける施策が重層的に実施されている。
 
 
2. 【主要トピック2】:欧州における包装・標章規則の更新と各国の輸入手続き・関税制度の見直し
欧州連合(EU)における包装および包装廃棄物規則(PPWR)の運用明確化や商標関連の動きに加え、南米や中東、アジアの主要国において輸入手続きの簡素化や関税率の見直し、通商摩擦に伴う反ダンピング(AD)関税の動きが報告されている。国際貿易の条件変動に伴う実務的対応が求められている。
 
2-1. EUにおける包装・包装廃棄物規則(PPWR)のFAQ更新と商標紛争の進展
欧州委員会は、今後順次適用される「包装および包装廃棄物規則(PPWR)」に関して、事業者からの質問に応じるための「よくある質問(FAQ)」の更新版を発表した。包装材のリサイクル性や再生プラスチック使用率、ラベル表示に関する具体的な指針が明確化されつつあり、域外からの輸出事業者には適合証明が求められる。また、有名ユーチューバー「ミスタービースト」のブランド商標を巡る紛争が一般裁判所に持ち込まれるなど、EU市場におけるIP(知的財産)およびブランド権利保護の厳格化が示されている。
 
2-2. アルゼンチンの食品輸入手続き簡素化とサウジアラビアの農畜水産物・食品51品目関税引き上げ
アルゼンチン政府は国内の物流効率化や物価政策の一環として食品輸入手続きの簡素化対象品目を拡大した一方、サウジアラビア政府は国内産業保護等を背景に農畜水産物・食品51品目に対する輸入関税率を引き上げた。このように地域や政情によって貿易管理の方向性が分かれており、参入企業は国別の手続・関税制度の変更点に個別に細心の注意を払う必要がある。
 
2-3. 中国によるメキシコ産ピーカンナッツへの暫定AD関税課税とメキシコ政府の懸念表明
中国政府がメキシコ産のピーカンナッツに対し暫定的な反ダンピング(AD)関税を課したことに対し、メキシコ経済省は公式に懸念を表明した。農産物を巡る二国間の通商摩擦が実体経済や農産物流通に波及した事例であり、北米・アジア間の農産物サプライチェーンに影響を及ぼしている。特定国への輸出依存度が高い品目においては、こうした通商抗争や関税引き上げリスクを想定したリスク分散と代替市場の確保が不可欠となっている。
 
2-4. タイにおける2026年第2回茶の関税割当結果発表および「GRAND HALAL BANGKOK 2026」の開催
タイ商務省は2026年第2回目の茶に関する関税割当(TRQ)結果を発表し、枠内税率での輸入許容量と割り当て事業者を決定した。また、バンコクではハラール製品およびサービスに特化した専門展示会「GRAND HALAL BANGKOK 2026」が開催された。イスラム圏および東南アジアのハラール市場に向けた製品供給体制の構築や、枠組みを活用した貿易管理の手続き遵守が、現地取引を行う事業者にとって重要となっている。
 
 
3. 【主要トピック3】:穀物・エネルギー等のマクロ経済動向と各国の投資・経済協力の進展
世界的なバイオ燃料需要の高まりや原油高を背景とした穀物大手の業績変化、欧州委員会による農産物・食品のブランド調査結果、南米や新興国における直接投資・金融評価の変動など、食品産業を取り巻くマクロ経済・インフラ環境が変化している。
 
3-1. 米穀物大手ADMの2026年業績見通し引き上げとバイオ燃料需要・原油高の影響
米国の穀物大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は、世界的なバイオ燃料需要の増加および原油価格の上昇を背景に、2026年の業績見通しを引き上げた。トウモロコシや大豆などの油糧種子加工事業が好調に推移しており、エネルギー政策と連動した穀物需要の増大が示されている。こうした穀物のバイオ燃料転用が進むことで、世界的な飼料・食品用穀物の需給バランスや価格水準に間接的な影響を与える可能性がある。
 
3-2. EU農産物・食品のグローバルイメージ調査結果と欧州委報告書の内容
欧州委員会が発表した調査報告書によると、EU産の農産物および食品に対する国際的なイメージは引き続き良好であり、高い品質、安全性、伝統的製法に対する信頼が維持されていることが明らかになった。世界市場においてブランド価値を構築・維持するための統一的な情報発信や、地理的表示(GI)等の知的財産保護施策が奏効していることを示す結果であり、日本産品におけるグローバル・ブランディングの推進にとっても参照すべき知見となっている。
 
3-3. ブラジルの対内直接投資増と5月インフレ率の推移、スリランカの金融評価改善
ブラジル中央銀行の発表によると、2026年上半期の対内直接投資額(FDI)は前年同期比23.4%増と堅調な伸びを示した。一方で、5月のインフレ率は7カ月ぶりに政府の目標上限を上回り、物価動向が注目されている。また、スリランカは国際金融協会(IIF)の評価において新興57カ国中4位の改善幅を記録し、S&Pも安定的見通しを維持するなど、国家債務問題からの経済再建が進んでいる。これら新興国におけるマクロ経済環境および格付水準の変動は、現地での食品・流通インフラ展開やビジネス環境の安定性を測る評価材料となる。
 
3-4. 米ウイグル強制労働防止法リストへの企業追加と国際政治・経済協力の動き
米国政府はウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づく指定企業リストに中国企業43社を追加した。トランプ政権下で初の追加となり、供給網(サプライチェーン)における人権デューデリジェンスの徹底が改めて求められている。また、スペイン首相のアルジェリア訪問による政治・経済協力の再開や、ペルーにおける「シブヤ公園」開園に見られる日本・ペルー間企業交流の機運など、二国間関係の進展が将来的な通商・経済協力の基盤として機能している。
 
 
4. 日本に与える影響と対応の方向性
2026年8月前半の動向は、日本産農林水産物・食品の輸出額が過去最高を更新する好調さを示す一方で、主要国の環境規制強化や関税・輸入手続きの変動、穀物・エネルギー相場への目配りが不可欠であることを物語っている。事業者は、中国や東南アジアでのプロモーションや現地進出をテコとしつつ、EUのPPWR等の規制やサウジアラビア等の関税引き上げに対処する柔軟なサプライチェーンを構築することが求められる。世界的な需給変動や人権デューデリジェンス等の国際基準に即応した経営体制の確立が重要である。
 
4-1. 市場アクセスの変化
◆輸出入事業者
アルゼンチンの輸入手続き簡素化は現地へのアクセス改善となる一方、サウジアラビアの51品目関税引き上げや中国によるメキシコ産ナッツへのAD関税決定などは、コスト面・手続き面の障壁となる。また、米国UFLPAリスト追加に伴うサプライチェーンチェックの厳格化が必要である。最新の関税率や規制リストを常時把握し、法 compliance を徹底することが求められる。
◆流通・販売事業者
タイの茶に関する関税割当(TRQ)管理やハラール認証の動向を注視し、枠内税率や正式な認証を活用した調達ルートを整備する必要がある。サウジアラビアなど関税が引き上げられた地域では、現地卸業者との価格交渉や品目見直しが求められる。
◆消費者
輸入手続きの簡素化や関税率の変化、通商摩擦の発生により、一部の輸入ナッツ類や特定原産地の加工食品の国内流通価格および取扱量に変動が生じる可能性がある。
 
4-2. 価格動向や需給バランス
◆輸出入事業者
米ADMの業績見通し引き上げに見られるように、バイオ燃料需要と原油高が穀物・油糧種子の需要を押し上げている。飼料・食品用穀物の調達価格上昇リスクに備え、長期契約の締結や調達ルートの多角化を進めることが重要である。
◆流通・販売事業者
ブラジルのインフレ率推移やエネルギー価格上昇に伴う輸送コストの増大を考慮し、販売価格への適切な転嫁と、コストパフォーマンスに優れた代替食材の提案を行うことで収益性を維持することが求められる。
◆消費者
穀物相場や油脂類、物流費の動向により、一部の食用油、畜産物、加工食品の価格水準が影響を受ける可能性がある。
 
4-3. 新たな商機や規制対応
◆輸出入事業者
EUにおけるPPWRの「よくある質問(FAQ)」更新を踏まえ、包装資材のリサイクル適性や表示基準への合致を進める必要がある。また、上半期の日本食輸出最高額更新を追い風に、ラオスなど新興国市場への本格焼酎や各種日本産品の提案を加速させることが商機となる。
◆流通・販売事業者
ゼンショーHDのベトナム進出やジェトロによる中国での「Sake Overflow 2026」、米国バイヤーの日本産地招致などを活用し、現地外食・小売りチャネルとのネットワークを強功にすることが推奨される。ハラール市場(タイ展示会等)に向けた専用商品の展開も有効な選択肢である。
◆消費者
国内外でのPR活動や外食チェーンの海外展開を通じて、日本産の酒類や農水産物の品質が国際的に高く評価されるとともに、国内においても安全で質の高い食体験が維持されることが期待される。
 
 
5. 全体の総括・展望
このように、2026年8月前半のJETRO「農林水産物・食品ビジネス短信」からは、日本の農林水産物・食品輸出が過去最高額を記録し、海外での日本食・酒類プロモーションや外食展開が精力的に進められている一方で、世界各地で通商規制や関税制度、環境基準の変更が相次いでいる状況が窺えます。EUのPPWR等に代表される環境適合への要求や、サウジアラビアの関税引き上げ、米国のサプライチェーン規制強化など、国際ビジネスを取り巻く制度環境は極めて流動的です。
今後は、堅調な海外需要を取り込むための現地体験型PRや流通網の開拓を推進しつつ、各国で刻々と変化する通商・環境規制に即座に対応できる体制を整えることが重要であると考えられます。また、バイオ燃料需要やエネルギー相場に伴う原材料価格の変動を凝視し、持続可能で頑健なサプライチェーンを構築していくことが展望されます。
 
 
以上です。
引き続き、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 
 
 
<一次情報>
【JETRO】農林水産物・食品ビジネス短信
https://www.jetro.go.jp/biznewstop/biznews/foods/
 
 

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