【本編】「入院3日以内にリハしろ!」は正しいのか? 令和8年度改定を巡る激論
——早川燃 × 堅田実、学会パネルディスカッション完全版——

編集部より
令和8年度診療報酬改定における早期リハビリテーション実施加算の見直しは、急性期から回復期まで、日本のリハビリ医療全体に波紋を広げている。本稿では、改定の賛否を巡り真っ向から対立する二人の理学療法士——急性期病院の早川燃先生(Dr.モエ)と地域包括ケア病棟の堅田実先生(Dr.カタ)——の白熱討論を全文収録した。両者の発言には現場の切実な声が凝縮されている。ぜひ最後まで読み、自院の体制を問い直すきっかけにしていただきたい。
司会(学会モデレーター・内田): 令和8年度の診療報酬改定では、早期リハビリテーション実施加算について大きな変更がありました。入院1〜3日目の加算が25点から60点へ増点、算定期間は30日から14日に短縮、そして15〜30日目の算定が完全廃止。さらに休日リハビリテーション加算25点が新設されました。まず改定全体の評価から入りましょう。Dr.モエ、いかがですか。
【第1往復】——改定の総評
Dr.モエ(早川燃):
ありがとうございます。結論から言わせてください——今回の改定は、日本のリハビリ医療が長年抱えていた「早期介入の形骸化」にようやくメスを入れた、歴史的な一手だと評価しています。
根拠は明確です。DPCデータの分析で「早期加算を算定した患者のうち、入院から3日以内に初回介入できていない患者が36%」という数字が出た。これ、衝撃じゃないですか?早期リハ加算を「算定している」にもかかわらず、3人に1人以上が3日以内に介入されていない。加算の趣旨と実態がまったく乖離していた。
脳卒中治療ガイドライン2021は発症後24〜48時間以内のリハビリ計画立案を推奨度Aで推奨している。それに対してDPCデータが示す現実は「算定はするけど介入は遅れる」という構造的な問題でした。今回の60点への増点と14日への期間短縮は、「本当に早くやる気があるか?」という踏み絵だと思っています。
Dr.カタ(堅田実):
……「歴史的な一手」ですか。現場を知らない人の理論はね、本当に美しく聞こえるんですよ。
DPCデータの36%という数字、確かに衝撃的です。でも、私はむしろその36%の中身を問いたい。なぜ3日以内に介入できなかったのか。ICU管理が必要だったからじゃないですか?術後24時間以内でバイタルが安定していなかったからじゃないですか?意識障害が重篤で、リスク評価上どうしても翌日以降になったケースじゃないですか?
36%の全員が「サボっていた」わけじゃない。介入できなかった理由が数字には見えていない。それを「だから早くしろ、点数で締め上げろ」と解釈するのは、あまりにも乱暴だと思いませんか。
60点というのは魅力的な点数です。でも、その点数を取るために無理な介入が起きて、患者に何か起きたとき、厚生労働省は責任を取ってくれるんですか。現場のPTが責任を背負うんですよ。
Dr.モエ:
……重篤患者への介入が遅れる「医学的理由」があることは、もちろん理解しています。でも、Dr.カタ、正直に言いましょう。36%の全員に医学的理由があったと思いますか?
私が急性期の現場で見てきた現実の一つは、「週明けにまとめて評価する」という文化の存在です。週末に入院した患者への介入が、月曜まで後回しになる。それが組織的な習慣になっている病院がある。そういう「体制上の理由による遅延」と「医学的理由による遅延」は、まったく別物です。
改定の方向性は、その「体制上の遅延」を許容しない仕組みを作ることだと思っています。それは正しい。問題があるとすれば、運用上の詳細設計の部分であって、理念そのものじゃない。
司会(内田): 両者の立場が明確になってきました。ここで具体的な患者像に落とし込んでみましょう。Dr.カタ、現場で実際に懸念される患者像を教えてください。
【第2往復】——術後早期患者・重症患者の現実
Dr.カタ:
では、具体的な話をしましょう。私が実際に経験した患者です。80歳の女性、大腿骨頚部骨折で人工骨頭置換術を受けた。術後1日目、まだ創部の痛みが強く、血圧も収縮期90mmHg台。貧血もある。この状態で「1〜3日目に60点を取るために介入しなければならない」というプレッシャーが現場にかかったとしたら……?
もちろん理学療法士として適切なリスク管理をするのは当然です。でも、経営の圧力というのは現場のPTに確実に伝わる。「今日やらないと60点取れなくなる」というプレッシャーの中で、バイタルの判断がわずかでも甘くなる可能性を、あなたは完全に否定できますか?
私が心配しているのは「悪意」じゃない。「善意の無理」です。「患者のために早く介入したい、経営のためにも点数を取りたい、だから少し強引でも——」という、善意から生まれる危険な判断を心配しているんです。
Dr.モエ:
……Dr.カタが言う「善意の無理」のリスク、それは実際にあると思います。否定しません。
でも、視点を変えてください。早期介入をしなかったことで起きる「善意の遅延」のリスクも、同じように重大です。例えば、私が最近担当した78歳の脳梗塞患者——発症後72時間以内に理学療法士が介入して廃用症候群のリスク評価と早期の座位訓練を開始できていたら、その後の経過はまったく違っていたかもしれない。でも初回介入が5日目になってしまった。その5日間で起きた廃用の進行、誤嚥リスクの増大、これは誰が責任を取るんですか。
早期介入のリスクと、早期介入をしないリスク。両方を天秤にかけなければ、議論は片手落ちです。今の医療は「動かすリスク」に過剰に敏感で、「動かさないリスク」に対して鈍感すぎる部分があると、私は思っています。
Dr.カタ:
「動かさないリスク」——その点については否定しません。廃用症候群の怖さは、ベテランであるほど骨身に染みています。
ただ、Dr.モエ、あなたの患者さんが5日目介入になった理由は何でしたか?本当に「体制上の怠慢」でしたか?それとも医学的な理由がありましたか?その答えによって、今回の改定が適切な処方箋かどうかも変わってくる。私は「一律に締め上げる」ことへの懸念を持っているんです。
【第3往復】——週末入院問題
Dr.モエ:
では、週末問題についても私から先に触れましょう。土曜日に入院した患者が「3日以内」の要件を満たしづらい、という問題は実在します。
でも、休日リハビリテーション加算25点が新設されたのは、まさにそのための対応です。「休日も動かしてください、そのかわり点数をつけます」というメッセージです。体制を整えれば、週末入院患者にも対応できる仕組みは作られている。
Dr.カタ:
……休日リハ加算25点。現場の実態を知っていてそれを言いますか。
私が勤務する地域包括ケア病棟、PT・OT・STを合わせて12名のスタッフがいます。土曜は3名体制、日曜は2名。それが現実です。地方の中小病院はもっと少ない。
25点のために休日当直を組めるか?地方の人材確保が困難な地域で、「加算があるから雇える」ほど単純じゃない。都市部の急性期病院のモデルで制度設計をして、地域の中小病院がその皺寄せを受ける——これは今回特に深刻だと思っています。
しかも、土曜日入院で日曜・月曜と経過した患者は、3日以内を満たすには日曜介入が必要です。2名体制で、入院患者全体のケアをしながら新規患者の初回介入まで回せるか?現実問題として、できない日が出てきます。
Dr.モエ:
……それは地域の人員問題であって、改定の設計上の欠陥とは別の話では——
Dr.カタ:
別の話?(声のトーンが上がる)
現場で何が起きるかを考えてください。「体制が整っていない病院は60点が取れない」という結果が何を意味するか。それは収益の低下です。収益が下がれば、スタッフの採用はさらに難しくなる。スタッフが減れば、さらに体制が整わなくなる。負のスパイラルです。
理念が正しくても、現場が潰れたら患者が一番困る。その視点を、改定に携わった人たちは本当に持っていたのか、私は疑問に思っています。
司会(内田): 少し熱くなってきましたね(笑)。ここで転院患者の問題、起算日のルールについて整理させてください。
【第4往復】——転院患者・起算日問題:核心の対立
Dr.カタ:
ありがとうございます、内田先生。これが私にとって最も深刻な問題です。
令和8年度改定では、起算日は「入院日基準」——具体的には転院前の医療機関に入院した日が起算日とされています。つまり、急性期病院に7日入院して転院してくる患者の場合、転院先では「入院8日目」からのカウントになる。
1〜3日目の60点?もう取れません。4〜14日目の25点?残り7日分だけ。15〜30日目の25点?廃止されました。
うちのような回復期・地域包括ケア病棟は、転院患者を主に診ています。試算してみました。急性期10日入院後に転院してきた患者には、残り4日分の25点しか算定できない。それ以前は15〜30日目も25点取れていたのが、今回の改定で完全になくなる。1患者あたり数百点単位の減収です。うちの病棟の患者構成で計算したら、月間で相当な金額になります。
Dr.モエ:
……転院患者の起算日問題は、私も深刻に受け止めています。これは改定の中で最も議論が必要な論点だと思う。
ただ、一つ反論させてください。「急性期でしっかり早期介入が行われていれば、転院時の患者状態はより良くなる」という前提があります。急性期での超早期介入が強化されることで、転院時のADLや身体機能が改善し、回復期での介入効率も上がるはずです。
中長期的には、急性期での質向上が回復期の負担を減らす可能性がある。今だけの損益で判断するのではなく、患者の経路全体を通じた最適化という視点も必要です。
Dr.カタ:
Dr.モエ、それは長期的に見れば正しいかもしれない。でも「今だけの損益で判断するな」と言うのは、簡単には受け入れられません。
なぜなら、回復期病院が今期の収益減で経営が苦しくなれば、スタッフを削減しなければならない。スタッフを削減すれば、来年・再来年に受け入れられる患者数が減る。そのとき損をするのは患者です。
「いずれ良くなる」という話のために、今の患者のケアが犠牲になる——それは本末転倒だと思いませんか。
Dr.モエ:
(少し間を置いて)……おっしゃる通り、その現実を軽視するべきではないと、私も感じています。
起算日のルールについては、転院時に一定の猶予期間を設けるか、転院後に起算をリセットするかについて、今後の議論で検討される余地があると思います。この点については、現場からの強い声として厚生労働省に届けていく必要がある。
【第5往復】——「30日算定していた時代」への評価
Dr.カタ:
今回、15〜30日目の算定が廃止されましたね。確かに、厚生労働省は「超急性期への集中」を意図している。でも、15〜30日目に在院している患者がいるという現実は変わりません。その患者たちに対するリハビリの「価値」が消えたわけじゃない。点数が消えただけで、患者への必要性は残っている。
病院はその期間のリハビリを継続するか、削減するか、判断を迫られます。点数が取れないのに人員を割き続けるのは経営的に難しい。結果として、15〜30日目の患者へのリハビリ提供が減る可能性がある。それは患者にとって不利益では?
Dr.モエ:
その問いには正直に答えます。15〜30日目の算定廃止は、「その時期の入院を短くして次のフェーズ(回復期病棟等)に移行させる」という政策意図とセットで読むべきです。
「30日の病院リハを25点で算定し続ける」モデルから、「14日以内の急性期リハに集中し、それ以降は適切な病棟・施設でカバーする」モデルへの転換——それが今回の設計思想だと思っています。
Dr.カタ:
設計思想としては理解できます。でも、その「適切な病棟・施設への移行」が円滑に機能する前提条件——地域の回復期病床の充足、在宅サービスの整備、地域連携クリティカルパスの機能——が全国どこでも整っているわけじゃない。
地方では回復期病床が不足していて、急性期での在院延長をせざるを得ないケースがある。「理想の医療連携が機能している地域」のモデルで制度設計して、「それができていない地域」に同じルールを適用する。地域格差の問題は、今回の改定でも解消されていない。
【第6往復】——医療連携・地域格差
司会(内田): 地域格差というキーワードが出てきました。具体的に掘り下げていただけますか。
Dr.カタ:
はい。人口減少地域では、PT・OT・STの新卒採用が年々難しくなっています。求人を出しても来ない。奨学金制度を作っても、都市部の大病院に流れてしまう。そんな中で、「休日も人員配置しろ」「3日以内に介入しろ」と言われても——物理的に不可能な日が発生する。
そして、その「不可能な日」が続けば算定できず、収益が下がり、さらに採用が難しくなる。都市部の大病院はこの改定でむしろ有利になる一方、地方の中小病院は不利益が積み上がっていく。「医療の質の均てん化」を謳いながら、結果として格差を拡大させる可能性がある。
Dr.モエ:
……地域格差の問題については、正直、私にも完全な答えがありません。
ただ一点——地方だから「早期介入を諦める」という結論にはしたくない。患者の立場で考えたとき、地方に住んでいる患者は早期介入を受けられなくていい、ということにはならないはずです。
むしろ、今回の改定をきっかけに、ICTを活用した遠隔リハビリテーションの整備、多職種での分担など、新しいアプローチを模索するきっかけになってほしい。「現状を嘆くだけでなく、どう変えていくか」——そこに力を注ぐべきだと思う。
Dr.カタ:
「変えていく」——そのために必要な時間と資源を、今の地方病院は持っていない。そこだけは、声を大にして言い続けたいと思います。
【第7往復】——脳卒中患者の具体的ケース
Dr.モエ:
具体的な患者ケースで話しましょう。76歳男性、脳梗塞発症。入院翌日(発症後約18時間)に私が初回介入——リスク評価、座位の試み、嚥下スクリーニング。バイタルは安定しており、座位は10分保持できた。その時点での評価情報を多職種でカンファレンスし、早期離床プロトコルを開始。入院7日目に独歩レベルで退院できた。
脳卒中ガイドラインが「24〜48時間以内」を推奨するのは、こういうエビデンスの積み重ねがあるからです。早く動くほど回復が速い——これは数多くのRCTが示している事実です。
Dr.カタ:
その事例は素晴らしいですね。本当に。
でも、私の経験したケースも聞いてください。80歳女性、脳幹梗塞で入院。意識障害あり、バイタル不安定。「早期介入のプレッシャー」がある中で、前任者が初回評価を行った——結果、体位変換中に血圧が急落して失神。患者は転倒こそしなかったが、その後の経過に影響が出た。
後で振り返ると、あの日の介入はリスク評価が不十分だった。「早く介入しなければ」というプレッシャーが判断を歪めた、という声をそのPTから聞きました。
私は「早期介入するな」と言いたいわけじゃない。「適切なリスク評価なき早期介入は危険だ」と言いたいんです。点数が増えることでそのプレッシャーが増す——そのことへの懸念を持っています。
Dr.モエ:
……その事例は重い。(しばらく黙って)
適切なリスク評価なき早期介入が危険であることには、同意します。
ならば必要なのは、「リスク評価の標準化と教育」ではないか。早期介入を実施する際のプロトコル整備、多職種でのリスク評価の仕組み作り——それを並行して進めることで、「早く、かつ安全に」を実現できると思います。改定は「早くしろ」というインセンティブを与える。現場は「安全に早くする仕組み」を整える。両輪で進んでいかなければ。
【第8往復】——経営インパクトの試算
Dr.カタ:
では少し経営の話をさせてください。具体的な数字です。
仮に、転院患者が月に30名いる地域包括ケア病棟で考えます。従来なら、転院後15〜30日目に1日3単位×15日間=45単位、25点で換算すると患者1名あたり1,125点。30名で33,750点。これが丸ごとなくなります。
さらに、従来1〜3日目に取れていた25点が、転院後は起算日問題で取れないケースが増える。加算の逸失分を合わせると、月間で数万点単位の減収になりうる。年間にすると——中規模病院で数百万円規模の影響が出ると試算している病院もあります。
Dr.モエ:
その試算は無視できない数字ですね……。
ただ、逆の試算もできます。急性期病院で1〜3日目に60点が取れるようになった場合の増収、休日リハ加算を適切に算定できた場合のプラス分——急性期病院にとってはプラスに働く側面がある。
つまり、この改定は「急性期病院にとって有利、回復期・地域包括ケア病棟にとって不利」という構造的な問題を内包しているんです。同じ「リハビリ」という行為を評価する制度が、病院機能によって全く異なる影響をもたらす——それは改定の公平性という点で、今後の議論が必要だと私も思います。
Dr.カタ:
……Dr.モエが「改定の公平性に問題がある」と言った。それは聞き捨てならない重要な発言ですね。
あなたが改定を全面賛成しているわけじゃないと理解しました。「早期介入の強化」という方向性は支持しつつ、制度設計の細部については問題がある——その立場なんですね。
Dr.モエ:
……そうです。私は「超早期介入の強化」という理念は正しいと確信しています。でも、その実装の方法——特に転院起算日のルール、地域格差への対応、回復期への影響——については、改善の余地があると思っています。
改定を「全部正しい」と言うつもりはない。でも「全部間違い」でもない。
【第9往復】——共通の課題認識
司会(内田): 「改定が正そうとした問題」自体についてはどう評価しますか。
Dr.カタ:
……(少し表情を緩めて)正直に言うと、私も「早期リハ加算の形骸化」は問題だと思っていました。
36%という数字——3日以内に介入できていない。その一部には医学的な理由があると言いましたが、全部ではない。「加算は算定するけど介入は後回し」という病院が存在していたことは否定できない。それは患者にとって不利益だし、リハビリ職全体への信頼を損なう話です。
そこは、改定が問題提起した意義として認めます。
Dr.モエ:
(少し驚いた表情で)Dr.カタ……それは正直な言葉だと思います。
私も、今回の議論を通じて、転院患者問題と地域格差については、もっと真剣に声を上げていかなければならないと感じました。急性期の立場から「改定はいい」と言うだけでは不十分だった。
Dr.カタ:
つまり、私たちが戦うべき相手は「お互い」じゃなくて、「形骸化した運用」と「不公平な制度設計」なのかもしれない。
早期介入の価値を最大化する——その点では一致している。でも、その仕組みが全ての現場で機能するためには、もっと細やかな設計が必要だ。
【第10往復】——現場はどうすべきか
Dr.モエ:
現実論として、今の改定の枠組みの中で現場ができることを整理しましょう。
急性期病院は——入院翌日介入を標準とする院内プロトコルの整備。週末入院患者への対応体制構築。リスク評価の標準化と多職種連携の強化。
回復期・地域包括ケア病棟は——急性期病院との連携強化による情報共有の迅速化。転院後の患者に対して加算算定外の期間でも質の高いリハビリを提供できる人員効率の見直し。そして、現場の声を政策に届けるための学会・職能団体を通じた発信。
Dr.カタ:
……現実論として、その通りですね。
ただ、一点だけ加えさせてください。「できる範囲でベストを尽くす」のは当然としても、「できない理由を政策に伝える」ことも、同じくらい重要な仕事です。
現場の声が届かなければ、次の改定でも同じ問題が繰り返される。学会発表、論文、厚生労働省へのパブリックコメント——PT・OTが政策の議論に積極的に参加することが、結局は患者を守ることにつながる。
私がこういう場で声を上げ続けるのは、そのためです。「現場を知らない人の理論」に黙って従うためじゃない。現場を知っている者が、理論に現実を叩き込むために声を上げ続けること——それが私のこれからの仕事だと思っています。
Dr.モエ:
……(静かに頷く)それは、私も同じ思いです。
「患者のために早く動かせ」という情熱と、「現場が壊れたら患者が困る」という現実——どちらも、患者を中心に置いているからこそ出てくる言葉です。
私たちは同じ方向を向いている。ただ、立っている場所が違う。だから見える景色が違う。どちらの景色も、政策には必要なんだと思います。
司会(内田): 素晴らしい締めくくりをありがとうございます。最後に一言ずつ、現場のPT・OTの皆さんへのメッセージをお願いします。
【最終発言】
Dr.モエ(早川燃):
現場の皆さん、今回の改定は確かにハードルを上げています。でも、それは「患者に早く関わってほしい」という、実はリハビリ職への期待の表れでもある。
36%が3日以内に介入できていなかった——この数字を変えるのは、政策じゃなくて、私たち一人ひとりの行動です。入院翌日に患者のベッドサイドに立つ。それだけで、患者の経過は変わる。私はそれを信じてこの仕事を続けています。
改定を追い風に変えましょう。一緒に。
Dr.カタ(堅田実):
皆さん、現場で今日も頑張っているあなたたちに、まず敬意を表したい。
今回の改定で苦しくなる病院は、確かにあります。でも、どんな状況でも患者の前では私たちはPTであり、OTであり、STです。点数が取れなくても、患者に関わることの価値は消えない。
ただ、それに甘えて現場の声を黙らせてはいけない。不合理な制度には声を上げ続けてください。現場を知っている私たちにしか、伝えられないことがある。
患者のために、戦い続けましょう。
まとめ
現場の視点から:
今回の討論が明らかにしたのは、「早期介入の強化」という方向性自体への異論は少ない、という事実だ。Dr.カタでさえ、「形骸化の問題」は認めた。論点は「方向性」ではなく「実装の公平性」にある。週末入院への対応、地方中小病院の人員制約、術後重篤患者へのリスク管理——これらは「できない言い訳」ではなく、制度設計が直視すべき現実だ。現場が今すぐできることは、リスク評価プロトコルの整備と多職種連携の強化、そして現場の実態データを蓄積して政策議論に届けることだ。
経営の視点から:
最も深刻な経営インパクトは、転院患者の多い回復期・地域包括ケア病棟に集中する。起算日ルールの硬直性と15〜30日目算定廃止の組み合わせは、転院患者を多く抱える病院の収益を直撃する。一方、急性期病院は1〜3日目の60点増点と休日加算の恩恵を受けやすい。この非対称性は、病院機能間の格差を拡大させる可能性がある。移行期間における回復期病院の経営支援策が必要だ。
患者の視点から:
議論の核心にあるのは「どの患者に、どのタイミングで、最善のリハビリを届けるか」という一点だ。超早期介入のエビデンスは確固としており、発症後24〜48時間以内の介入が転帰を改善することは広く示されている。一方、術後重篤患者・意識障害患者への拙速な介入が危険であることも事実だ。患者にとっての最善は「点数が取れるから介入する」でも「点数が取れないから介入しない」でもない。適切なリスク評価のもと、必要なタイミングに必要な介入を届けること——その原則を制度の圧力に流されることなく守り続けることが、現場のリハビリ専門職に求められている。
付録①:点数比較表
付録②:用語解説
本稿は2026年4月時点の診療報酬改定情報に基づく。実際の算定にあたっては、各保険局・所轄機関の最新通知を必ず確認されたい。
