親が食べなくなってきた|低栄養・飲み込みの不安と、頼れる3つの支え
この記事で分かること(約8分で読めます)
親の「食べない」に隠れた低栄養のリスクと、よくある6つの原因 飲み込みの不安があるときに家庭でできる5つの工夫 配食サービス・訪問栄養指導・調理支援という3つの「頼れる支え」
こんな方に読んでほしい
親の食事量が減ってきた、飲み込みにくそう、痩せてきた――と心配な50代前後のご家族。
「最近、ごはんを半分しか食べない」「お味噌汁でむせることが増えた」「なんだか痩せてきた気がする」。
そんな変化を目にすると、つい「もっと食べて」と言いたくなります。でも、食べないのには理由があります。
この記事では、現役ケアマネの視点から「食べない」の背景にあるリスクと、家族が頼れる3つの支えを整理しました。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。嚥下障害の診断・治療は医師の領域であり、この記事は「家庭でできる工夫」と「相談先の案内」に徹しています。栄養補助食品の個別推奨は行いません。制度やサービスには改正・地域差があります。最新の情報はお住まいの市区町村窓口・かかりつけ医にご確認ください(→ 末尾の「免責について」)。
① 「食べない」は体のSOS
年を重ねると、食事の量は自然に減ります。
でも、「食べない」が続くと、体は静かに弱っていきます。
低栄養の現実
65歳以上の高齢者のうち、低栄養傾向(BMI≦20)の方の割合は――
男性 12.2%
女性 22.4%
(令和5年〔2023年〕国民健康・栄養調査。厚生労働省)
女性は約5人に1人。決して珍しいことではありません。
そして低栄養は、フレイル(虚弱) への入口になります。
低栄養 → フレイル → 要介護のリスク
フレイルとは、「健康」と「要介護」のあいだにある状態です。筋力が落ちる、疲れやすくなる、活動量が減る――こうした変化が重なると、転倒や入院のリスクが高まります。
65歳以上の高齢者のうち、フレイルに該当する方は約1割(東京都健康長寿医療センター研究所の調査〔2012年データ、2020年公表〕では8.7%)。さらにプレフレイル(フレイルの手前)は約4割(40.8%)にのぼります。
大事なこと:フレイルは、早い段階なら改善できる可能性があります。栄養・運動・社会参加の3つが柱です。だからこそ、「食べない」を放っておかないことが大切です。
「食べない」の原因はさまざま
「食べない」の背景には、1つではなく複数の原因が絡んでいることが多いです。
噛む力・飲み込む力の低下(歯の問題、口の筋力低下)
味覚の変化・食欲低下(加齢や病気による)
認知症による食事の認識の困難(食べ物だと分からない、食べ方を忘れる)
薬の副作用(吐き気、胃部不快感、口の渇き)
入れ歯の不具合・口腔トラブル(痛くて噛めない)
うつ・孤食(一人で食べるとおっくうになる。作る気力がない)
⚠️ 急に食べなくなった場合は、まずかかりつけ医に相談してください。 体重が1か月で5%以上減った場合も同様です。「食べない」の裏に、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
② 飲み込みの不安 ── 家庭でできる5つの工夫
「お茶でむせる」「ごはんが喉につかえる感じがする」。
これは、嚥下(えんげ)機能の低下のサインです。
嚥下機能は、加齢とともに誰でも少しずつ低下します。「むせる」は、体が気管に入りそうなものを押し戻そうとする防御反応です。怖いのは、むせずに食べ物や唾液が気管に入ってしまう「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」で、誤嚥性肺炎の原因になります。
家庭でできる5つの工夫
専門的な治療は医師や言語聴覚士(ST)の領域ですが、毎日の食事で家族ができる工夫があります。
1. とろみをつける
水やお茶は、実はいちばんむせやすい。市販のとろみ調整食品(薬局やスーパーで購入可)を使うと、飲み込みやすくなります。
2. 食べ物をやわらかく・一口サイズに
繊維の多い野菜は柔らかく煮込む。肉はひき肉やとろみ煮に。一口で口に入る大きさにすると、噛む負担も減ります。
3. 食事中の環境を整える
食べている最中に話しかけすぎない(誤嚥防止)。テレビを消して、食事に集中できる静かな環境を作るだけでも変わります。
4. 姿勢に気をつける
椅子に座って、やや前かがみ・あごを軽く引く。この姿勢が、気管に食べ物が入りにくくなるいちばん簡単な方法です。ベッドで食べる場合は、上体を30度以上起こします。
5. 市販の介護食品を活用する
ユニバーサルデザインフード(UDF):日本介護食品協議会の規格。「かむ力」と「飲み込む力」の4段階で分類され、パッケージにマークがついています
スマイルケア食:農林水産省の分類。青・黄・赤の3色マークで選びやすい
どちらもスーパーや薬局、通販で手に入ります。「どれを選べばいいか分からない」ときは、ケアマネや管理栄養士に相談してください。
⚠️ 嚥下障害の診断・治療は医師の領域です。 「むせる頻度が増えた」「食事に30分以上かかるようになった」「痰が増えた」「微熱が続く」場合は、かかりつけ医に相談し、必要に応じて言語聴覚士(ST)の評価を受けてください。この記事は「家庭での工夫」の紹介に徹しています。
③ 頼れる3つの支え

「食べない」問題に、家族だけで向き合う必要はありません。
プロの手を借りることは、「負け」ではなく「賢い選択」です。
1. 配食サービス(宅配弁当)
栄養バランスの整った食事を、自宅に届けてくれるサービスです。
栄養士が献立を監修した弁当を毎日届けてくれる
安否確認(見守り)を兼ねていることが多い=一人暮らしの親にも安心
嚥下に不安がある方向けのやわらか食・きざみ食に対応している業者もある
費用と助成について
配食サービスは介護保険の対象外ですが、多くの自治体が費用の一部を助成しています。
助成の内容は自治体によって異なります(1食あたり数百円の補助、週の回数制限など)
対象は「65歳以上の一人暮らし」「要介護認定を受けている方」など、自治体ごとに条件があります
利用方法:担当のケアマネジャー、またはお住まいの市区町村の福祉課(高齢福祉課)に「配食サービスを使いたい」と相談してください。自治体の助成が使える業者を紹介してもらえます。
全国宅配の民間サービスという選択肢(PR)
※ここからは広告(アフィリエイトリンク)を含みます。
自治体の助成つき配食は「地域の登録業者」から選ぶ形が多いですが、選択肢を広げたいときは全国配送の民間宅配食もあります。
一例として「メディミール」は、管理栄養士が商品開発から調理までを担当する宅配食で、塩分・たんぱく質などの制限食コースのほか、舌でつぶせるやわらかさの「ムースやわらか食」もあります(コース内容・価格などの最新情報は公式サイトでご確認ください)。
https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=4B7T8Y+M14H6+4ICQ+60OXE
⚠️ 合う・合わないは、親御さんの体の状態によって異なります。嚥下や持病に不安がある場合は、注文の前にかかりつけ医・管理栄養士・ケアマネにご相談ください。
2. 訪問栄養指導(管理栄養士の訪問)
管理栄養士が自宅を訪問して、食事の内容・量・形態をアドバイスしてくれるサービスです。
「何をどのくらい食べればいいか」を、親の体の状態に合わせて具体的に教えてもらえる
低栄養の改善、嚥下に合った食形態(きざみ・ペースト等)の提案
介護保険の「居宅療養管理指導」として利用可能(医師の指示が必要)
原則月2回まで(2024年度介護報酬改定により、医師の特別指示がある場合は30日間に限り追加2回まで可能に)
利用方法:まずかかりつけ医に「栄養指導を受けたい」と伝える → 医師の指示のもと、管理栄養士が訪問する流れです。ケアマネに相談すれば、手配を手伝ってもらえます。
3. ヘルパーによる調理支援
訪問介護の「生活援助」で、ヘルパーに食事の調理をお願いできます。
親の好みに合った食事を作ってもらえる(献立の相談もできる)
買い物と調理をセットでお願いすることも可能
一人暮らしの親に特に有効(「作る気力がない」を支える)
介護保険の対象サービス(要介護認定が必要)
在宅で使える介護サービスの全体像は、結シリーズ【16本目】で詳しくまとめています。
「まず何をすればいい?」 3ステップ
Step 1:かかりつけ医に「最近、食べる量が減った」と伝える
まず、病気が隠れていないかを確認してもらう。体重を測って伝えると、より正確です。
Step 2:ケアマネに「配食サービスのこと」を聞く
担当のケアマネがいれば、配食サービスの手配や自治体の助成について教えてもらえます。まだケアマネがいない方は、地域包括支援センターに電話してください。
Step 3:食事の形態や工夫について、管理栄養士に相談する
「何をどう食べさせればいいか分からない」は、管理栄養士の専門分野です。かかりつけ医を通じて訪問栄養指導を依頼できます。
どれか1つからで大丈夫です。全部を自分でやろうとしなくていい。
まとめ
親が食べなくなってきたとき、家族が知っておきたいのは、この3つです。
「食べない」は体のSOS ── 低栄養はフレイル(虚弱)の入口。急な変化はかかりつけ医に相談
飲み込みの不安には、家庭でできる工夫がある ── とろみ・姿勢・環境。ただし診断は医師の領域
配食サービス・訪問栄養指導・調理支援という3つの支えがある ── 一人で抱え込まず、プロの手を借りよう
「もっと食べてほしい」。
その気持ちは、親を大切に思っているからこそ生まれるものです。
でも、無理に食べさせようとしなくていい。食べやすい環境を整えて、プロの力を借りる。それだけで、食卓の空気はずいぶん変わります。
食べることは、生きること。
でも、「食べさせなきゃ」と追い詰められる必要はない。
まず1つ、今日できることから。
結(ゆい)の介護シリーズ
【1本目】親の介護が始まった家族へ — 最初の1週間でやるべきこと
【2本目】介護保険って、どう申請するの? — 認定が出るまでの1〜2か月の歩き方とお金の目安
【3本目】親が、この夏を無事に越せるように — 高齢者の熱中症と、在宅でできる暑さ対策
【4本目】介護のお金 — いくらかかる?と、負担を軽くする制度
【5本目】年末年始の帰省で親の異変に気づいたら — 3つの視点と、相談への最初の一歩
【6本目】ケアマネの選び方・付き合い方|「当たり外れ」に怯えないための4つのポイント
【7〜12本目】ユマニチュード①〜④・介護と仕事の両立・在宅か施設か(公開済み)
【他の記事へのリンク】
この記事(19本目)は「親の『食』の問題」がテーマです。介護のお金(→【4本目】)、在宅サービスの種類(→【16本目】)、遠距離介護(→【17本目】)もあわせて読むと、在宅介護の全体像がより見えてきます。
この記事について(プロフィール)
結(ゆい) ── 人の喜びを、永く。
文・監修:結の音(ゆいのね)/現役の主任介護支援専門員
保有資格:主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)
実務年数:介護支援専門員として実務13年
勤務先:居宅介護支援事業所(関西圏)
※ 地域は「関西圏」、勤務先は「居宅介護支援事業所」までの表記に留めています(所在地・勤務先名・利用者の情報は記載しません)。
専門分野:在宅介護の入口支援(介護がはじまったばかりのご家族が、最初の一歩を踏み出すお手伝い)
本記事は、AIの下書きをもとに現役の主任介護支援専門員が確認・加筆しています。
免責について
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事情に対する助言(法的・税務的・医学的な個別助言)ではありません。
嚥下障害の診断・治療は医師の領域です。 本記事の「家庭でできる工夫」は参考情報であり、嚥下機能に不安がある場合は必ず医師の診察を受けてください。
栄養補助食品の個別推奨は行っていません。 具体的な商品選びは、管理栄養士やかかりつけ医にご相談ください。
本記事の「配食サービス」の項にはアフィリエイトリンク(PR)を1か所含みます。リンク経由でお申し込みがあった場合、執筆者に紹介報酬が入ることがあります。紹介は公式サイトで確認できる情報にもとづいており、特定商品の利用を推奨・保証するものではありません。
介護保険制度・配食サービスの助成には改正や地域差があります。 本記事の内容は2026-06-28時点の一般的な情報にもとづいています。
本記事の情報を用いた行動の結果について、執筆者は責任を負いかねます。
お問い合わせについて
個別のご相談はお受けできません。 お一人おひとりの状況に応じた助言は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなど、身近な専門職にご相談ください。
いただいたお声への返信は不定期となります。あらかじめご了承ください。
出典・参照(裏取り)
本記事の制度・数値は、以下を参照して確認しました。最新かつご自身に当てはまる情報は、必ずお住まいの市区町村窓口・かかりつけ医でご確認ください。
65歳以上の低栄養傾向(BMI≦20)の割合 … 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」(男性12.2%、女性22.4%)(2026-06-28取得)
低栄養傾向の統計解説 … 日本生活習慣病予防協会「65歳以上の高齢者の低栄養傾向の人は、男性12.2%、女性22.4%」(2026-06-28取得)
※ 令和6年(2024年)調査結果も2025年12月に公表済み。本記事では男女別内訳が詳細に公表されている令和5年(2023年)の値を採用しています。
フレイルの有病率 … 東京都健康長寿医療センター研究所「日本人高齢者全体のフレイル割合は8.7%」(2012年全国高齢者パネル調査に基づく。65歳以上の8.7%がフレイル、40.8%がプレフレイル。2020年公表)(2026-06-28取得)
フレイルの概要 … 日本生活習慣病予防協会「フレイルの有病率は、65歳以上の高齢者全体の約10%」(2026-06-28取得)
居宅療養管理指導(管理栄養士による訪問栄養指導) … カイポケ「【2024年改定対応】居宅療養管理指導の基本報酬」(2026-06-28取得)
2024年度介護報酬改定(訪問栄養指導関連) … 日本栄養士会「令和6年度介護報酬改定のポイント」(2026-06-28取得)
配食サービスと安否確認 … 有料老人ホーム情報館「配食サービスと安否確認サービス」(2026-06-28取得)
配食サービスの自治体助成 … いえケア「配食サービスは介護保険で使えるの?」(2026-06-28取得)
ユニバーサルデザインフード(UDF) … 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフードとは」(2026-06-28取得)
スマイルケア食 … 農林水産省の分類に基づく。介護健康福祉のお役立ち通信「介護食品 スマイルケア食・ユニバーサルデザインフードの選び方」(2026-06-28取得)
メディミールの食種(制限食コース・ムースやわらか食)と管理栄養士体制 … メディミール公式サイト(2026-07-04取得)
※ 上記は確認時点で参照できた公的・専門情報にもとづく一般的な説明です。制度やサービスには改正・地域差があります。 最新・正確な情報は必ず各窓口・かかりつけ医でご確認ください。
