「今回だけ大丈夫です」が、教室を少しずつ苦しくする
「本当はルール外なんだけど、今回だけなら……」
小さな教室をしていると、こんな判断をする場面が意外と多くあります。
振替期限を過ぎている。
本来は対応していない曜日を希望されている。
レッスン時間の変更を何度もお願いされている。
月謝の支払いが少し遅れている。
先生としては、
「事情もあるだろうし」
「一度くらいなら」
「わざわざ断るほどでもないかな」
そんな気持ちで受け入れます。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
でも、この
「今回だけ大丈夫です」
が積み重なると、少しずつ教室運営が苦しくなっていくことがあります。
「今回だけ」は、相手にとっては新しい基準になることがあり
先生側では、
「今回は特別」
と思っています。
でも保護者側から見ると、
「この教室では、お願いすれば対応してもらえる」
という経験になります。
悪気があるわけではありません。
一度対応してもらえたことを、次もお願いしてみようと思うのは自然なことです。
例えば、
「本来、振替は月内までです」
というルールがあったとしても、
一度だけ翌月への振替を受け入れた。
すると数か月後、
「前にも翌月に振替していただいたので、今回もお願いできますか?」
ということが起こります。
そのとき先生は困ります。
前はOKした。
でも今回は難しい。
だから断りづらい。
こうして、
ルールではなく、その都度先生が判断する教室
になっていきます。
本当に疲れるのは「対応」より「判断」
振替を一回増やすこと自体は、それほど大変ではないかもしれません。
でも、
「今回はどうしよう」
「この人だけ断って大丈夫かな」
「前にも受けたから今回も受けるべきかな」
「でも、このままだとずっと続きそう」
こんなことを毎回考えていると、思っている以上に疲れます。
小さな教室では、先生自身がすべてを判断していることが多いです。
受付担当もいない。
事務担当もいない。
規約について相談する相手もいない。
だから、ひとつひとつの小さな判断が全部先生の頭の中に残ります。
そして気づけば、
レッスンそのものよりも、
「どう対応したら角が立たないか」
を考える時間の方が長くなってしまうことがあります。
断ることと、冷たくすることは違う
「今回は難しいです」
と伝えることに抵抗がある先生は多いと思います。
特に、
生徒や保護者との関係を大切にしている先生ほど、
断ることに罪悪感を持ちやすいです。
でも、
断る=冷たい
ではありません。
むしろ、
できないことを無理に引き受け続けて、
先生が疲れてしまう方が、
長い目で見ると教室にとって良くありません。
例えば、
「申し訳ありませんが、振替は月内でお願いしています」
という一文。
これは冷たい文章ではありません。
ルールを伝えているだけです。
そこに、
「可能な日程があればご案内しますね」
と付け加えることもできます。
ルールを守りながら、優しく伝えることはできます。
例外を作るなら、「自分で説明できる例外」にする
もちろん、すべてを機械的に断る必要はありません。
例えば、
先生側の都合で休講になった。
台風などで教室自体を休みにした。
長期間の入院など、特別な事情がある。
こうしたケースでは、通常とは違う対応をすることもあるでしょう。
大切なのは、
なぜ今回は例外なのかを、自分で説明できること。
「なんとなくかわいそうだから」
ではなく、
「教室側の都合による休講なので」
「災害による休講なので」
と基準がある。
そうすると、次に似たケースが起きても判断しやすくなります。
優しさを「人によって変える」のではなく、「仕組み」にする
例えば、
「欠席による振替は月内まで」
と決めたとします。
でも、
月末のレッスンを欠席した場合は、振替できる日がほとんどありません。
それなら、
「月末の欠席については翌月第1週まで可能」
と最初から決めてしまう。
これは特別扱いではなく、ルールです。
あるいは、
「振替は月1回まで」
「前日までに連絡があった場合のみ振替可能」
など。
教室に合ったルールを作ればいい。
つまり、
先生の優しさをなくすのではなく、
優しさを仕組みの中に入れておく。
そうすると先生自身もラクになります。
「今回だけ」と言う前に、ひとつだけ考えてみる
何か特別なお願いをされたとき、
すぐに返事をする前に、
ひとつだけ考えてみてください。
「これを、ほかの生徒にも同じようにお願いされたら対応できる?」
もし答えが、
「10人に言われたら無理だな」
なら、
それは今後ルールにした方がいい部分かもしれません。
一人だからできることと、
教室として続けられることは別です。
小さな教室だからこそ、
先生の時間も体力も限られています。
その限られたものを、
すべて例外対応に使わなくてもいい。
先生が毎回悩まなくていい教室へ
「今回だけ大丈夫です」
という言葉は、とても優しい言葉です。
だからこそ、使うときには少しだけ立ち止まってみる。
これは本当に今回だけなのか。
次も同じお願いが来たらどうするのか。
ほかの生徒にも同じ対応ができるのか。
そこまで考えておくと、
あとから先生自身が苦しくなりにくくなります。
教室のルールは、
保護者を困らせるためにあるのではありません。
先生が毎回悩まなくても、同じ基準で対応できるようにするためのもの。
そしてそれは、
結果的に保護者にとっても分かりやすい教室になります。
優しい先生ほど、
全部を自分の判断で引き受けなくていい。
その優しさを、
少しずつ「仕組み」に預けていけばいいのだと思います。
